ペラミビル(ラピアクタ)の効果(タミフルより優先して使用すべき状況があるのか?)
「ペラミビル(ラピアクタ)の効果(タミフルより優先して使用すべき状況があるのか?)」について調べてみました。フェローが日々疑問に思ったことを調べて、科内のメーリングリストで共有しています。
★まとめ
- 生来健康な成人において、インフルエンザの症状の改善を約1日早める、オセルタミビルと同等の効果(ただし、この群は、そもそも積極的治療適応ではない)
- 基礎疾患がある場合は、300mgよりは600mgのほうがよい
- 入院患者において、5日間投与した場合の臨床効果は示されていないが、ICU入室する患者では考慮してもよいかもしれない。ただし、オセルタミビル内服している場合の上乗せ効果は示されていない(ということは、タミフル内服または胃管投与できれば、有用性は低い)。
- 内服できない場合または腸管からの吸収が期待できない場合で、抗インフルエンザ薬の適応がある場合に使用する
※以下、文献の簡単な説明
(1)Antimicrob Agents Chemother. 2011;55(11):5267-76
- RCT:オセルタミビルとの比較。生来健康な20歳以上のインフルエンザAまたはB患者が対象(発症から48時間以内)。ペラミビル300mg単回、ペラミビル600mg単回, タミフル75mg 1日2回 5日間の3群を比較。3群で、症状改善までの時間が同等であった。
(2)Antimicrob Agents Chemother. 2011;55(6):2803
- 20歳以上のhigh risk患者を対象(発症から48時間以内)。免疫不全、慢性呼吸期疾患、DMのいずれかを満たす。無作為uncontrolled double-blinded試験。600mgは、300mgより症状改善が早かった(約60時間の差)。投与期間は、1-5日(ほとんどが1-2日間)。
(3)Antimicrob Agents Chemother. 2010;54(11):4568
- RCT。生来健康な成人(20-64歳)インフルエンザ患者を対象(発症から48時間以内)。ペラミビル300mg単回投与、600mg単回投与、placeboを比較・症状の改善を約20時間早めた(300mgと600mgは同等)。
(4)Clin Infect Dis. 2014;59(12):e172.
- RCT。インフルエンザで入院した患者への5日間のperamivirの効果を評価した研究。対象は、重症化リスクを1つ以上持つ6歳以上。標準治療に加えてperamivirを追加することのメリットを評価した。ノイラミニダーゼ阻害薬ありの標準治療と、なしの標準治療で分けて評価している。発症72時間以内を対象としている(48時間以内は60%程度)。結果:primary endpointである症状改善までの時間に、差は認められなかった。これは、NAIを内服している場合も、内服していない場合も同様の結果であった。オセルタミビル内服していない場合の、ペラミビルの治療効果は、48時間以内の投与 or ICU入室患者で大きかった(ただし、統計解析なし、症例数少ないため)。48時間以内であっても、オセルタミビルへの追加効果はなし。ICU入室であっても、オセルタミビルへの追加効果はなし。肺炎などの合併症、死亡率も低下しない。
このサイトの監修者
亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長 細川 直登
【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育