ER x ICU 合同Journal Club

定期的にERとICUで合同journal clubを開催しています。論文の吟味と実際にどのように臨床に用いていくかを検討するカンファの様子と論文のポイントを紹介します。

[Research question]
ICU挿管患者の経腸栄養カロリー総量(target量)の違いによって死亡率は変わるのか?

[Title]
Energy-Dense versus Routine Enteral Nutrition in the Critically Ill

Chapman M, et al. TARGET Investigators, for the ANZICS Clinical Trials Group. N Engl J Med. 2018 Nov8;379(19):1823-1834. doi: 10.1056/NEJMoa1811687. Epub 2018 Oct 22. PMID:30346225.

[Introduction]
これまでICU入室患者の栄養管理に関して、ESPENのガイドラインなどでは25-30kcal/kg/dayが推奨されている。EDEN Trial やPermiT Trialでもpermissive underfeedingで予後は変わらないなどの報告があるが、blindがされていないことやpower不足、外的妥当性の問題があり、実際にどれくらいの投与量が適切かは分かっていなかった。

[Methods]
TARGETは2016/6/21〜2017/11/14の期間にオーストラリアとニュージーランドにおける46のICUで行われた多施設共同盲検無作為化試験である。これから経管栄養を行う、もしくは12時間以内に経管栄養を開始され、今後少なくとも2日間は経管栄養される予定の18歳以上の気管挿管されたICU患者4000人を対象とした。1.5kcal/kg/hrのIntervention群と1.0kcal/kg/hrのComparison群において投与量を1.0ml/kg/hrと固定することで投与総量をコントロールした。栄養投与プロトコールは連続5日以上遵守した場合は終了可能、中止基準は死亡、ICU退室、経口摂取の開始とした。

[Results]
Primary outcomeである90日死亡率は1.5-kcal 群では26.8% (523/1948人)、1.0-kcal群では25.7% (505/1966人)で有意な差はなかった(relative risk, 1.05; 95% CI, 0.94 to 1.16; P = 0.41)。感度分析として90日全死亡、28日死亡、院内死亡に関しては転帰と関連しうる背景因子で二重に調整し、log-binomial regressionで相対リスクを求めたが、有意差を認めなかった。(調整因子:施設、国、年齢、性別、APACHE score、BMI、入室条件)
Secondary outcomeである28日/180日での退院死亡、Randomization後の生存期間、ICU入室期間、入院期間、 人工呼吸器/透析/昇圧薬を使用しない期間、180日後の機能的予後の全てにおいて有意な差は認めなかった。

[Implication]
本論文は多施設、二重盲検で症例数も多く、除外や脱落も少ないなど研究デザインの質は高い。一般的にこれまでのICU管理でもfull feedingを達成することが多くはない中で、ICU挿管患者の経管栄養に関して目標カロリーの6-7割までのunderfeedingは許容されると言える。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科