亀田総合病院 呼吸器内科

山本先生がデバイス操作と慣れ・ATS2026のロボット気管支鏡演題について発表

勉強会レポート

 

当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。今回は、医長の山本成則先生が、参加・発表したATS 2026で注目されていたロボット気管支鏡と、気管支鏡を含む新しいデバイスへの習熟を客観的に評価する方法について解説しました。

 

ATS 2026で注目されたロボット気管支鏡

ATS 2026では、ロボット気管支鏡に関して、異なるシステム間の放射線被曝の比較、病院への導入プロセスと初期成績、実臨床での診断率、長時間の息止めを用いた生検など、多様な演題が発表されていました(Bhadra, Am J Respir Crit Care Med 2026Novali, Am J Respir Crit Care Med 2026Rabah, Am J Respir Crit Care Med 2026Ghodrati, Am J Respir Crit Care Med 2026)。

山本先生からは、主なロボット気管支鏡として、以下の3つのシステムが紹介されました。

  • Ion Endoluminal SystemIntuitive Surgical
  • Galaxy SystemNoah Medical
  • Monarch PlatformJohnson & Johnson

 

山本先生は、ATS会場で企業主催のAssemblyにも参加しました。企業側も、さまざまな国から集まった専門家と直接意見を交わし、それぞれの国の医療や文化を知る機会を重視しているように感じたとのことです。

院内のディスカッションでは、伊藤部長から、ERSではこのような大規模な企業主催Assemblyはあまり見られなかった印象があるとの意見もありました。国際学会ならではの交流の場としても興味深い取り組みでした。

 

ロボット気管支鏡は何が違うのか

山本先生の現地での印象では、紹介されたロボット気管支鏡はいずれも全身麻酔下での施行が前提となっていました。

末梢肺病変に対する針生検との親和性が高く、通常の気管支鏡では到達が難しいBronchus sign陰性の病変にもアプローチできる可能性があります。針生検だけでなく、鉗子生検やクライオバイオプシーにも対応し、リアルタイムナビゲーションと組み合わせて使用されます。

ATS 2026の単施設報告では、ロボット気管支鏡のdiagnostic yieldはそれぞれ82.7%、80%と報告されていました。ただし、対象病変や診断率の定義、施設の運用方法によって成績は異なるため、数字を単純に比較することはできません(Novali, Am J Respir Crit Care Med 2026Rabah, Am J Respir Crit Care Med 2026)。

操作にはコントローラーを使用しますが、その操作に順応できれば、デバイス自体は比較的扱いやすいという印象だったとのことです。一方、導入費用は非常に高額であり、各国の医療制度や医療従事者の人件費によって、普及の仕方は異なるのではないかと山本先生は考察しました。

 

新しいデバイスに早く慣れる人には特徴があるのか

気管支鏡を含む医療デバイスは、今後も更新されていきます。現在使用している気管支鏡や周辺機器を、そのまま一生使い続けられるとは限りません。そのため、さまざまなデバイスに早く順応する能力も重要になる可能性があります。

そこで山本先生は、「新しい技術の習得が早い人には、どのような特徴があるのか」を検討した研究を紹介しました。

この研究は、低侵襲手術のトレーニングに参加した医師180人と医学生261人を対象とした、前向き・多施設・多国籍研究です。参加者は、物体を移動させるMoving Pearls、電線に触れないよう器具を操作するHot Wire、縫合手技であるVaginal Vault Closure、卵巣嚢腫核出術を模したOvarian Cyst Enucleationに取り組み、手術パフォーマンスと学習の進み方が評価されました(Ackermann, Int J Surg 2023)。

研究では、空間視覚能力を「Tube Figures Test」で評価しました。これは、複雑に曲がった管を別の方向から見るとどのように見えるかを判断する試験で、24問を15分以内に回答します。

手と目の協調性は、タブレットを傾けてボールを目的地まで動かすゲーム「Tiltagon」を用いて評価されました。

空間視覚能力と手と目の協調性は、複数の課題で良好な手術パフォーマンスと独立して関連していました。この傾向は、手術経験のない医学生でより明瞭でした。一方、医師では、空間視覚能力や手と目の協調性だけでなく、これまでの手術件数や、腹腔鏡外科医としての自己評価も手術パフォーマンスに関連していました(Ackermann, Int J Surg 2023)。

