山本先生が気管支鏡について発表
当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。今回は、当科医長の山本先生が「気管支鏡をより深くへ」というタイトルで発表しました。
今回のテーマは、末梢肺病変に対する気管支鏡で、太い気管支鏡のまま、もっと先へ行けないか、という問いでした。
末梢病変の診断では、より細い気管支鏡を使えば先まで届きやすくなります。一方で、細いほど標本は小さくなります。到達性を取るか、検体の質を取るか。気管支鏡では昔から悩ましい問題です。スライドでもまずこの点が整理されていました。
山本先生が取り上げたのは、体位変換によって気管支鏡の到達性を改善できないかを検討した報告(Miyake, J Bronchol Interv Pulmonol 2022)です。方法は比較的シンプルで、まず仰臥位でナビゲーションに沿って可能な限り気管支鏡を挿入し、その後、目標病変が上になるように側臥位へ変換して、さらに末梢への挿入を試みる、というものです。
対象は24例で、右上葉病変がやや多く、使用機種はP290が中心でした。結果として、8/24例で到達できる気管支がさらに進み、11/24例で見える範囲が増加しました。症例によっては、体位を変えるだけで最大4分岐ぶん進めた例もあったとのことです。
さらに興味深いのは、進めた気管支の方向です。スライドでは、水平方向を0°として、-53~+53°の範囲で約1分岐進めたとまとめられていました。ここから山本先生は、側臥位そのものが重要というより、検査中に“上方向へ向かう気道”ではより末梢へアプローチしやすいのではないか、という読みを提示していました。
考察として紹介されていたのは、側臥位では上側の肺で機能的残気量が増加し、より拡大した状態になることで、気道へのアプローチがしやすくなるのではないか、という点です。新しいデバイスを追加しなくても、体位を変えるだけで一歩先へ進めるなら、それは非常に実践的です。日常診療の工夫としても魅力があります。
もちろん、限界もあります。側臥位のまま生検を行うと、出血時に不利となる可能性があります。また、透視の面ではCアームでないとやりにくい場面がありそうです。さらに、この報告では診断率そのものは検討されていません。どこまで進めたか、どこまで見えたか、という点に主眼が置かれた研究でした。
この論文の紹介にとどまらず、山本先生からは発展的な視点も示されました。側臥位という方法そのものだけでなく、検査中の体位と病変の位置関係が末梢到達性に影響している可能性があるのではないか、という考え方です。腹側病変や背側病変への応用可能性にも話が及び、今後の検討課題として興味深く感じました。
山本先生は、以前から呼吸器内視鏡に強い関心を持ち、当科の気管支鏡研究をリードしてきました。2024年にはEBUS-GSに関する論文も発表しており、検査を少しでもよくするために、どこを工夫できるかを丁寧に考えてこられた先生です。実際、この論文では病変径が“adjacent to”から“within”への変化を予測する重要な因子として示されており、小さい病変では“within”にこだわりすぎず早めに生検へ移る、という実践的な示唆も示されています(Yamamoto, J Thorac Dis 2024)。今回の発表でも、単に論文を紹介するのではなく、現場のちょっとした工夫を次の研究につなげていくという姿勢がよく表れていました。
末梢気管支鏡の世界は、細径化、ナビゲーション、EBUS、透視支援といった技術進歩が積み重なってきた分野ですが、今回の発表は、その中にまだ“体位”という基本手技の見直しによる伸びしろが残されていることを感じさせる内容でした。到達性をどう改善するかというテーマは、診断精度の向上だけでなく、デバイス開発や新しい手技設計とも相性がよく、今後さらに面白い展開が出てきそうです。実際、この流れはその後のballoon dilatation for bronchoscope delivery(BDBD)のような発想にもつながっており、気管支鏡領域の発展性を改めて感じました(Miyake, Thorax 2026)。山本先生から今後どんな研究が出てくるのか、引き続き楽しみです。
執筆担当者:亀田総合病院呼吸器内科 舟木佳弘
参考文献
1.Oki M, Saka H, Ando M, et al. Ultrathin bronchoscopy with multimodal devices for peripheral pulmonary lesions. A randomized trial. Am J Respir Crit Care Med. 2015;192:468-476.
2.Miyake K, Shiroyama T, Hirata H, et al. Lateral decubitus position enables further advancement of the bronchoscope into the lung periphery. J Bronchol Interv Pulmonol. 2022;29(4):307-310.
3.Yamamoto S, Matsui H, Fujioka H, et al. Predictors of improvement of radial-endobronchial ultrasonography findings from “adjacent to” to “within” in endobronchial ultrasonography using a guide sheath: a retrospective cohort study. J Thorac Dis. 2024;16(1):264-272.
4.Miyake K, Oki M, Suzuki H, et al. Balloon dilatation for bronchoscope delivery: first-in-human trial of a novel technique for peripheral lung field access. Thorax. 2026;81(1):33-41.