亀田QQ卒業生インタビュー vol.1

現在沖縄で北米型のER physicianの道を突き進んでいる北井先生から近況報告と亀田QQの魅力についてメッセージをいただきました。

北井勇也(在沖米国海軍病院・日本人フェロー)

略歴:
2010年3月 横浜市立大学医学部卒業
2010年4月〜2012年3月 亀田総合病院 初期研修医
2012年4月〜2015年3月 亀田総合病院 救命救急科 後期研修医
2015年4月〜2017年3月 亀田総合病院 救命救急科 医長代理
2017年4月〜現在 在沖米国海軍病院

私は卒後8年目の救急医です。千葉県鴨川市の亀田総合病院で初期研修・救急科後期研修・救急科スタッフとして計7年間勤務しておりました。この度、亀田総合病院・救命救急科の卒業生インタビュー第1号を飾ることができ、これまでの人生でTop5に入るくらいの喜びを感じております。そんな私の亀田卒業後の進路・近況と、私が感じる亀田救急の魅力を皆様にお伝えできればと思います。

現在、沖縄にある米国海軍病院で日本人フェローとして勤務しております。そもそも、「海軍病院って何?」と思う方もいると思いますので簡単に紹介します。米国海軍病院は沖縄と横須賀にあり、それぞれ6人の日本人医師が働いております。ここを受診される患者さんは主に、現役の軍人とその家族、日本に住み続けている退役軍人とその家族です。我々の主な業務は、日本人の家族が受診された場合の医療通訳や、病院のcapacityに限りがあるため、院内では対応できないような患者が発生した場合の海軍病院と日本の病院間の患者搬送のコーディネートです。そのような業務の傍ら、各診療科をローテートし、米国スタイルの医療を学びながら英語のスキルアップを行なっています。

ここに集まってくる日本人医師のbackgroundは様々ですが、米国への臨床留学を目指している人が多く、皆で日々切磋琢磨しながら各々の次なるstep upのための準備をしております。いい同期に恵まれて、楽しく過ごしています。

亀田総合病院は米国帰りの先生や海外留学を目指す人が多く、留学をサポートしてくれる体制も整っています。亀田救急科の先輩にも海外で活躍されている方もおり、自分も本場の「北米型ER」というものを学び、日本の救急医療の底上げに貢献したいという思いで今この道に進んでいます。

沖縄は想像通り気温は暑く湿気も多いですが、人は温かく、自宅のベランダから見える綺麗な海と夕日に日々癒されております。

<亀田救急の魅力 〜南房総の"Gate Keeper"〜>
巷では、千葉県北部を舞台とした「コード・ブルー 3rdシーズン」が1stシーズンから引き続き人気を博しているが、千葉県南部には、特に太平洋側一帯の地域の救急医療を全面に担っている熱い救急医たちがいる。それが、亀田総合病院の救命救急科だ。亀田総合病院が位置する鴨川市の人口自体は決して多くはないが、彼らがカバーしている医療圏は広範囲だ。救急車で1時間以上かけて搬送されてくる患者もいる。患者の状態が不安定であれば、ドクターカーで現場出動し、搬送途中であればドッキングして救急車内で初期評価・安定化を行う。ほぼすべての疾患がこの病院に集中し、急性・慢性疾患問わずほぼすべての初期診療に携わる。周りは自然が多く海に面しており、夏場にはサーフボードによる外傷やスキューバダイビングによる減圧症などマリンスポーツ関連の事故や、海洋生物やマムシなどの危険生物による被害の対応は日常茶飯事である。都会とは違い危険ドラッグに遭遇することはほとんどないが、有機リン中毒や一酸化炭素中毒など、救急医のお家芸ともいえる中毒診療も十分に経験を積むことができる。自衛隊ヘリに同乗して伊豆諸島まで患者を迎えに行くことや、遠洋漁業中の外国船内で急病人が発生した場合には海上保安庁のヘリがピックアップした外国人患者を受け入れることもある。

院内や病院周辺のみならず、千葉県南部全体および、海を渡ったところの医療にまで貢献できる。そして、卒後4・5年目にして、その広範囲な医療圏を意識したマネージメントが出来るようになる。

このような経験は全国のすべての救急センターで出来ることではないが、バラエティーに富んだ疾患や幅広い患者層に対応する亀田救急での経験があれば、どこでも働ける救急医になれる。亀田を離れた今、このこと強く実感している。将来、救急を専門としないが幅広く初期診療をできるようになりたいという方のトレーニングにも適しているが、救急専属の後期研修医としてトレーニングすることを強くお勧めする。なぜなら、先に述べたような医療圏を意識し、責任感と使命感を持って救急医療を行うには、その環境に数年間どっぷりと身を置き、救急センターの他の職種の方々や、地域の救急・消防隊員との間に良好な信頼関係を築き上げることが不可欠である。亀田のような環境に恵まれた救急科で研修を行うことでそれを達成することができる。

長くなったが、要するに「亀田の救急いいよ!来ちゃいなよ!!」ってことである。熱い救急医たちのもと、熱い救急医を目指して欲しい。

これまでいいことばかりを書いてきたが、救急医になって「損をしたな」と思うことが2つある。1つ目は、減圧症を恐れるあまり、沖縄に来ても未だダイビングに手を出すことができないこと、2つ目は、マムシやハブ咬傷を恐れるあまり、茂みの傍や暗い夜道を通るときには過剰にビクビクしながらいつも足早になってしまうこと、である。知らぬが仏か、知らぬが損か。。

最後に、"Gate keeper"には2つの意味がある。1つは、南房総の救急医療の最後の砦だということ、もう1つは、亀田総合病院は千葉県のマスコットキャラクター「チーバくん」の、まさに "Gate" を守っているということである。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科