2022.4.14 抄読会

担当:佐藤先生/柘植先生

Epidural Labor Analgesia--Fentanyl Dose and Breastfeeding Success
A Randomized Clinical Trial
Anesthesiology. 2017 Oct;127(4):614-624.

背景:
米国では無痛分娩で出産する妊婦が多いが、硬膜外無痛分娩が母乳育児に悪影響があるのではないか、という議論があり数々の研究が行われてきた。しかし、その研究の多くは観察研究であり結果も無痛分娩の母乳育児への悪影響があるとする研究も、差はないという研究も同じくらい存在し、質の高い研究は少ない。今回の研究は硬膜外に投与されたフェンタニルの総量によって産後の母乳育児への悪影響がでるという仮説のもと、産後6週時点での母乳育児に成功している割合を検証している。

概要:
P:妊娠38週以降に無痛分娩で出産する経産婦で、過去に出産した児では母乳育児をしており、今回の児も母乳育児を行う妊婦
I:ブピバカイン 0.8 mg/ml +フェンタニル 1μg/mlもしくはブピバカイン 0.625 mg/ml +フェンタニル 2μg/ml
C:ブピバカイン 1 mg/ml
O:産後6週時点で母乳育児をしている人の割合

Secondary outcome...児のApger1分値、出産日のLATCH (Latch, Audible swallowing, Type of nipple, Comfort, and Hold/help)評価、産後3ヶ月時点での母乳育児を終了した人の割合、母乳育児を止めた理由

結果:
フェンタニル1μg/ml群、フェンタニル 2μg/ml、対照群のいずれでも産後6週/産後3ヶ月時点での母乳育児の継続率に差はなく、secondary outcomeもすべての群で差はなかった。

科内のスタッフからは、硬膜外フェンタニルによる母乳育児への悪影響を評価する上で今回のprimary outcomeの設定は適切なのか、ブピバカインとフェンタニルの濃度設定の理由が不明でわかりにくい、などの意見があがり、フェンタニル2μg/ml程度では母乳育児に影響が出ないことは凡そ想像がつき結果は妥当では、などの声も上がりました。

今回の論文はやや古いものでしたが、今後より質の高い研究が出て母乳育児への悪影響有無についての議論が決着することを期待したいです。

佐藤先生、柘植先生有難うございました。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 藤井

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療