アセトアミノフェンは同一発熱機会中の熱性けいれんの再発を減少させるか

「Acetaminophen and Febrile Seizure Recurrences During the Same Fever Episode」
PEDIATRICS Volume 142, number 5, November 2018

【Introduction】
熱性けいれん(Febrile seizures; FS)は、小児期で最も頻度の高いけいれんで、日本での有病率は7-11%、同一発熱機会中の再発率は15%にも上る。アセトアミノフェンは小児に最も一般的に使用される薬剤だが、FS再発予防効果は明らかでない。

【Research Question】
アセトアミノフェンは同一発熱機会中の熱性けいれんの再発を減少させるか

【Methods】
2015年5月1日〜2017年4月30日にかけて日本の市立ひらかた病院で行われた単施設オープンラベルランダム化比較試験。対象患者はFSで救急外来を受診した生後6〜60ヶ月の小児で、同一発熱機会中に2回以上FSを起こしている、15分以上続くけいれん、ジアゼパムの投与を受けている、下痢を合併しているなどの患者は除外された。2人の著者が乱数表を用いてランダム割付を行った。アセトアミノフェン群の患者には、ただちにアセトアミノフェン座薬10mg/kgを投与し、その後FS発症24時間まで、体温38℃以上であれば6時間おきに投与するよう両親に指示した。解熱剤非投与群は、FS発症24時間まで解熱剤を使用しないよう指示した。主要評価項目は同一発熱機会中の熱性けいれん再発とした。
統計学的有意差はα< .005と設定した。サンプルサイズはFS 再発率を15%、5つの変数で多重ロジスティック回帰分析を行うとして、400例に設定した。得られた結果はまず二変量解析を行い、統計学的有意差があった変数について多重ロジスティック回帰分析を行なった。

【Results and Conclusion】
同一発熱機会中の熱性けいれん再発率は、アセトアミノフェン群9.1%、解熱剤非投与群23.5%だった。多重ロジスティック回帰分析では、アセトアミノフェンは最大の再発予防因子だった(オッズ比5.6)。アセトアミノフェンは同一発熱機会中のFS再発を減少させる可能性が示唆された。

【Implications】
内的妥当性がある試験で、本研究においてはアセトアミノフェンは有効だったと言える。しかし、複雑型FS・下痢随伴・ジアゼパム投与患者を除外している、単施設のオープンラベル試験でバイアスが入り込む余地がある、などデザイン上の問題があり、外的妥当性が低く、一般化することは困難である。アセトアミノフェンは安価で安全性が高く一般的に使用される薬剤であるため、より質の高い研究での検証が期待される。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科