緊急気管挿管時の初回にブジーの使用とスタイレットによる挿管ではどちらが効果的であるか

Driver BE, Prekker ME, Klein LR, Reardon RF, Miner JR, Fagerstrom ET, Cleghorn MR, McGill JW, Cole JB
Effect of Use of a Bougie vs Endotracheal Tube and Stylet on First-Attempt Intubation Success Among Patients With Difficult Airways Undergoing Emergency Intubation: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018 Jun 5;319(21):2179-2189. doi:10.1001/jama.2018.6496.PMID:29800096

【Background】
2010-2012年に報告されたデータによると約12%の挿管で合併症が起こる。合併症の割合を下げるためには初回挿管成功率を上げた方がいいとされている。Bougieは初回挿管成功率を上げる可能性がある。Bougieは1949年に発売され、喉頭展開視野不良時や初回挿管に失敗した場合の挿管補助器具として使用されている。ルーチンに初回挿管をBougieで試みた後ろ向き研究はあるがRCTはないため今回のRCT解析が検討された。

【Research Question】
挿管困難な患者に対しBougieとスタイレット付き挿管チューブのどちらを用いた方が初回挿管成功率が上がるか?

【Research Contents】
本研究は18歳以上の救急外来を受診した気管内挿管の適応がある患者を対象とし、初回挿管時Bougieを用いる方がスタイレット付き挿管チューブを用いるより初回挿管成功率が高いかを解析した単施設非盲検RCTである。ランダム化された後にoperatorの主観により判断された挿管困難要素あり, なしの群でprimary analysisがなされている。このためprimary analysisがpostrandomization subgroup analysisになっている。結果であるが、少なくとも1つの挿管困難要素をもつ患者において、Bougieを用いた方が、スタイレット付き挿管チューブを用いるより初回挿管成功率が14%(96% vs 82%, p<0.01)高かった。

【Implication】
挿管の多くがBougieを用いて行われる施設での単施設RCTであるため, 日常臨床でブジーを使用していなかった施設を含む多施設での検証が必要である。研究デザイン上Maskingできないため, performance biasが生じ得る。また, 挿管困難要素がoperatorの主観であるためselection biasの懸念もある。primary analysisがpostrandomization subgroup analysisになっており, 厳密なランダム化がなされていないため両群で集団の特徴がずれている可能性がある。患者のcharacteristicをきちんと示した解析結果からBougieが初回挿管成功率を上げるか再度検討されるべきである。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科