スポーツ医学とは22- アスリートを怪我から守れ!メディカルチェックについて

当スポーツ医学科では、怪我をして病院を受診される患者さまの診察以外に、実際に選手のもとを訪れてスポーツ障害が初期症状のうちに悪化予防に努める「メディカルチェック事業」も行っています。

今回はこのメディカルチェックメンバーのリーダーである、スポーツ医科学センターの志藤友美理学療法士に同活動についてインタビューしました。(以下O:大内、S:志藤)

O:そもそもなんでメディカルチェックを行うようになったのですか?

S:病院を受診される皆さまは当然ながらすでにスポーツによる怪我をしていて、また症状も痛みが強かったり、障害程度が進行してしまった方が多いです。
では、実際にスポーツ障害は全てこのような強い症状を伴うものかというとそうではありません。初期症状は多くの場合、「わずかな痛み」「腫れ」「関節の動きの悪さ」であったりします。しかし、こういった徴候が出ていることに選手自身は気づいていない場合がほとんどです。実はこの段階でスポーツ障害が起きていることに気づいていれば、それだけ早く、簡単な治療で症状を軽減させることができるのです。
そこで、初期症状のうちから治療を開始するためには、「病院で患者さまを"待って"いてはだめだ!」と考え、院外に出てメディカルチェックを行おうということになりました。

O:実際にメディカルチェックではどんなことを行っているか教えてください。

S:メディカルチェックのメンバーは、スポーツ医学科の医師とスポーツ医科学センターの理学療法士、作業療法士、アスレチックトレーナーで構成されています。全員がスポーツ障害について精通し、診断方法、治療のための運動療法やテーピングの知識を身につけています。そしてこのメンバーで学校やチームを訪問し、職種に関係なく各自がさまざまな役割を担います。
まず、何より大切なのが「問診票や選手の痛みの訴えを聞くこと」です。これにより診断が半分以上ついてしまうと言っても過言ではありません。
次いで、圧痛所見や関節の腫脹、関節可動域などの診察によりスポーツに多い障害をピンポイントで診断します。もちろん時にはレントゲンなどの画像が必要なこともあり、こういった時には近くの医療機関の受診をお勧めしています。
しかし、ここで大切になるのが当メディカルチェックの特徴の一つである「携帯型超音波の利用」です。ほとんどのスポーツ障害は骨折など骨の問題ではなく、靱帯や筋、腱などのいわゆる「軟部組織」の障害です。そしてこういった軟部組織の診断に極めて有用なのが超音波検査です。身体への負担がなく、また動的に観察できるため、スポーツ整形外科の分野では超音波が必須のツールになりつつあります。
当院のメディカルチェックでは、最新型の携帯型超音波装置を持参し、参加している医師が中心となり、診断の補助に利用しています。
最後に、各選手の体の「特性」を把握し、それぞれの選手にあった個別の運動メニューを考えています。なぜこの障害が起きたのか?どこの関節が固いからか?どこの筋力が弱いからか?こういったことを短時間のうちに分析し、選手一人ひとりに対してお勧めの運動メニューも提示しています。

O:ありがとうございます。メディカルチェック事業について読者の皆さんによく理解していただけたと思います。
これを読まれている方で、「メディカルチェックを学校、チームで実施してほしい」という方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。

スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法