就学前(5〜6歳)の百日咳含有ワクチン追加接種を推奨します!

2019年6月から8月に、南房総で起きた百日咳集団発生を受け、亀田総合病院・ 安房地域医療センター・亀田ファミリークリニック館山の3施設で、百日咳含有ワクチン追加接種(5回目)を推奨することといたしました。亀田総合病院では、感染症科が接種を担当しております。

現行の日本の定期接種制度では、百日咳含有ワクチンの効果が小学生の頃には低下することが分かっています。2018年に百日咳に感染した人の6割以上が5〜15歳の小・中学生でした。
そのため、百日咳に対する免疫を高めることを目的に諸外国でも行われているよう(添付の画像も合わせて参照ください)、小学生になる前のタイミングでのワクチンの追加接種を推奨します。

ワクチン:トリビック®(ジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン)
価格:5,454 円+税(任意接種にて自己負担)

就学前の5〜6歳児でMR(麻疹・風疹)ワクチンとの同時接種がお勧めです。また11〜12歳で定期接種のDT(ジフテリア・破傷風)ワクチンの代わりに接種が可能です。その他の小児、成人も接種が可能ですので、いつでもご相談ください。

<患者の年齢別分布>
百日咳は2018年1月1日から、全数把握対象の5類感染症に改正された。 2018年1月からの届出患者の年齢中央値は10歳であり、5〜9歳が最多で全体の38%、 10〜14歳が25%と、小中学生世代で集積を認めた(IASR 2019;40:1-2)。0歳児は約6%であるが(IASR 2019;40:1-2)、百日咳関連の入院や死亡の大多数は、ワクチンが 接種できない生後2ヶ月以下の低月齢乳児である(MMWR Recomm Rep. 2018;67:1-44)。

<本邦での百日咳含有予防接種の状況>
百日咳含有ワクチンのうち、4種混合ワクチン(DPT-IPV)が生後3ヶ月から定期接 種として接種可能である。3〜8週間隔で最初の3回を接種し、4回目は、3回目から6 ヶ月以上(標準的には12-18ヶ月)あけて接種する。本邦では、4回目接種(生後12〜23 ヶ月)以降は、百日咳含有ワクチンを定期接種として接種する機会はない。一方で 米国では、4〜6歳時に5回目の百日咳含有ワクチン(3種混合ワクチン:DTaP)を接種する。

<予防接種済の患者の発症状況>
2018年11月時点で報告された百日咳患者のうち、4回の予防接種歴がある者は全体の58%を占め、特に5-15歳に限定すると80%であり、小児患者の多くはワクチン接種者である(IASR 2019;40:1-2)。また2013年の、小児年齢別の、発症予防に必要な抗体価の保有状況は、4-7歳で40%未満に低下していた(IASR 2017;38:31-33)。

<種混同ワクチンの推奨>
このように、ワクチン接種歴のある就学前児の抗体価が低下し、百日咳を発症している現状を踏まえ、また3種混合ワクチン(DTaP)が2018年1月から販売再開したことも受けて、日本小児科学会は 2018年8月1日に、学会が推奨する予防接種スケジュールを変更した。
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/vaccine_schedule.pdf

変更点は以下の2点:

  • 就学前の3種混合ワクチンの追加接種(任意接種)を推奨に加えた
  • 11歳で定期接種の2種混合ワクチン(DT)を、3種混合ワクチンでも代替可能 (任意接種)とした。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育