ゾフルーザ採用見送り

すでにバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)が、抗インフルエンザ薬の市場第1位になったようです。1回投与という簡便さが受けたのでしょうか?

先に結論を述べますが、当科では今シーズンはゾフルーザを使用する予定はありません。

産経新聞:インフル薬「ゾフルーザ」シェア1位に 負担軽く人気

ウイルスの排泄がday 2-3がタミフルより少ない状態となることが利点とされていますが、本当にそれによって感染性が落ちることは示されていません(飛沫予防策の期間は変わりません)。また、インフルエンザウイルスA/H3N2で、治療中に約10%が耐性化する可能性が指摘されており、その場合、ウイルス排泄はタミフル群より多いため、むしろそのような株が大勢を占めた場合、感染伝播拡大の危険性もあります。また、コストは、4789円(40mg)で、タミフルの2720円(5日分)の1.76倍です。タミフルのジェネリックはさらに安く1360円(ゾフルーザはこれの3.52倍)となっており、もし1000万人を治療するとした場合、タミフルのジェネリックとゾフルーザを比較すると、前者のほうが342億9000万円もお安くなります。また、将来的に、タミフル耐性ウイルスがでた場合の治療薬となる可能性もあり、今から使用して、耐性ウイルスを増やしてしまってもよいのか、という問題もあります。

利点

  • 1回投与でよい
  • 耐性化しない場合は、ウイルス排泄量が早く減少

欠点

  • 耐性化のリスク
  • コスト(税金と健康保険と自己負担)
  • 未知の副作用があるかも


今のところ論文として発表されたものは、12-64歳の結果であり、小児に対するdataは十分ではありません(保険は通っています。国内で第III相試験が、単一armで実施されたようであり、添付文書に記載あります。社内資料とのこと。詳細は不明です。18/77例で、耐性化の懸念あり、非常に高率です)。

以上から、適応を慎重に検討する必要があると思われます。当科では、今年度の採用は見送っています。依然として、今までの実績・文献的根拠から、タミフル(一般名:オセルタミビル)が第1選択であると考えています。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育