亀田総合病院 呼吸器内科

舟木先生が線維性間質性肺疾患における肺生検について発表

勉強会レポート

当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。今回は、部長代理の舟木先生が、線維性間質性肺疾患(fibrotic interstitial lung diseasefILD)における肺生検の適応と、肺生検で得られた病理情報を多分野合議(multidisciplinary discussionMDD)にどのように生かすかについて解説しました。

 

今回の発表では、2026年にAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicineに掲載されたState-of-the-Art reviewを中心に、経気管支肺生検(TBLB)、経気管支肺クライオバイオプシー(transbronchial lung cryobiopsyTBLC)、外科的肺生検(surgical lung biopsySLB)の特徴とリスク、肺生検を検討すべき患者、診断確信度と治療方針への確信度の違いについて整理しました(Mor, AJRCCM 2026)。

 

病理パターンは最終診断名ではない

現在の間質性肺疾患(interstitial lung diseaseILD)診療では、画像や病理で認められた形態学的パターンを、そのまま最終診断名とすることはできません。

通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumoniaUIP)、非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumoniaNSIP)、器質化肺炎(organizing pneumoniaOP)、胸膜肺実質線維弾性症(pleuroparenchymal fibroelastosisPPFE)などは、あくまで画像または病理のパターンです。同じパターンであっても、臨床背景や付随所見によって、特発性にも、膠原病、過敏性肺炎、薬剤、職業・環境曝露などに伴う二次性にもなり得ます(Ryerson, ERJ 2025)。

例えば、網状影、牽引性気管支拡張、すりガラス陰影というNSIPに合致する主所見があっても、胸膜直下の病変が保たれるsubpleural sparingや縦隔リンパ節腫大があれば膠原病関連ILDを、小葉中心性結節があれば線維性過敏性肺炎をより強く疑います。

また、MDDでは、臨床医、放射線科医、病理医が同じ意味で用語を使用することが重要です。2024年に改訂されたFleischner Societyの胸部画像用語集では、線維化、蜂巣肺、網状影、構造改変などの定義が整理されています(Bankier, Radiology 2024)。

 

生検手技によって見える範囲が異なる

TBLBTBLCSLBでは、採取できる検体の大きさと肺内の構造が異なります。

通常のTBLBで得られる検体は概ね13mm程度で、細気管支周囲の限られた範囲を評価します。悪性腫瘍、感染症、サルコイドーシスなどでは診断に有用ですが、fILDにおける線維化パターンの評価には限界があります。

TBLCでは概ね510mm程度の比較的大きな検体が得られ、TBLBよりも肺胞領域や小葉内の構造を広く観察できます。UIP patternfibrotic NSIP、器質化、肉芽腫、気道中心性変化などを評価できる可能性があります。一方、胸膜直下の病変、小葉全体の構築、肺内に散在する不均一な所見の評価には限界があります。

SLBは、現在では主として胸腔鏡下手術(video-assisted thoracic surgeryVATS)で行われ、2030mm程度の検体から小葉全体や胸膜直下の病変を観察できます。病理学的な情報量は最も多い一方で、侵襲性も最も高くなります(Mor, AJRCCM 2026)。

重要なのは、それぞれの手技に「優劣」があるというより、疑っている疾患や確認したい所見に対して、その手技で適切な部位と大きさの検体を採取できるかを考えることです。

TBLCの目的は、病理所見だけで診断名を確定することではありません。MDDにおいて診断や治療方針を変え得る病理情報を得ることが、その本質的な役割です。

 

「診断が分からないから生検する」では不十分

肺生検を検討するのは、臨床情報、血液検査、呼吸機能検査、気管支肺胞洗浄、画像所見などを検討しても、診断または診療方針に重要な不確実性が残っている患者です。

具体的には、病理情報によって、抗線維化薬、免疫抑制治療、抗原回避、経過観察、追加検査などの方針が変わる可能性があり、画像上も診断に有用な検体が得られる部位があり、患者固有のリスクと施設の実施体制を踏まえて手技のリスクが許容できる場合に検討します。

一方、典型的なUIP patternを示し、臨床的にも特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosisIPF)として診断・治療方針が固まっている患者では、通常、肺生検を追加する意義は乏しくなります。間質性肺異常(interstitial lung abnormalityILA)のように陰影が軽微で、現時点の診療方針に影響しない場合も、原則として肺生検の対象にはなりません。

