林先生が神奈川県立循環器呼吸器病センターでの国内留学について発表
当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。今回は、神奈川県立循環器呼吸器病センターでの国内留学を終えて当科に戻ってきた医員の林先生が、同センターで経験した診療体制や検査・治療の実際について報告しました。
神奈川県立循環器呼吸器病センターは、びまん性肺疾患、肺高血圧症、非結核性抗酸菌症などの診療において国内有数の専門施設です。今回の発表では、経気管支クライオ生検(TBLC)、間質性肺炎専門外来、右心カテーテル検査および肺高血圧診療、非結核性抗酸菌症(NTM)診療などについて触れられました。
1)TBLC
神奈川県立循環器呼吸器病センターでは、びまん性肺疾患の診断においてTBLCが積極的に活用されており、手技の流れ、安全確認、合併症対策が非常に体系化されていることが紹介されました。TBLCは、外科的肺生検と比較して低侵襲に病理組織を得ることができる一方で、出血や気胸などの合併症に注意を要する検査です。
林先生からは、検査前の肺高血圧症スクリーニング手法、生検部位の選択方法、透視画像における胸膜位置の正確な把握方法などの工夫を紹介され、明日からのTBLCに生きる内容となりました。
2)間質性肺炎専門外来:初診から診断方針決定までの流れ
間質性肺炎専門外来では、問診、生活環境、職業歴、膠原病を疑う症状、画像検査、血液検査、呼吸機能検査などを、初診時から体系的に確認していく体制が紹介されました。
間質性肺炎の診療では、画像所見だけでなく、喫煙歴、職業・環境曝露、薬剤歴、家族歴、膠原病を示唆する症状、呼吸機能、血清マーカーなど、多くの情報を統合する必要があります。初診時からこれらの情報を漏れなく収集し、診断仮説を立て、必要な追加検査や生検の適応を検討していくことが、診断精度を高めるうえで重要です。
特に印象的だったのは、患者さんへの説明資料を活用しながら、間質性肺炎という疾患の特徴、急性増悪や肺癌合併への注意、今後必要となる検査や治療方針について丁寧に共有している点です。専門外来の質は専門知識だけでなく、問診・検査・説明を標準化する仕組みに支えられていることを実感しました。
また、診断のための検査を進めるだけでなく、患者さん自身が病気を理解し、今後の診療に主体的に参加できるよう支援する姿勢も大変参考になりました。間質性肺炎は慢性に経過する疾患も多く、診断時から患者さんと医療者が同じ方向を向いて診療を進めていくことが重要であると改めて感じました。
3)右心カテーテル検査と肺高血圧診療
間質性肺炎診療では、肺高血圧症の合併を見逃さないことも重要です。発表では、心エコーなどの非侵襲的検査だけでなく、必要に応じて自ら右心カテーテル検査(RHC)を行い、肺動脈圧や肺血管抵抗を含めて病態を評価していることが紹介されました。
肺疾患を有する患者さんの肺高血圧は、単に「肺が悪いから」と判断するのではなく、肺病変の程度、肺血管抵抗、肺動脈楔入圧、心拍出量、心機能、慢性血栓塞栓症の可能性などを含めて総合的に評価する必要があります。肺病変が存在するからといって直ちに第3群肺高血圧と判断するのではなく、血行動態評価を踏まえて病態を整理する重要性を学ぶ機会となりました。
近年、間質性肺疾患に伴う肺高血圧症に対する治療選択肢も変化しつつあります。一方で、線維化病変が主体なのか、気腫性変化が主体なのか、肺血管病変の関与がどの程度あるのかによって、治療方針の考え方は大きく異なります。だからこそ、画像、呼吸機能、酸素化、運動耐容能、RHCによる血行動態を統合して判断する姿勢が重要です。
今回の発表を通じて、間質性肺炎と肺高血圧症を別々の疾患として捉えるのではなく、一体として評価し診療する視点の重要性を改めて認識しました。
4)NTM診療、喀血診療
そのほか、非結核性抗酸菌症の診断における検体採取の工夫や、喀血などに対するEWSについても紹介がありました。
特にNTM診療では、喀痰検査だけでなく、必要に応じて胃液培養なども活用しながら診断精度の向上を図っていることが紹介されました。
当科でも、びまん性肺疾患や肺高血圧症を含む専門性の高い呼吸器診療をさらに充実させるべく、今回の学びを日常診療、教育、研究に生かしていきたいと思います。
神奈川県立循環器呼吸器病センターは、当科の伊藤部長および筆者にとっても研修でお世話になった施設です。今回、林先生の国内留学を受け入れていただき、専門性の高い診療を学ぶ貴重な機会をいただきましたことを、大変ありがたく感じております。
ご指導・ご尽力いただきました神奈川県立循環器呼吸器病センターの皆様に、心より御礼申し上げます。
執筆担当者:亀田総合病院呼吸器内科 舟木佳弘
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