亀田総合病院 呼吸器内科

簑田先生が急性低酸素性呼吸不全に対するHFNCについて発表 ― SOHO試験を読む

勉強会レポート

当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。

今回は、専攻医の簑田先生が、急性低酸素性呼吸不全に対する高流量鼻カニュラ酸素療法(high-flow nasal cannulaHFNC)について、2026年にNew England Journal of Medicineに掲載されたSOHO試験を中心に解説しました。

 

 

急性低酸素性呼吸不全にHFNCを使用すると予後は改善するのか?

HFNCは、加温・加湿した高流量のガスを鼻カニュラから投与する呼吸管理法で、急性低酸素性呼吸不全の患者さんに広く使用されています。

実臨床でも、酸素マスクによる高濃度酸素投与が持続して必要となる場合など、HFNCへの切り替えを検討する場面は少なくありません。

一方、HFNCが標準酸素療法と比較して、挿管や死亡といった重要なアウトカムをどこまで改善するかについては、これまでの臨床試験で必ずしも一貫した結果が得られていません。

2015年のFLORALI試験では、標準酸素療法、HFNC、非侵襲的陽圧換気(NIV)の3群が比較され、主要評価項目である挿管率には有意差を認めませんでしたが、90日死亡率はHFNC群で低いという結果でした。

その後、免疫不全患者を対象としたHIGH試験では28日死亡率の低下は示されず、COVID-19による急性呼吸不全を対象としたSOHO-COVID試験でも28日死亡率に有意差を認めなかった一方、HFNC群では挿管率が低下しました。

このような背景のなか、SOHO試験では、

「急性低酸素性呼吸不全患者にHFNCを使用すると、標準酸素療法と比較して28日死亡率を低下させるか?」

というClinical Questionが、大規模ランダム化比較試験で検証されました。

SOHO試験:1,110例を対象とした多施設ランダム化比較試験

SOHO試験は、フランス国内42施設のICUで行われた、多施設・非盲検ランダム化比較試験です。

対象となったのは急性低酸素性呼吸不全を呈した成人ICU患者で、

  • 呼吸数>25/
  • 胸部画像で肺浸潤影あり
  • PaO₂/FiO₂比(P/F比)≦200

などを満たす患者が組み入れられました。

一方、PaCO₂45 mmHgの高二酸化炭素血症、重症COPD、長期酸素療法・呼吸補助を必要とする患者、心原性肺水腫、高度のショックや意識障害、抜管後・術後呼吸不全、緊急挿管が必要な患者、DNIdo-not-intubate)の患者などは除外されました。

つまり本試験は、概ね肺炎を主体とするde novoI型急性呼吸不全を対象とした試験と考えると理解しやすいと思います。

実際、解析対象1,110例のうち肺炎による呼吸不全が88.1%を占め、P/F比中央値は約130P/F≦100の患者は17%でした。また、免疫不全患者が約22%COVID-19肺炎も約46%含まれていました。

 

HFNCと標準酸素療法を直接比較

患者はHFNC556例と標準酸素療法群554例に割り付けられました。

HFNC群では50 L/分以上の高流量酸素を使用し、SpO₂ 9296%を目標にFiO₂を調整しました。原則として少なくとも48時間継続されました。

一方、対照群ではフェイスマスクやリザーバーマスクによる標準酸素療法が行われ、同様にSpO₂ 9296%を目標に酸素投与量が調整されました。

ここで注意したいのは、今回の「標準酸素療法」が、鼻カニュラ数L/分程度の患者を指しているわけではないことです。組み入れ時の酸素流量は平均約13 L/分であり、かなり酸素需要の高い患者を対象とした比較です。

主要評価項目は28日以内の死亡率、主な副次評価項目として28日以内の挿管率、挿管までの時間、人工呼吸器非使用期間、ICU滞在期間などが評価されました。

また、非盲検試験では挿管の判断が担当医の影響を受ける可能性があるため、本試験では呼吸数、呼吸筋疲労、アシデミア、酸素化などに基づく挿管基準もあらかじめ設定されていました。

 

28日死亡率は14.6%14.6%で差を認めず

主要評価項目である28日死亡率は、

HFNC群:14.6%
標準酸素療法群:14.6%

で、両群に差を認めませんでした。

つまり、今回の試験ではHFNCによって28日死亡率が低下することは示されませんでした。

SOHO試験では、もともと標準酸素療法群の死亡率を18%HFNC群を12%と仮定し、絶対差6%を検出するように症例数が設定されていました。しかし実際の死亡率は両群とも14.6%であり、事前に想定していたほど大きな死亡率低下は認められませんでした。

一方、対照群の死亡率自体が想定より低かったため、数%程度のより小さな死亡率への効果まで完全に否定できる試験ではないことにも注意が必要です。

 

挿管率はHFNC群で約6%低下

28日以内の挿管率は、

HFNC群:42.4%
標準酸素療法群:48.4%

で、HFNC群で約6 percentage points低い結果でした。

これは臨床的に興味深い結果ですが、解釈には注意が必要です。

まず、挿管率は主要評価項目ではなく副次評価項目であり、複数の副次評価項目に対する多重性の調整は行われていません。

さらに本試験は非盲検試験です。挿管基準はあらかじめ設定されていたものの、HFNCを使用しているという事実が担当医の挿管判断に影響した可能性を完全には除外できません。

