山路先生が済生会熊本病院での研修と薬剤性肺障害について発表
当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。今回は、専攻医の山路創一郎先生が、済生会熊本病院での院外研修を振り返るとともに、薬剤性肺障害について発表しました。
済生会熊本病院での研修を振り返って
ATS 2025での交流をきっかけに実現した今回の研修では、済生会熊本病院の診療体制や臨床研究への取り組みについて紹介がありました。
同院では、呼吸器内科による肺病変へのリピオドールマーキングや、近隣医療機関との緊密な連携が行われています。また、働き方改革を意識した16時からのカンファレンスや、熊本ILA Studyをはじめとする臨床研究なども紹介されました。
他施設の診療・研究体制を知ることは、当院の日常診療を見直すうえでも貴重な機会となりました。
薬剤性肺障害とDOACによる肺障害のリスク
後半では、「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き 第3版」などをもとに、薬剤性肺障害の診断や臨床像について解説しました。薬剤性肺障害は原因薬剤や発症時期、画像所見が多彩であり、診断に際しては薬剤歴の確認と他疾患の除外が重要となります。
今回の注目論文として、済生会熊本病院の阿南先生らが2026年にPharmacoepidemiology and Drug Safetyに発表した、直接経口抗凝固薬(DOAC)と急性間質性肺疾患(ILD)の関連を検討した研究が紹介されました。
この研究は、日常診療のカンファレンスでDOACによる肺障害が疑われる症例を経験するなかで、「本当にDOACが原因なのか」という阿南先生の臨床的な疑問から始まったものです。研究に先立ち、レセプトデータから急性ILD患者を特定する診断アルゴリズムの妥当性を検証する研究にも取り組まれ、その成果が今回の研究に活用されました。
日本の大規模レセプトデータベースを用いたケース・クロスオーバー研究で、DOAC使用は急性ILDによる入院リスクの上昇と関連していました(調整オッズ比4.44)。一方、DOAC新規使用者における1年時点の急性ILDの累積発生割合は0.24%と低く、診断精度や対象集団の限界にも注意が必要です。
質疑応答では、薬剤性肺障害の診断の難しさや、データベース研究における診断精度の重要性について議論が交わされました。DOACによる肺障害はまれながらも重篤になり得る有害事象であり、日常診療で認識しておく重要性を再確認しました。
執筆担当者:亀田総合病院 呼吸器内科 舟木佳弘
参考文献
- Anan K, Itaya T, Kataoka Y, et al. Direct Oral Anticoagulant Consumption and the Risk of Acute Interstitial Lung Diseases: A Case-Crossover Study Using Japanese Administrative Data. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2026;35(6). https://doi.org/10.1002/pds.70398
- Anan K, Kataoka Y, Ichikado K, et al. Algorithms Identifying Patients With Acute Exacerbation of Interstitial Pneumonia and Acute Interstitial Lung Diseases Developed Using Japanese Administrative Data. Cureus. 2024;16(1). https://doi.org/10.7759/cureus.53073