泉大樹先生をお招きし、「南房総肺癌Academy」を開催いたしました
2026年1月30日(金)、国立がん研究センター東病院 呼吸器内科の泉 大樹先生をお招きし、「南房総肺癌Academy」をハイブリッド形式で開催いたしました。当日は当科部長の大槻 歩が座長を務め、会場・オンラインともに多くの先生方にご参加いただきました。
前半は当科専攻医の川上 博紀医師より周術期薬物療法の治療選択について解説、後半は泉 大樹先生より「局所進行~転移再発NSCLC治療における最新治療」と題したご講演をいただきました。
一般演題:周術期薬物療法の治療選択(川上医師)
周術期領域では、免疫療法を「術前のみ(neoadjuvant)」で組み込むのか、「術前+術後(perioperative)」として継続するのかが、臨床的な意思決定の中心になりつつあります。代表的な第III相試験として、CheckMate 816、KEYNOTE-671、AEGEANの位置づけと、試験デザイン(術前のみ/術前+術後)の違いが整理されました。
また、レジメン選択は「病期」「組織型」「PD-L1」といった腫瘍側の要素に加え、併存疾患、患者背景、患者希望、術後治療の継続可能性まで含めて総合的に判断する必要がある点が共有されました。国内の最新整理として、日本肺癌学会の肺癌診療ガイドライン2025年版の記載も参照しながら、当科での実績を交えて現場での考え方を確認しました。
特別講演:局所進行~転移再発NSCLC治療における最新治療(泉先生)
泉先生のご講演では、特にEGFR変異陽性肺癌において、一次治療の選択が「オシメルチニブ単剤」から、併用を含む“治療強度の最適化”へ広がっている流れが、最新の全生存期間(OS)データも踏まえて解説されました。
・FLAURA2では、オシメルチニブ+プラチナ+ペメトレキセド併用により、OSが約1年延長する結果が示されました(47.5か月 vs 37.6か月)。
・MARIPOSAでも、アミバンタマブ+ラゼルチニブによりOS改善が報告され、3年OS率の差(60% vs 51%)など、長期アウトカムの観点からも重要なアップデートとして紹介されました。
一方で、FLAURA2とMARIPOSAは直接比較試験ではないため、優劣を単純に結論づけるのではなく、毒性プロファイル(皮疹、Infusion reaction、血栓症、骨髄抑制など)と患者背景を踏まえた適用の見極め”が臨床では重要になることを解説されました。
ここで強調されたのは、一次治療の選択だけで完結させず、 LC-SCRUM-TRY を利用して耐性機序を把握し、耐性後まで見据えて「キードラッグを使い切る」治療設計を組む、という点です。具体的には、
・第三世代EGFR-TKI
・プラチナ+ペメトレキセド
・アミバンタマブ(併用を含む)
を、耐性機序(MET増幅やEGFR on-target二次変異など)や臨床経過に応じて組み立て、治療の目標(長期奏効・生存)を最大化する、という考え方が共有されました。オシメルチニブ耐性後の開発として、MARIPOSA-2やCHRYSALIS-2などのデータにも触れられ、「次の一手」を見据えた検査・治療戦略の重要性が改めて示されました。
また、国内のゲノムスクリーニング体制としてSCRUM-JapanやLC-SCRUM-TRYの取り組みにも言及があり、日常診療のなかで「必要な検査を、必要なタイミングで」行い、治療シークエンスに繋げる視点の重要性を再確認しました。
おわりに
ご多忙のなか鴨川までお越しくださった泉 大樹先生に、改めて深く御礼申し上げます。
また、会場およびオンラインでご参加いただいた皆さまにも心より感謝申し上げます。本講演会が、日々の診療に少しでもお役立ていただければ幸いです。
執筆担当者:亀田総合病院 呼吸器内科 舟木 佳弘
参考文献
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7.日本肺癌学会.肺癌診療ガイドライン2025年版(Web公開).(参照 2026-02-05)