そのため、今回の結果から「HFNCを使用すれば確実に挿管を回避できる」とまで結論づけることは難しいと考えられます。

 

HFNCでは呼吸困難や頻呼吸が早期に改善

一方、HFNC群では治療開始1時間後の呼吸数が少なく、患者さん自身が評価した呼吸困難の改善もより多く認められました。

呼吸困難が改善した患者の割合は、HFNC49.5%、標準酸素療法群34.7%でした。

HFNCには、高流量による上気道死腔のwashout、一定のPEEP効果、吸気需要を満たすことによる呼吸仕事量の軽減など、さまざまな生理学的効果があります。

今回の結果は、死亡率のような長期的なアウトカムとは別に、呼吸困難や頻呼吸といった患者さんの短期的な負担を軽減することが、HFNCの重要な利点である可能性を示しています。

 

この試験結果を実臨床にどう当てはめるか

今回の勉強会では、SOHO試験の対象患者と、実際に私たちがHFNCを使用する患者との違いについても議論しました。

臨床では、COPDなどによるII型呼吸不全、心不全、抜管後呼吸不全、あるいはDNIの患者さんにHFNCを使用することも少なくありません。しかし、これらの患者は今回のSOHO試験では除外されています。

そのため、SOHO試験の結果をすべてのHFNC使用患者にそのまま当てはめることはできません。

逆に、肺炎を主体としたI型急性呼吸不全で、かなりの酸素投与を必要としている患者については、「とりあえずHFNCにすれば予後が改善する」というよりも、標準酸素療法でも適切にモニタリングできる患者が存在することも今回の試験から考えさせられます。

2024年に発表された急性低酸素性呼吸不全に対する酸素療法のコンセンサスガイドラインでは、一定以上の酸素需要を有する患者では標準酸素療法よりHFNCを使用することが条件付きで推奨されています。今回のSOHO試験は、HFNCの生理学的・症候学的な利点を否定するものではありませんが、その使用によって死亡率まで改善するわけではないことを改めて示した試験と考えられます。

 

HFNCを開始した後こそ、挿管を遅らせないことが重要

HFNCでは酸素化や呼吸困難が改善する一方、呼吸不全そのものが改善していない場合には、侵襲的人工呼吸管理への移行が必要になります。

SOHO試験では挿管に至った患者における挿管までの時間は両群で大きな差を認めませんでした。しかし、この結果だけからHFNCによる挿管遅延が起こらないと結論づけることもできません。

HFNCを使用する際には、酸素化だけでなく、呼吸数、呼吸努力、意識状態、循環動態などを継続的に評価し、治療失敗を早期に判断することが重要です。

実際、2024年のコンセンサスガイドラインでも、HFNCを使用する患者は治療失敗を速やかに認識し、挿管の遅延を避けられる環境で管理することが推奨されています。

 

Take Home Message

SOHO試験では、急性低酸素性呼吸不全に対するHFNCによる28日死亡率の低下は示されませんでした。

一方で、HFNC群では挿管率が約6%低く、呼吸困難や頻呼吸などの早期改善も認められました。ただし挿管率は副次評価項目であり、非盲検試験であることなどから慎重な解釈が必要です。

また、今回の対象は主として肺炎によるI型呼吸不全であり、COPDによる高二酸化炭素血症、心原性肺水腫、抜管後呼吸不全、DNIなど、実臨床でHFNCを使用することの多い患者群は含まれていません。

HFNCを「死亡率を改善する治療」として捉えるのではなく、呼吸困難や呼吸仕事量を軽減しながら患者を安全に管理するための呼吸サポートの一つとして使用し、治療反応が不十分な場合には挿管を遅らせないことが重要であると考えられました。

今回のレクチャーを通して、HFNCを「使うか、使わないか」だけではなく、「どのような患者に、何を目的として使用し、開始後に何を評価するのか」を改めて考える機会となりました。

 

執筆担当者:亀田総合病院呼吸器内科 舟木佳弘

 

参考文献

1Frat JP, Quenot JP, Guitton C, et al. High-Flow or Standard Oxygen in Acute Hypoxemic Respiratory Failure. N Engl J Med. 2026;394:2095-2106. doi:10.1056/NEJMoa2516087.

2Frat JP, Thille AW, Mercat A, et al. High-Flow Oxygen through Nasal Cannula in Acute Hypoxemic Respiratory Failure. N Engl J Med. 2015;372:2185-2196. doi:10.1056/NEJMoa1503326.

3Azoulay E, Lemiale V, Mokart D, et al. Effect of High-Flow Nasal Oxygen vs Standard Oxygen on 28-Day Mortality in Immunocompromised Patients With Acute Respiratory Failure: The HIGH Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018;320:2099-2107.

4Frat JP, Quenot JP, Badie J, et al. Effect of High-Flow Nasal Cannula Oxygen vs Standard Oxygen Therapy on Mortality in Patients With Respiratory Failure Due to COVID-19: The SOHO-COVID Randomized Clinical Trial. JAMA. 2022;328:1212-1222.

5Helms J, Catoire P, Abensur Vuillaume L, et al. Oxygen therapy in acute hypoxemic respiratory failure: guidelines from the SRLF-SFMU consensus conference. Ann Intensive Care. 2024;14:140.