スポーツ医学とは17- アスリートに多い、"繰り返す肩の脱臼"について

スポーツにおいて最も多い外傷の一つに、肩甲上腕関節の脱臼があげられます。これはいわゆる「肩がはずれる」という症状を呈するもので、ほとんどの場合は前方に脱臼します。原因として腕をあげたまま後ろに持っていかれたり、また腕を下ろしたまま後ろに引っ張られたりする動作があげられます。

ほとんどの前方脱臼では関節窩(かんせつか:関節の受け皿)の周囲を取り囲んでいる、関節唇という軟骨が傷つきます。これは、上腕骨頭(関節のボールに当たる部分)が関節窩からはずれる際にこすれてしまうために発生します。上腕骨頭が強く関節窩をこすりながら脱臼すると、関節窩を骨折してしまう場合があり、このことを「骨性バンカート病変(Bony Bankart lesion)」と呼びます。

さらにはこの上腕骨頭が関節窩の角で、ガリッとこすれることで上腕骨頭に陥没ができることも多く、このことを「ヒルザックス病変(Hill-Sachslesion)」と呼びます。
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我々スポーツ医学科では、このような脱臼を起こした方に対し、年齢、活動性、スポーツ種目などを考慮した様々な治療法をその方に応じて選択します。

例えば、成人になって初めて脱臼した男性などでは、なるべく保存的にまず固定(これも関節唇の損傷の仕方により三角巾固定、前へならえの姿勢での外旋位固定など様々です)し、次いでリハビリにて周囲のインナーマッスルを強化することで予防します。

また、繰り返し脱臼を起こしているようなスポーツ選手に対しては、可能な限り肩関節周辺の筋組織を破壊しないようにします。そして、可能な限り早期に復帰できるように関節鏡での手術をおすすめしています。約1?の傷が4つ程度で済むので、従来の大きな傷での手術と比較すると圧倒的に筋組織へのダメージが少なく、スポーツ復帰がスムーズにできます。

これまで当院では数多くのスポーツ競技の選手が肩の安定性を増すことでスポーツ復帰、さらにはスポーツのレベル向上を達成しています。

お一人お一人にとって最適な治療法を行わせていただきたいと思いますので、肩に症状をお持ちの方は是非一度当院スポーツ医学科にご相談ください。

スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法