血液悪性腫瘍の化学療法中に発症した発熱性好中球減少症に対するβラクタムの長時間投与(4時間)と通常投与(30分)の単施設、open-label、前向き無作為比較試験。

βラクタム薬の90%以上はピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)です。主要評価項目は、発症から4日後の時点でのoverall response(24時間以上の解熱、微生物学的な治療の成功:day3-4で培養陰性、症状・所見の臨床的改善、抗菌薬変更が不要、のすべてを満たす)でした。結果は、Intention-to-treat populationにおいて、長時間投与群で、有意差をもってよい成績でした(55.1% vs 74.4%)。サブグループ解析では、特に肺に浸潤影がある場合に、持続投与群でよい結果がみられました。副次評価項目である死亡率や入院期間に差はありませんでした。

非盲検試験であること、主要評価項目がhard outcomeでないこと、PIPC/TAZの投与量が4.5g 8時間おきであること(6時間おきであれば差がでなかったかもしれない?)、ランダム化が化学療法前に施行されており実際にFNを発症した患者が、持続投与群で78.3%・通常投与群で92%と有意な差があり、両群がほんとうに同等であったか不明であること(Intention-to-treat polulationと記載されていますが、modified ITT polulationのような気がします)、細菌(特にグラム陰性桿菌)のMIC値や感受性率がきちんと記載されていないこと(table 2では、感受性の記載がわずかにありますが、なんの感受性を示しているかよくわかりません)、などのlimitationがあると思います。

PIPC/TAZについては、FNの場合(FNでなくても)、4.5g 6時間おきで使用しているため、この報告の結果をもって、routineで長時間投与を採用する必要はないと考えます。この文献から言えることではありませんが、MIC値がbreakpoint近くの(ギリギリ感受性と判定される)細菌による肺炎では、長時間投与を試してもよいのかもしれません(が、幸いなことに、現時点での当院では、そのような状況は非常に稀だと思われます)。

Extended vs Bolus Infusion of Broad-Spectrum β-Lactams for Febrile Neutropenia: An Unblinded, Randomized Trial.

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育