膝蓋腱炎

【膝蓋腱炎(ジャンパー膝)とは】

バレーボール、バスケットボールなどのスポーツでジャンプ・ダッシュ・ターンをすることが多い方に良くみられるオーバーユース障害の一つで、膝蓋骨(膝のお皿)の下あたりに痛みが出るのが特徴です。
膝蓋腱は、膝蓋骨と脛骨(すねの骨)をつないでいる腱で、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)と連動して膝の屈曲伸展(曲げ伸ばし)に大きく関係しています。このため、スポーツなどで膝への激しい負荷が過度に繰り返されると、腱に炎症や微細な損傷が起こって発症します。症状が進行すると、スポーツ活動や日常生活にも支障をきたしたり、慢性化して長期間痛みに悩まされることもあります。

【重症度分類】

膝蓋腱炎は症状の度合いによって以下のように分類されます。

Roelsらによる重症度分類
stage 1 スポーツ活動後の痛み
stage 2 スポーツ開始時と終了後に痛みがあるが、スポーツ活動に支障なし
stage 3 スポーツ中にも痛みがあり、スポーツ活動に支障あり
stage 4 腱の断裂

【診断】

触診にて患部の圧痛点(押して痛い場所)が膝蓋腱や膝蓋腱付着部にある場合、膝蓋腱炎を疑いますが、似たような症状で別の疾患もあるため鑑別診断が必要です。特に身長が大きく伸びる小?中学生は、オスグッド病やラルセン病と呼ばれる障害の可能性が高まります。

膝蓋骨や膝蓋腱周辺に痛みを出す主な疾患
・膝蓋骨骨折 ・有痛性分裂膝蓋骨 ・膝蓋大腿関節障害 ・膝蓋下脂肪体炎 ・タナ障害
・大腿四頭筋腱炎 ・鵞足炎 ※・オスグッド病 ※・ラルセン病
※:成長期の小?中学生に多い疾患

骨折や骨の病気が隠れていないかを確認するためにレントゲン検査をしたり、炎症や損傷部位を精査するために超音波検査(エコー検査)やMRI検査を用いて上記の疾患と鑑別診断します。
超音波検査は人体に侵襲なく、筋腱や靱帯など浅層の軟部組織の描出や炎症評価が可能であるため、当科では積極的に診断に取り入れております。

【治療】

多くの症例は運動療法などの保存療法で改善します。

膝蓋腱への負担を軽減するために、ジャンプやダッシュなどの運動制限、膝の屈曲伸展に関わる大腿四頭筋やハムストリングス(太もも後面の筋肉)のストレッチ、必要に応じて消炎鎮痛作用のある飲み薬や塗り薬を処方することもあります。
また、股関節周囲の柔軟性や筋力強化、大腿四頭筋の遠心性収縮(筋肉が伸ばされながら力を入れる)トレーニングなどの運動療法もリハビリで行います。

痛みが強い場合や炎症が長期化した難治性膝蓋腱炎の場合は、ヒアルロン酸注射やステロイド注射をおこなうこともあります。ステロイド注射は炎症を抑える効果を発揮しますが、腱を脆弱化させたり腱断裂のリスクがあがるとの報告があるため、最近はあまり推奨されていません。
また、当科では近年スポーツ障害への臨床応用が進んでいるPRP注射(多血小板血漿療法)も取り入れています。難治性の膝蓋腱炎に有効であったとの報告もあり、効果が期待されている新しい治療法です。

これらの保存療法が奏功しない難治性膝蓋腱炎や、stage4の腱断裂の場合は手術療法をおこなう場合があります。その場合、炎症が長期化して変性した(質が悪くなった)腱を部分的に切除したり、腱断裂部の修復術が検討されます。

【出典】

1) Rels J, et al, Patellar tendinitis (jumper's knee). Am J Sports Med. 1978 Nov-Dec;6(6):362-8.
2) Lian OB, et al, Prevalence of jumper's knee among elite athletes from different sports: a cross-sectional study.Am J Sports Med. 2005 Apr; 33(4):561-7.
3) Filardo G et al, Use of platelet-rich plasma for the treatment of refractory jumper's knee, International Orthopaedics (SICOT), 2010;34:909-915
4) Vetrano M et al, Platelet-Rich Plasma Versus Focused Shock Waves in the Treatment of Jumper's Knee in Athletes, Am J Sports Med, 2013;Vol41, No4:795-803
5) Dean BJ, et al, The risks and benefits of glucocorticoid treatment for tendinopathy: a systematic review of the effects of local glucocorticoid on tendon. Semin Arthritis Rheum. 2014 Feb;43(4):570-6.
6) Marsha Rutland, et al, Evidence-supported rehabilitation of patellar tendinopathy.N Am J Sports Phys Ther. 2010 Sep; 5(3): 166-178.