高度の低酸素血症、血行動態の異常、急性増悪、凝固異常、抗血小板薬を中止できない状態などは、肺生検を避けるべき重要な要因です。FVC 50%未満、DLCO 30%未満、平均肺動脈圧45mmHg以上などの患者では、TBLCSLBのいずれについても、特に慎重な患者選択が必要です(Mor, AJRCCM 2026)。

「とりあえず生検をすれば何か分かるだろう」ではなく、生検前に、どの診断仮説を検証したいのか、どの病理所見が得られれば治療方針が変わるのかを明確にする必要があります。

 

診断確信度と治療方針への確信度は一致しない

今回の発表では、diagnostic confidencemanagement confidenceを分けて考えることの重要性が示されました。

Diagnostic confidenceは、MDDで提示された診断名に対する確信度です。一方、management confidenceは、特定の治療方針を選択することに対する確信度を意味します(Mor, AJRCCM 2026)。

両者は必ずしも一致しません。例えば、最終診断を分類不能型ILDとせざるを得ない患者でも、経時的に進行性肺線維症(progressive pulmonary fibrosisPPF)を示していれば、抗線維化薬を導入するという治療方針への確信度は高い場合があります。

反対に、病理診断を追加して診断確信度が多少上昇しても、治療方針が変わらないのであれば、肺生検によって得られる臨床的利益は限定的です。

MDDでは、最も可能性の高い診断だけでなく、鑑別診断とそれぞれの確信度を示すことが推奨されています。どの診断も50%を超えない場合には分類不能型ILDとしますが、それでも診療上意味のある仮説を残しておくことが重要です(Ryerson, AJRCCM 2017Kondoh, BMC Pulm Med 2024)。

 

肺生検前から、MDD後の方針まで考えておく

当院を含む本邦の実臨床では、MDDは肺生検後に行われることが多いのが現状です。しかし、理想的には、生検前の段階で診断や治療方針にどのような不確実性があるかを共有し、肺生検を行う目的を明確にしておくことが望まれます。

生検後には、得られた病理所見を臨床情報や画像所見と改めて統合し、診断仮説がどのように変化したか、治療方針にどのような影響を与えるかを再検討します。肺生検を単独の検査としてではなく、生検前の検討と生検後のMDDを含む一連の診断プロセスとして捉える必要があります(Mor, AJRCCM 2026)。

当院では、可能な限り、呼吸器内科指導医が生検前に、その意義や採取部位、得られた病理情報がその後の方針決定にどの程度役立つ可能性があるかを、専攻医と共有するようにしています。

患者さんには、肺生検を検討する理由、生検によって治療方針が変わる可能性、TBLBTBLCSLBの違い、気胸、出血、急性増悪、死亡を含む合併症、生検を行わないという選択肢について説明します。また、生検を行わなかった場合に、診断の不確実性を残したまま治療することの影響や、経過を見ながら後日改めて生検を検討できるかについても共有することが重要です(Mor, AJRCCM 2026)。

 

TBLC病理標本の診断手順と、MDDにおける役割・限界

2026年には、本邦のびまん性肺疾患研究班から、成人ILDに対するTBLC病理診断のフローチャートが報告されました(Zaizen, Respir Investig 2026)。

このフローチャートでは、まず、十分な肺実質と病変が検体に含まれているかという標本の適切性を評価します。検体が十分でない場合でも、肉芽腫、リンパ濾胞、急性肺傷害、PPFE様変化など、MDDに有用な所見が認められれば記載します。

次に、急性肺傷害、細胞性間質性肺炎、慢性線維性間質性肺炎、その他の疾患という基本病理パターンを評価し、UIPprobable UIPindeterminate for UIPalternative diagnosisなどの表現と確信度を用いてMDDへ返します。

TBLCでは、限られた大きさの検体から得られた所見を過大評価せず、検体の質や採取部位を踏まえて診断確信度を調整する必要があります。病理医が診断名を単独で決定するのではなく、「MDDで使用できる所見」と「その確信度」を標準化して提示することが重要です。

 

当院のMDDから振り返る

当院では、放射線科医、病理医、呼吸器内科医を中心に、隔週でILDMDDを行っています。202211月から20266月までに、重複症例を含めて142例についてMDDを開催しました。

