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C. Difficile感染症(CDI)は、典型的には院内感染であり、抗菌薬使用歴や医療施設滞在歴のある高齢者に発症するが、市中発症のCDIがこの20年間で増加しているとされる。本研究は米国の10の救急部門で行われた市中発症CDIの前向き多施設共同観察研究(記述研究)である。
2010年11月-2013年4月の間に、嘔吐を伴わない下痢(3回以上/日)のために研究施設を受診した2歳以上の患者を対象にした。便検体でのC difficile培養陽性もしくはCD toxin陽性の患者と、いずれも陰性の患者の記述統計量を示した。
登録患者は422例[IQR 30-57歳, 範囲2-94歳]で、663例の患者が登録基準を満たすものの、研究に組み込まれなかった。
primary outcomeは下痢で救急外来を受診する患者におけるCDIの有病率、secondary outcomeは典型的なCDIのリスクファクター(3ヶ月未満の抗菌薬の使用で、3ヶ月未満の病院や介護施設滞在、CDIの既往)のない患者のCDIの有病率。
結果は、救急外来を受診する嘔吐のない下痢患者の10.2%がCDIであり、典型的なリスクファクターのない患者6.9%がCDIであった。3ヶ月以内の抗菌薬暴露、1泊以上の医療施設滞在やCDI既往は市中発症CDIのリスクであった。
問題点としては、対象者患者の選択が救急部門のスタッフに委ねられており、選択バイアスがあり、有病率に影響している。
結論として、CDIは米国と日本との違いはあるが、高リスク群だけではなく、低リスク群でも有病率が高く、想定よりもコモンな疾患であると想定される。

Clostridium difficile Infection Among US Emergency Department Patients With Diarrhea and No Vomiting.
Abrahamian FM et al.
EMERGEncy ID NET Study Group.
Ann Emerg Med. 2017 Jul;70(1):19-27.e4.
doi: 10.1016/j.annemergmed.2016.12.013. Epub 2017 Feb 24.


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科