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0.2γ以上のノルエピネフリンまたは同様量の他の昇圧薬を使用している血管拡張性ショック患者に対してangiotensinII(以下、AGII)またはプラセボ(生理食塩水)を投与したRCTである。Primary Endpointは薬剤投与開始して3時間後の平均動脈血圧が介入開始時のベースより10mmHg以上上昇したか、または75mmHg以上に達したかどうかである。344人が抽出されたが早期に状態が改善したり同意を撤回するなどで321人(163人がAGII、158人がプラセボ)がITT解析にかけられた。

Primary Endpointに達したAGIIグループは163人中114人(69.9%)、プラセボ群で158人中37人(23.4%)であった(OR;7.95 95%CI 4.76−13.3 P<0.001)。Secondary Endpointでは48時間後の時点で循環器系SOFAスコアがAGIIグループの方で有意に改善した(−1.75VS−1.28 P=0.01)。

有害事象については詳細不明ではあるが途中で中止になった、新規感染症の発症、多臓器不全などで全てを含めるとAGIIグループで87.1%、プラセボ群で91.8%に生じた。
28日死亡率はAGIIグループで163人中75人(46%)、プラセボ群で158人中85人(54%)であった(Hazard ratio 0.78 CI0.57−1.07;P=0.12)。
著者らは、予後や有害事象には影響を与えないが高用量の血管収縮薬に不応の血管拡張性ショックに対してAGIIは効果的に血圧を上昇させると結論した。

血管拡張性ショックの患者の80%程度が敗血症であった。Primary endpointを達成できる割合をAGII群で60%、プラセボ群で40%と見積もっている根拠が不明確であり、実際の結果がAGII群で69.9%、プラセボ群で23.4%と大きく解離していた。ランダム化前に25ml/kg以上の補液が行われているがランダム化後の補液の記載がない。原疾患に対する抗菌薬やソースコントロールといった介入については詳細不明であるがおよそ50%程度と死亡率が高かった。

AGIIが血圧を上昇させることは分かったが、死亡率や有害事象に差はなく、早期にベースのカテコラミンが減らせるということからピトレシンと同じような感覚でベースのカテコラミンを減らす目的で使用していくことになるのであろうか。今後、ノルアドレナリンを使用している敗血症性ショック患者に対してピトレシンとAGIIの比較をするなどのRCTが行われることが予想される。

N Engl J Med 2017;377:419-30 DOI:10.1056/NEJMoa1704154

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科