山路先生が気胸におけるクランプテストについて発表
当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目領域について抄読会形式のレクチャーを行っています。今回は、当科専攻医の山路創一郎先生が、気胸におけるクランプテストをテーマに発表しました。
今回の発表では、まず「そもそもクランプテストは必要なのか」という問いから話が始まりました。気胸に対する胸腔ドレーン管理では、肺の再膨張とエアリークの消失を確認したうえでドレーン抜去を検討しますが、クランプテスト自体を必須とする明確な推奨は現時点で定まっていません。山路先生は、BTS、ACCP、ERSのいずれもクランプテストについて明確な推奨を示していないこと、肺再膨張およびエアリーク消失後少なくとも24時間のドレーン留置が勧められているもののクランプテストは必須ではないこと(Light RW, Pleural Disease, 6th ed, 2013)、既報では68例を対象とした検討で11.8%の症例において胸腔ドレーン再挿入を回避し得たと報告されている(Chan YH, J Cardiothorac Surg 2021)一方、全体としてはエビデンスが乏しい現状を解説しました。
こうした背景を踏まえて今回取り上げられたのが、複十字病院の下田先生らによる、気胸患者における胸腔ドレーン抜去前クランプテストの有効性を検討した論文です。研究の目的は、クランプ手技の有効性を評価するとともに、クランプ中の肺再虚脱に関連する危険因子を明らかにすることでした。対象は、2016年1月から2025年4月までに複十字病院で気胸に対して入院加療を受けた440例で、主要評価項目はクランプ中の肺再虚脱の頻度、副次評価項目はそのリスク因子とされていました。
解析対象のうち355例でクランプテストが行われ、そのうち41例(11.5%)でクランプ中に肺再虚脱を認めました。成功群は314例(88.5%)でした。再虚脱例の中には追加介入を要した症例もあり、クランプテストが一定割合の患者で抜去前の再虚脱検出に役立っていることが示されました。発表では、この11.5%という数字について、「10人に1人でクランプテスト中に再虚脱を確認している」と捉えると、臨床的な意味は小さくない、という点が印象的に示されていました。
さらに、クランプ中の再虚脱に関連する因子として、クランプ前の不完全な肺拡張、クランプ前の呼吸性変動、喫煙歴の3項目が挙げられました。これら3因子を用いたスコアリングでは、3項目すべてを有する場合には特異度92.6%でクランプテストが望ましいと考えられ、逆にいずれの因子も持たない場合には再虚脱率2.6%と低く、クランプテストの必要性は高くない可能性が示されました。
一方で、この研究ではクランプ実施の有無やタイミングが担当医の判断に委ねられていたため、選択バイアスの可能性も議論されました。その点を補うために、クランプを行わずに抜去され、その後1週間以内に再発を認めなかった症例を成功群に含めた統合解析が行われ、同様の傾向が確認されていましたが、この解釈の難しさについても触れていました。
また、クランプ時間についても重要な論点として取り上げられました。本研究ではクランプ期間の中央値は再虚脱群、成功群ともに1日で、長くクランプすればよいという単純な話ではなさそうでした。山路先生はこの点に関連して、6時間クランプで安全性を検討した既報(Funk GA, Proc. 2009)や、症状が強い患者や間欠的なエアリークが疑われる患者に対して4時間のクランプ後に抜去を提案しているレビュー(DeMaio A, Clin Chest Med. 2021)にも触れつつ、クランプ時間の標準化はまだ十分ではない点を強調していました。
山路先生は、これまでクランプテストを全例に行うものと思っていたものの、今回の論文を通して、必ずしも一律に行うのではなく、再虚脱リスクを踏まえて選択的に考える視点も重要ではないか、という印象を持たれたようでした。その上で、クランプテスト自体はやはり臨床的に重要であり、少なくとも一定の症例では積極的に行う意義があるのではないか、という感想も示していました。
クランプ時間についてはなお議論の余地があり、当院でもクランプ時間ごとの成績を整理してみたい、という今後の課題も挙げていました。
クランプテストは日常診療の中で比較的なじみのある手技ですが、その適応や観察時間にはまだ検討の余地があります。今回の勉強会は、慣習的に行っている手技をあらためて見直し、どのような症例で本当に有用なのかを考えるよい機会となりました。
執筆担当者:亀田総合病院 呼吸器内科 舟木 佳弘
参考文献
1. Shimoda M, Tanaka Y, Morimoto K, Yanagawa R, Yoshimori K, Kudoh S. Efficacy of chest tube clamping prior to removal in patients with pneumothorax. Respir Investig. 2025;63(6):1262-1267. doi:10.1016/j.resinv.2025.10.004.
2. Light RW. Pleural Diseases. 6th ed. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins; 2013.
3. Chan YH, Yu ELM, Kwok HC, Yeung YC, Yu WC. Clamping of chest drain before removal in spontaneous pneumothorax. J Cardiothorac Surg. 2021;16(1):24.
4. Funk GA, Petrey LB, Foreman ML. Clamping thoracostomy tubes: a heretical notion? Proc (Bayl Univ Med Cent). 2009;22(3):215-217.
5. DeMaio A, Semaan R. Management of pneumothorax. Clin Chest Med. 2021;42(4):729-738.