ただし、医師群の91.7%は産婦人科医であり、左利きの医師は1.1%にとどまっていました。また、評価されたのは骨盤内の低侵襲手術であり、この結果をそのまま気管支鏡操作に当てはめることはできません。

 

ゲームが上手な人は気管支鏡も上手なのか

気管支鏡操作とゲーム技能の関係を直接検討した研究として、複十字病院の下田先生らによる「スプラトゥーン2」を用いた研究も紹介されました。

この研究では、気管支鏡未経験者23人と、100件以上の気管支鏡経験を持つ呼吸器内科医18人が、シミュレーターを用いた気管支内腔の観察と「スプラトゥーン2」の課題に取り組みました。

未経験者では、ゲームの課題を短時間で完了できる人ほど、気管支鏡の観察時間も短いという相関がみられました。また、ゲーマー群の気管支鏡観察時間は中央値200秒で、非ゲーマー群の281秒より短い結果でした。一方、気管支鏡経験者では、ゲーム技能と気管支鏡観察時間との関連は認められませんでした(Shimoda, Sci Rep 2024)。

この研究から、ゲームを練習すれば気管支鏡が上達するとまではいえません。しかし、気管支鏡を初めて操作する段階では、ゲーム操作にも共通する手と目の協調性や空間把握能力が、操作のしやすさに関係している可能性があります。

山本先生は、初学者ではゲーム技能の違いが気管支鏡操作に現れるものの、経験を重ねれば、その差は次第に目立たなくなるのではないかとまとめました。

 

まとめ

ロボット気管支鏡のように、気管支鏡検査を取り巻くデバイスは今後も変化していきます。新しい機器を安全に使用するためには、機器の特徴を理解するとともに、コントローラーやナビゲーションなど、従来とは異なる操作方法に順応することが求められます。

空間視覚能力や手と目の協調性は、初めてデバイスを操作するときのパフォーマンスに関係する可能性があります。一方で、経験者ではそれ以外の要因の影響が大きくなり、初期の得意・不得意だけで将来の技能が決まるわけではありません。

 

新しいデバイスへの適性だけでなく、実際に経験を積み続けることの重要性を改めて考えるレクチャーとなりました。

 

執筆担当者:亀田総合病院呼吸器内科 舟木佳弘

 

参考文献

1Bhadra K. Comparison radiation exposure between two robotic bronchoscopy systems. Am J Respir Crit Care Med. 2026;212(Suppl 1):aamag162.3453. doi:10.1093/ajrccm/aamag162.3453.

2Novali M, Bezzi M. Implementation of robotic bronchoscopy in a high volume tertiary care hospital: process analysis and early outcomes. Am J Respir Crit Care Med. 2026;212(Suppl 1):aamag162.3455. doi:10.1093/ajrccm/aamag162.3455.

3Rabah H, Youness H. Diagnostic yield of robotic bronchoscopy in a single Veterans Affairs health care system. Am J Respir Crit Care Med. 2026;212(Suppl 1):aamag162.3456. doi:10.1093/ajrccm/aamag162.3456.

4Ghodrati S, Liu AY, Cortes-Puch I, et al. Stop the wind to hit the mark: prolonged breath hold in robotic-guided lung biopsy. Am J Respir Crit Care Med. 2026;212(Suppl 1):aamag162.3452. doi:10.1093/ajrccm/aamag162.3452.

5Ackermann J, Baumann J, Pape J, et al. Factors influencing surgical performance and learning progress in minimally invasive surgery—results of an interdisciplinary multicenter study. Int J Surg. 2023;109(10):2975-2986. doi:10.1097/JS9.0000000000000590.

6Shimoda M, Tanaka Y, Morimoto K, Yoshimori K, Ohta K. Video gamers demonstrate superior bronchoscopy skills among beginners. Sci Rep. 2024;14(1):2290. doi:10.1038/s41598-024-52730-z.