臨床検査室 各部門の紹介

血液分析・移植グループ

当グループでは生化学、免疫、血液、輸血、移植といった血液分析に関する検査を行っています。
生化学・免疫分野では、検査センターのような大きな搬送ラインシステムが各自動分析装置へ接続されており、臨床へ迅速に正確な検査結果を提供できるように整備されています。【写真1、2】
また、チーム医療として糖尿病教室への参加をしています。糖尿病療養指導士の資格を持った臨床検査技師が中心となって、検査の面から見た糖尿病について患者さまへお話ししています。

血液・輸血・移植分野では、血球数の測定や末梢血液像の鏡顕に加え、骨髄穿刺液検査や造血幹細胞移植などの検査も行っています。
骨髄穿刺液検査は、医師が、患者さまの腸骨または胸骨に専用の針を刺し、骨髄の生検と骨髄液を採取します。
臨床検査室では、採取された骨髄液を用いて、塗抹標本を作製・染色・鏡顕します。臨床検査室内で行われるフローサイトメトリー検査の結果も加味し、骨髄内の腫瘍細胞の観察、浸潤の有無、微小残存病変の評価などを行っています。【写真3、4】
造血幹細胞移植は、患者さまの末梢血から採取した造血幹細胞を移植する治療です。採取した幹細胞を投与し、患者さまの骨髄内で生着後、正常な造血の回復を期待します。臨床検査技師は、医師の指示のもと、幹細胞採取に使用される機械の操作や、採取された細胞の保存などを行います。【写真5】

他にも、当グループでは臨床検査技師以外に「オルカ鴨川FC」の選手の方もラボテクニシャンとして一緒に働いています。試合の日は検査室のメンバーで応援しに行くこともあり、みんなでとても盛り上がります。【写真6】


1.分注機への検体投入


2.搬送ライン


3.フローサイトメトリー検査


4.鏡検


5.造血幹細胞移植の準備


6.臨床検査室所属のオルカ鴨川FC選手たち

感染症・遺伝子グループ

感染症検査室と遺伝子検査室には経験年数が1年目〜43年目と幅広い年齢層の臨床検査技師13名が配属され、老若男女が日々楽しく検査を行っています。また、毎週木曜日には感染症科の医師と一緒にMicrobiology roundと称したミニ勉強会を開催しています。【写真7】


7.Microbiology roundの様子

感染症検査とは、感染症が疑われる患者様から採取した検体(血液、痰、尿、便など)を検査材料として、感染症の原因となる病原微生物の検出を目的として実施します。病原微生物とは、細菌・真菌(カビ)・ウイルスなどのことをいいます。これらの病原微生物が特定された場合に、治療に用いる薬は病原微生物の種類ごとに異なります。特に細菌が検出された場合は薬剤感受性検査を実施して、どの薬(抗菌薬)が感染症の治療薬として有効なのかを調べています。感染症検査は、生化学検査や血液検査とは異なり、検査開始から終了までは日単位の時間が必要となります。主な工程には、検査材料を顕微鏡で観察する(顕微鏡検査)、検査材料から微生物を育てる(分離培養)、その種類を特定する(同定検査)、どのような薬(抗菌薬)が効くのか調べる(薬剤感受性検査)という4つの工程があり、全工程は3日間という長い時間を要することも感染症検査の特徴の一つです。

遺伝子検査室で実施している検査は、検体に存在する病原微生物の核酸(DNAやRNA)を抽出し、その核酸を増幅することにより、どのような微生物が検体に存在するのかを調べます。結核菌や新型コロナウイルスの検出検査も遺伝子検査を利用しています。遺伝子検査を行うことで、感染症検査とは異なり、病原体やウイルスを1日で検出することができる迅速性に優れた検査です。

一般検査室は、尿検査、糞便検査、髄液検査、穿刺液検査、寄生虫検査など血液以外の検査材料を扱っている検査室です。尿検査と糞便検査は、患者様の負担が少ない非侵襲的検査であり、多くの生体情報が得られる理想的な検査です。尿検査では、尿試験紙を尿に浸し、色調変化をみることで尿中の成分(蛋白、糖、ヘモグロビンなど)を調べる尿定性検査と、尿を遠心沈殿し、得られた有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞など)を顕微鏡により観察する尿沈渣検査があります。糞便検査は、消化器疾患の診断上、極めて重要な基礎検査であり、消化管出血、特に大腸がんのスクリーニング、便潜血検査として行われています。また、腸管感染症の検査として、寄生虫検査も行います。一般検査では、腎臓内科や泌尿器科はもちろんのこと、血液内科や消化器内科など、関係する領域はとても広く、多くの診療科との連携が必要になります。また、多くの知識も必要となり臨床検査技師の力量が試される分野です。