後半では、実際のMDD症例を用いて、IPF診断ガイドラインと過敏性肺炎診断ガイドラインに基づく画像・病理パターンの判定、鑑別疾患の順位、診断確信度、治療方針の決定までを検討しました(Raghu, AJRCCM 2018Raghu, AJRCCM 2020Raghu, AJRCCM 2022)。

提示症例では、画像所見から線維性過敏性肺炎が疑われた一方、TBLCではUIP patternと急性肺傷害を示唆する所見が認められました。MDDでは、線維性過敏性肺炎をlow confidenceIPFvery low confidenceの鑑別として残し、抗原回避や治療反応、その後の画像・呼吸機能の推移を含めて再評価する方針となりました。

MDDでは、臨床、画像、病理のいずれか一つを偏重するのではなく、それぞれの所見がどの程度信頼できるかを考え、患者さんと担当医にとって診療上意味のある結論を導く必要があります。その後の臨床経過がMDD診断と矛盾する場合には、再度MDDを行い、診断仮説を修正することも重要です。

 

まとめ

線維性間質性肺疾患に対する肺生検は、「診断がついていない患者さんすべて」に行う検査ではありません。臨床的に診断または治療方針の不確実性が残り、病理情報が方針決定に寄与し得る患者に対して検討します。

肺生検を計画する際には、TBLBTBLCSLBで採取できる組織と評価できる病変の違いを理解し、期待される診断・治療上の利益と手技のリスクを比較する必要があります。

また、肺生検の価値は病理診断単独で決まるものではありません。生検前に臨床的な問いを立て、生検後に病理所見を臨床・画像情報へ戻し、MDDの中で診断確信度と治療方針への影響を統合することが重要です。

今回のレクチャーは、MDDに単に参加するだけでなく、「明日、自分がMDDの司会を担当するとしたら」という視点で、関連ガイドライン、診断確信度、病理診断の方法、治療方針まで考える機会となりました。

 

参考文献

1Mor E, Piciucchi S, Ravaglia C, et al. Clinical utility of lung biopsy in fibrotic interstitial lung disease. Am J Respir Crit Care Med. 2026;212(3):571-590. doi:10.1093/ajrccm/aamaf123.

2Ryerson CJ, Adegunsoye A, Piciucchi S, et al. Update of the international multidisciplinary classification of the interstitial pneumonias: an ERS/ATS statement. Eur Respir J. 2025;66(6):2500158. doi:10.1183/13993003.00158-2025.

3Bankier AA, MacMahon H, Colby T, et al. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2024;310(2):e232558. doi:10.1148/radiol.232558.

4Ryerson CJ, Corte TJ, Lee JS, et al. A standardized diagnostic ontology for fibrotic interstitial lung disease: an international working group perspective. Am J Respir Crit Care Med. 2017;196(10):1249-1254. doi:10.1164/rccm.201702-0400PP.

5Zaizen Y, Saito-Koyama R, Okudela K, et al. A proposed pathological diagnosis flowchart for adult interstitial lung disease with transbronchial lung cryobiopsy: position paper from the Japanese research group on diffuse lung disease. Respir Investig. 2026;64(2):101393. doi:10.1016/j.resinv.2026.101393.

6Raghu G, Remy-Jardin M, Myers JL, et al. Diagnosis of idiopathic pulmonary fibrosis: an official ATS/ERS/JRS/ALAT clinical practice guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2018;198(5):e44-e68. doi:10.1164/rccm.201807-1255ST.

7Raghu G, Remy-Jardin M, Ryerson CJ, et al. Diagnosis of hypersensitivity pneumonitis in adults: an official ATS/JRS/ALAT clinical practice guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2020;202(3):e36-e69. doi:10.1164/rccm.202005-2032ST.

8Raghu G, Remy-Jardin M, Richeldi L, et al. Idiopathic pulmonary fibrosisan updateand progressive pulmonary fibrosis in adults: an official ATS/ERS/JRS/ALAT clinical practice guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2022;205(9):e18-e47. doi:10.1164/rccm.202202-0399ST.

9Kondoh Y, Furukawa T, Hozumi H, et al. The providing multidisciplinary ILD diagnosesPROMISEstudy: study design of the national registry of Japan facilitating interactive online multidisciplinary discussion diagnosis. BMC Pulm Med. 2024;24(1):511. doi:10.1186/s12890-024-03232-1.