吉積先生がILAと免疫チェックポイント阻害薬関連肺障害について発表-治療前CTからICI肺臓炎のリスクをどう考えるか
当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。
今回は、専攻医1年目の吉積先生が、2026年にRespiratory Medicine誌に掲載された、非小細胞肺癌に対する一次治療のPembrolizumab+プラチナ併用化学療法において、治療前から存在する間質性肺異常(interstitial lung abnormality:ILA)が免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎(ICI-related pneumonitis:ICI-P)や予後にどのように関連するかを検討した論文について解説しました(Machiyama, Respir Med 2026)。
ILAはICI-Pのリスクになるのか?
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は進行非小細胞肺癌治療に広く用いられていますが、重要な有害事象の一つがICI-Pです。
ICI-Pの発症頻度は臨床試験では3~5%程度とされていますが、実臨床ではより高いことが報告されています。また、日本人の非小細胞肺癌患者に対するPembrolizumab+化学療法のリアルワールドデータでは、any-gradeの肺臓炎が18%、grade 3以上が5%と報告されています(Fujimoto, JTO Clin Res Rep 2022)。
一方、肺癌患者の治療前CTでは、明らかな間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)と診断するほどではないものの、軽微な間質性陰影を認めることがあります。
このような所見の一部がILAです。
本研究では2025年のATS Clinical Statementに準拠し、ILAを「非荷重部にみられる両側性の肺実質異常で、少なくとも一つの肺区域の5%以上を占めるもの」と定義しています。含まれる所見は、すりガラス影、網状影、牽引性気管支拡張、蜂巣肺、肺構造の変形などです(Podolanczuk, Am J Respir Crit Care Med 2025)。
さらに画像分布と線維化の有無から、
non-subpleural ILA(NS-ILA)
subpleural non-fibrotic ILA(SNF-ILA)
subpleural fibrotic ILA(SF-ILA)
の3つに分類されます。
SF-ILAは、胸膜下優位の病変に構造改変、牽引性気管支拡張、蜂巣肺などの線維化所見を伴うタイプです。
これまでにもILAはICI-Pのリスク因子として報告されてきましたが、既報では抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体、一次治療と後治療など異なる治療背景が混在していました。また、ILAを単純に「あり/なし」で扱った研究も少なくありませんでした。
今回のMachiyamaらの研究は、治療を一次治療のPembrolizumab+プラチナ併用化学療法に限定し、ILAをサブタイプ別に評価した点が特徴です。
国内12施設410例をILAサブタイプ別に解析
本研究は、日本国内12施設による多施設後ろ向きコホート研究です。
2018年12月から2022年12月までに、一次治療としてPembrolizumab+プラチナ併用化学療法を受けた進行・再発非小細胞肺癌患者が対象となりました。
解析対象410例の内訳は、
non-ILA:307例
NS-ILA:39例
SNF-ILA:47例
SF-ILA:17例
でした。
ILAを有する患者は合計103例、25.1%でした。
この研究では、ILAを単純な有無だけでなく、画像サブタイプまで分けてICI-Pの発症や生存との関連を検討しています。
SF-ILAではICI-Pの発症率が高かった
Any-grade ICI-Pは、non-ILA群で21.5%であったのに対して、SF-ILA群では64.7%でした。
Grade 3以上のICI-Pについても、non-ILA群12.1%に対してSF-ILA群35.3%でした。
ICI-Pの累積発症率を比較すると、ILAサブタイプ間でany-grade、grade 3以上のいずれについても有意差を認めました。
多変量解析では、non-ILA群と比較して、SF-ILA群はany-grade ICI-Pと関連し、subdistribution hazard ratio(sHR)は4.75(95%CI 2.27–9.95)でした。
Grade 3以上のICI-Pについても、SF-ILAはsHR 3.79(95%CI 1.43–10.1)と関連しました。
一方、SNF-ILAはany-grade ICI-Pでは関連を認めたものの、grade 3以上では明らかな関連を認めませんでした。
今回の結果からは、単に「ILAがある」という情報だけでなく、線維化を伴うSF-ILAであるかどうかが、特に重症ICI-Pのリスクを考えるうえで参考になる可能性があります。
SF-ILAと生存との関連
生存についても評価されています。
OS中央値は、
non-ILA:21.8か月
NS-ILA:23.2か月
SNF-ILA:14.0か月
SF-ILA:11.5か月
でした。
一方、4群をKaplan–Meier法で単純に比較した場合には、OS、PFSともに統計学的な有意差を認めませんでした。
多変量解析では、SF-ILAはOS不良と独立して関連し、non-ILA群に対するHRは1.99(95%CI 1.06–3.73)でした。
PFSについてはHR 1.66(95%CI 0.93–2.95)で、統計学的に有意な関連を認めませんでした。
SF-ILA群ではECOG Performance Status 2~4の患者がむしろ少なかったため、背景因子を調整した後にSF-ILAとOSとの関連が認められたという点も、この結果を解釈するうえで留意が必要です。
