2022.04.21 抄読会

担当:山田先生/大熊先生

Pregnancy and Labor Epidural Effects on Gastric Emptying : A Prospective Comparative Study
Anesthesiology. 2022;136:542-50

背景:
分娩患者では胃排出が遅れるため、周産期の誤嚥が大きな懸念となっている。しかし現在、分娩時の固形食の胃排泄に関する信頼できるデータはなく、分娩時の絶食に関するガイドラインに各国間でも相違が生じている。また、無痛分娩時に使用する硬膜外麻酔は、鎮痛作用により急性期の疼痛を最小限に抑え、消化管運動を促進させることが知られている。しかしながら、硬膜外腔にオピオイドを注入した場合は胃排出率が低下することも先行研究でも示されている。
本研究は、硬膜外無痛分娩時(局所麻酔+フェンタニル注入)にこれら二つの相反する影響を受け、胃排出率がどの変化するかを示している。

概要:
P 硬膜外麻酔を受ける40歳以下、妊娠38週以上の妊婦
I 125gのヨーグルトを摂取し、超音波により胃前庭部断面積を測定し、胃排泄率を計算
C 非妊婦、硬膜外麻酔ありの妊婦、硬膜外麻酔なしの妊婦
O ヨーグルト摂取15・60・90・120分後の胃排泄率

結果:
硬膜外麻酔なし群の胃排出率が、硬膜外麻酔あり群および非妊娠群と妊娠群の対照群と比較して有意に低く、硬膜外麻酔あり群の胃排出率が、非妊娠群および妊娠群と比較して、有意に低いという結果となった。
つまり、硬膜外麻酔を受けた妊婦では軽食の胃排出が有意に遅延し、硬膜外麻酔を受けなかった妊婦ではさらに遅延することが明らかとなった。

当科のスタッフ内では、胃内容物のエコーでの評価は正確にできるのか、肥満妊婦が除外されている点などについて言及がありました。
当院でも現在硬膜外麻酔を用いた無痛分娩を行っており、無痛分娩による分娩数が増えてきています。より安全に行うためにも今後さらなる研究を期待したいです。

山田先生、大熊先生ありがとうございました。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 小林

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療