病理・ARTグループ

当院の病理検査室では、年間約15000件の組織診断、20000件の細胞診断、400件の術中迅速診断、30件の病理解剖を行っています。

組織診断では内視鏡で採取された小さな生検組織材料や、手術などで摘出された臓器が主な検査対象です。組織標本は検体から病変部のみを抽出する切り出し、パラフィンブロックの作製、薄切、染色の工程を経て作製されます。作製された標本は病理医へ提出し、病理診断が行われます。他にも当院では特殊染色や免疫組織化学染色を行い、正確な診断を心がけています。

また、当院ではバーチャル画像を使用した遠隔診断も取り入れ、幅広い地域からのコンサルトを受けることが可能であり専門性の高い診断を提供しています。
【写真8】


8.バーチャル画像診断

細胞診断で用いる材料は、子宮頸部、子宮内膜、尿、喀痰、体腔液を始め、リンパ節、乳腺、甲状腺、耳下腺など多岐にわたります。中でも穿刺吸引検体(甲状腺、乳腺、耳下腺など)は実際に患者様のベットサイドへ出向き適切な標本作製を行っています。また、勉強会も充実しており、細胞検査士、病理医、専門医とのディスカッションの場を設けています。また、臨床の経験を生かし、働きながら細胞検査士の資格取得の支援も行っています。術中迅速診断では年間約400件の検体を扱っています。クリオスタットを2台設置し、手術中の追加切除の決定、治療方針、良悪性などの組織診断を行っています。

病理解剖では入院患者様の、生前の治療効果や、死因を究明する為に行っています。特に関心の高い症例に関してはCPC(症例検討会)を行い、医療の向上に努めています。

ARTは生殖補助医療を意味するAssistedReproductiveTechnologyの略で、赤ちゃんを授かりにくい不妊患者様の妊娠のお手伝いをする治療です。当部門の臨床検査技師の一部は、女性からお預かりした卵子、男性からお預かりした精子のお世話をする体外受精技術を行う胚培養士としても活躍しております。【写真9,10】


9.体外授精の様子


10.体外受精の様子(顕微鏡下)

生理機能・採血グループ

生理機能グループは生体検査を担当しています。心電図検査、肺活量検査、心臓エコー検査、運動負荷検査、脳波検査、筋電図検査はもちろんのこと、手術中の神経モニタリングや心臓カテーテル検査など多くの検査に臨床検査技師が携わっています。また、聴力検査、胎児エコー検査、終夜睡眠ポリグラフィー、排尿機能を調べるウロダイナミクス、ナルコレプシーを診断するために必要なMSLTなど特殊な検査も行っています。【写真11,12】
採血業務は臨床検査部のスタッフ全員が交代で行っており、小児から成人まで幅広く採血しています。【写真13,14】


11.肺活量検査


12.終夜睡眠ポリグラフィー


13.採血室


14.採血の様子

診療支援チームMPST

MPSTは、2011年看護業務の人的支援を目的として結成され、救命救急センター、集中治療室、病棟などに臨床検査技師を派遣して、他職種のスタッフとともにチーム医療の一員として患者さまの治療に従事しているチームです。
MPSTには現在6名が在籍し、院内資格である救命救急検査士の認定を受け、救命救急センターの救命救急チーム(医師・看護師・薬剤師・救命救急検査士)の一員となり、チーム医療活動を行っています。この他、MPSTスタッフの2名が日本DMAT隊員の登録を受けており、平成27年9月関東・東北豪雨災害、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨への災害派遣の経験を活かし、院内の災害対策にも関わっています。
MPSTは、専門的な知識と技術を持つ臨床検査技師として救命救急センターや集中治療室、病棟等と臨床検査室を結ぶパイプ役として、医療の質的向上や医療安全の確保に貢献するとともに、患者さまを中心に据えたチーム医療の一員として質の高い医療を提供していくことを目指しています。→詳しくはこちら

情報管理グループ

情報管理グループでは、中央検査室、病理検査室、クリニック採血採尿室の3か所で業務を行っています。中央検査室では検体の受付、検査試薬などの発注・入庫・検品を行っています。また、外部委託検査の依頼と結果入力も行っています。病理検査室では検体の受付、外部委託検査の依頼と結果入力、スライドガラス標本と、病理検査依頼書の管理等を行っています。クリニック採血採尿室では、患者さまの採血採尿などによる検査の受付業務を行っています。