この結果を実臨床にどう当てはめるか
今回の勉強会では、この結果を「SF-ILAがあればICIを避ける」と単純に解釈しないことも議論されました。
本研究に含まれているのは、実際にPembrolizumab+プラチナ併用化学療法を受けた患者です。
治療前CTで間質性肺疾患や肺障害リスクを考慮し、ICIを使用しなかった患者はこの研究には含まれていません。
そのため、この研究から分かるのは、あくまで「実際にPCTを受けた患者の中で、SF-ILAを有する患者はICI-Pのリスクが高かった」ということです。
「SF-ILA患者ではICIを投与した方がよいのか、投与しない方がよいのか」を比較した研究ではありません。
原著でも、ICIを使用しなかったILA患者の対照群がないため、本研究は治療を受けた集団内でのrisk stratificationとして解釈すべきであり、ICI治療そのものの因果効果を示すものではないとしています。
また、SF-ILAは410例中17例と少なく、サブグループ解析の精度には限界があります。
さらに、CTは各施設で放射線科医と呼吸器内科医が判定しており、中央画像判定は行われていません。
個々の網状影や牽引性気管支拡張などの画像所見も構造化して収集されておらず、症状や肺機能検査についても系統的なデータがありませんでした。
そのため、著者らもILAと臨床的ILDとの間に一部overlapやmisclassificationが残っている可能性を限界として挙げています。
「ILAがあるか」だけでなく、「どのようなILAか」
今回の研究から、治療前CTでILAを認めた場合には、単にILAの有無だけではなく、線維化を伴うSF-ILAであるかどうかまで評価することが、ICI-Pのリスクを考えるうえで参考になる可能性があります。
一方で、SF-ILAという画像所見だけでICIの使用可否を決めることには注意が必要です。
画像上の線維化所見だけでなく、臨床的ILDに相当する状態ではないか、呼吸機能や呼吸予備能はどうか、ほかに肺障害のリスク因子がないかなども含めて評価する必要があります。
また、ICIによって期待される肺癌治療上のベネフィットや代替治療の有無も患者ごとに異なります。
したがって、SF-ILAはICIを機械的に回避する理由としてではなく、治療前のリスク層別化の一つとして位置づけることが重要と考えられます。
Take Home Message
一次治療としてPembrolizumab+プラチナ併用化学療法を受けた国内410例の多施設後ろ向きコホートで、SF-ILAはany-grade ICI-P〔sHR 4.75(95%CI 2.27–9.95)〕、grade 3以上のICI-P〔sHR 3.79(95%CI 1.43–10.1)〕と関連しました(Machiyama, Respir Med 2026)。
ILAを単に「あり/なし」で捉えるのではなく、ILAサブタイプまで評価することがICI-Pのリスク層別化に役立つ可能性があります。
一方、SF-ILAは17例と少なく、本研究は実際にICIを含む治療を受けた患者のみを対象としています。
SF-ILAをICI回避の自動的な理由とするのではなく、治療前のリスク評価の一つとして位置づけ、患者ごとに治療効果と肺障害リスクの両面から治療方針を検討することが重要です。
執筆担当者:亀田総合病院呼吸器内科 舟木佳弘
参考文献
1.Machiyama H, Matsumoto K, Shiroyama T, et al. Impact of pre-existing interstitial lung abnormalities on pneumonitis risk and survival in chemo-naive patients with non-small-cell lung cancer receiving pembrolizumab plus chemotherapy. Respir Med. 2026;257:108852.
2.Podolanczuk AJ, Hunninghake GM, Wilson KC, et al. Approach to the Evaluation and Management of Interstitial Lung Abnormalities: An Official American Thoracic Society Clinical Statement. Am J Respir Crit Care Med. 2025;211:1132-1155.
3.Fujimoto D, Miura S, Yoshimura K, et al. A real-world study on the effectiveness and safety of pembrolizumab plus chemotherapy for nonsquamous NSCLC. JTO Clin Res Rep. 2022;3:100265.
4.Nakanishi Y, Masuda T, Yamaguchi K, et al. Pre-existing interstitial lung abnormalities are risk factors for immune checkpoint inhibitor-induced interstitial lung disease in non-small cell lung cancer. Respir Investig. 2019;57:451-459.
5.Kikuchi R, Watanabe Y, Okuma T, et al. Outcome of immune checkpoint inhibitor treatment in non-small cell lung cancer patients with interstitial lung abnormalities: clinical utility of subcategorizing interstitial lung abnormalities. Cancer Immunol Immunother. 2024;73:211.