2022.05.17 麻酔科抄読会

初めまして後期研修医の店網均と申します。2022年5月19日(木)当院麻酔科ラウンジにて後期研修医の竹下先生、金先生による抄読会が行われたので報告致します。

担当:竹下先生
Central Venous-to-Arterial CO2 Difference-Assisted Goal-Directed Hemodynamic Management During Major Surgery--A Randomized Controlled Trial

(背景)
中心静脈-動脈間炭酸ガスギャップ(DCO2)<6mmHg を目標とするプロトコルは、敗血 症性ショックの臓器機能を改善した。周術期におけるDCO2の使用に関するエビデンスは乏しく、ASAI および II の大手術を受ける患者において、中心静脈酸素飽和度(SCvo2)およびDCO2を用いたGDTプロトコルが、実用的な目標指向型ケアと比較して臓器機能障害およびICU滞在を低減するかどうかを判定することを目的とした。
P 外科手術を受けるASA PSIまたはIIの患者
I ScvO2とDCO2 を指標とした周術期の輸液管理
C 通常の輸液管理
O 術後(POD 0)の臓器障害の発生率

(結果)
各群(44例)はベースライン、周術期の輸液、血液製剤、血管内圧の使用量、臓器機能障害に有意差はなかったが、GrI 群に少なかった(79% vs 66%; P=0.2)。ICU滞在期間は GrI で有意に短く(1.52;標準偏差[SD]、0.82 vs 2.18;SD,1.08日;P=0.002)、機械換気期間(介入群0.9日 vs 対照群0.6日;P=0.06)および入院期間には有意差はなかった。周術期のDCO2(5.8 vs 8.4mm Hg、P<.001)および SCvo2(73.5 vs 68.4 mm Hg、P<.001)はGrIで有意に良好であった。

(結論)
DCO2によるGDTは、本研究においては臓器機能を改善しなかった。しかし、ドブタミンの使用量を増やし、組織酸素パラメータを改善し、ICU滞在期間を短縮させた。DCO2をルーチンに使用するためには、より多くのエビデンスが必要である。心拍出量モニターがない場合は、主要な外科手術において、容易に利用でき、安価で、十分に活用されていないパラメータとなる可能性がある。

(当科での議論)
DCO2 は末梢循環のスタンダードな指標となりうるのか。 臨床的に使える輸液負荷の指標となるのか。


担当:金先生
Quality of Labor Analgesia with Dural Puncture Epidural versus Standard Epidural Technique in Obese Parturients: A Double-blind Randomized Controlled Study

(背景)
硬膜穿刺硬膜外麻酔(DPE)は正中を確認し、硬膜外薬剤の髄腔内移行性を高めることで、 鎮痛の質を向上させることができると思われる。ブロック失敗のリスクが高い肥満妊婦には有利である。本研究では、肥満患者においてDPEは標準硬膜外法に比べ、分娩時の鎮痛の質を向上させるという仮説を立てた。
P 18歳〜45歳、BMI>35、英語が母国語、37〜41週の単胎妊娠、頸管拡大 2〜7cm、NRS >4
I DPE群
C 標準Epi群
O 片効き、Epiの追加ボーラス、カテ入れ替え、C/S時にEpi使用不可
Secondary アウトカム:NRS<1 までの時間、30分後の上部・下部感覚ブロックレベル、30分後・分娩中のModified Bromageスコア、分娩中の最大NRS、硬膜外鎮痛薬のボーラス要求/投与回数、鎮痛総時間、時間当たりの硬膜外薬消費量、分娩第2期期間、分娩形態、胎児心音、1分5分のApgarスコア、母体における有害事象、陣痛鎮痛に対する満足度

(結果)
無作為化された141人の患者のうち、1群66人が解析に含まれた。primaryアウトカム(66例中 34例、52% vs. 66例中32例、49%;オッズ比、1.1 [0.5 to 2.4]; P=0.766)、その個別要素、およびsecondaryアウトカムのいずれにおいてもDPE群と標準Epi群の間に統計的にも臨床的にも有意差を認めなかった。

(結論)
2つの硬膜外麻酔法の間で分娩鎮痛の質に差がなかったことから、肥満の分娩患者における硬膜外麻酔法のルーチン的な使用は支持されない。

(当科での議論)
一部の患者層のみ適応でき、エビデンスがいまいちではないか。
BMI40以上の妊婦の結果を知りたい。


当科では毎週火曜日と木曜日の早朝より抄読会が行われています。発表者は論文を読み込み指導医に添削を受け、またオーディエンスは細かい点まで疑問を投げかけ朝から熱い議論が交わされています。本日は DCO2 および DPE に関して見分を広める機会となりました。
竹下先生、金先生ありがとうございました。

亀田総合病院 後期研修医 店網均

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療