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NEJM February 1, 2018 
心房細動合併心不全に対するカテーテルアブレーション

解説:
2008年1月から2016年1月にヨーロッパ、オーストラリア、アメリカなどの33施設で行われたmulticenter open label RCTである。

心房細動を合併している心不全患者に対してガイドラインに従い薬物療法を行う群とアブレーションを追加して治療を行う群に分けて5年間のあらゆる死亡や心不全での入院した数を比較しており複合アウトカムをプライマリアウトカムと設定している。

どちらの群に割り付けられた患者もスポンサーであるBiotronik社のデバイス(ICDまたはCRT-D)が植え込まれておりリアルタイムに患者の心拍数やリズムを記録されている。

3013人が選出され、最終的に363人(うち179人がアブレーション群、184人が薬物治療群)が研究対象となっているが割付け後から介入が始まるまでに5週間の導入期間が設けられておりこの期間に心房細動や心不全の薬物的調整が行われることとなる。

薬物調整といってもガイドラインに従い、各主治医の判断で治療が行われるため患者のパラメータにばらつきが生じる可能性があったが、導入期間後のベースラインでの各パラメータは心不全の原因となる虚血性心疾患の有無以外は有意差がなかった。

アブレーション群と薬物治療群はマスキングができないため、アブレーション群の患者で入院させずに薬物治療の強化が行われるというバイアスが生じてしまう。薬物治療はガイドラインに従っているとはいえ、最終的に各主治医の判断となるため観察期間の大きなバイアスとなる。

プライマリアウトカムの達成数が65、130、195に達した時点でそれぞれ解析が行われる。当初は2015年には最終目標に到達すると予想されていたが130に達するまでに時間がかかることが判明したため2017年9月に133イベントで解析を終了している。プロトコールでは中止基準が記載されているが、今回のような期間を延長することについての詳細な内容記載がなく、恣意的な中止が行われた可能性が示唆される。

最終結果として中央値37.8ヶ月の追跡研究においてカテーテルアブレーション群の方が薬物治療群よりも有意に死亡率と入院率を減らすことができた。
51人/179人(28.5%) VS 82人/184人(44.6%) Hazard ratio 0.62, 95% CI 0.43 to 0.87;P=0.007

サブグループ解析ではLVEFが25%未満の場合のみ薬物療法単独の方が複合アウトカムが改善することが示唆された。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科