多血小板血漿について

【多血小板血漿(Platelet-rich plasma: PRP)とは?】

血液から得られる「血小板を多量に含んだ血漿」です。血小板が持っている「組織を治癒させる能力」を利用した治療になります。

血小板というと、血液を凝固させる働きが注目されます。しかし、それだけでなく組織を治癒させる指令を出す働きももっています。血小板からは成長因子と呼ばれる物質が放出され、それらが組織治癒を促進するのです。1) 例えば切り傷ができたときに、まず血液が凝固して、それから傷が治癒するので、血小板が両方の働きを持っているのは納得できますよね。

これまでは、形成外科領域や歯科口腔外科において臨床応用されてきましたが、近年になってスポーツ医学の領域においても欧米を中心に臨床応用が進んできてます。2) さまざまなスポーツ障害からの早期復帰がこれによって可能になると期待されています。

またPRPではご自身の血液を使うため、アレルギーや感染症(B型肝炎・C型肝炎・HIVなど)は最小限に抑えられ安全性が高いといわれております。3)

【スポーツ医学分野でのPRP治療】

スポーツ医学分野では、腱や軟骨の炎症や変性が主な治療の対象です。これらの組織は血流に乏しく、治癒するのが遅いと言われております。
2014年5月現在、下記の疾患において、無作為ランダム化試験にて効果が確認されております。

1.テニス肘(外側上顆炎):ステロイド注射が従来行われてきましたが、PRPの投与はステロイド注射と比較して、疼痛の緩和や機能の改善につながると言われております。4)

2.ジャンパー膝(膝蓋腱炎):難治性のジャンパー膝に対してリハビリに併用して使用された場合、リハビリのみによる治療や、体外衝撃波による治療(ESWT)と比較して、疼痛の緩和や機能の改善が得られやすいと言われております。5)6)

3.変形性膝関節症:PRPが変性した軟骨を修復する効果はありません。しかしながら、初期の変形性膝関節症の方やお若い方において、ヒアルロン酸注射と比較して、疼痛緩和や機能の改善といった効果があると言われております。1)7)

その他にもアキレス腱炎や筋挫傷や肩腱板炎においてもPRPの応用がなされております。(ただしその効果は定まってはおりません。)

また手術療法との組み合わせでPRPが使用されることがあります。肩腱板修復、アキレス腱縫合、SLAP修復、半月板縫合などの手術で、PRPによる修復部における治癒促進効果が試されております。3)

【治療の流れ】

どのような疾患でもまずはリハビリや内服治療などによる治療が優先されます。それでも効果をみない場合は医師の判断と患者様の希望によってPRPが使用されます。

PRPも調整法により様々な種類がありますが、当院で使用するのはACP(Autologous Conditioned Plasma) Double Syringe System, Arthrex社となっております。

具体的な手順は以下の通りです。

1.まず健康診断での採血のように末梢血を採取します。

2.それを遠心分離機にかけ血漿を抽出します。

3.最後にその血漿を患部に注入します。その際に正確を期する目的で超音波検査器を使用しながら患部を確認し、PRPの注入を行ないます。

採血時と患部への注入時には、強くはないですが疼痛を伴います。
またPRP注入後2週間ほどは炎症により疼痛が持続する場合がありますが、組織治癒のために炎症は必要な過程ですので、心配はありません。

【出典】

1) Anz AW et al, Application of Biologics in the Treatment of the Rotator Cuff, Meniscus, Cartilage, and Osteoarthtitis, J Am Acad Orthop Surg, 2014;22:68-69

2) 吉岡友和、金森章浩、スポーツ障害からの早期復帰のための新しい治療法 多血小板血漿の可能性 臨床スポーツ医学 2011年10月 Vol.28, No. 10 :1189-1193

3) Lopez-Vidriero E et al, The Use of Platelet-Rich Plasma in Arthroscopy and Sports Medicine: Optimizing the Healing Environment, Arthroscopy, 2010;Vol26, No2:269-278

4) Gosens T et al, Ongoing Positive Effect of Platelet-Rich Plasma Versus Corticosteroid Injection in Lateral Epicondyulitis: A Double-Blind Randomized Controlled Trial With 2-year Follo-up, Am J Sports Med, 2011;Vol39, No6:1200-1208

5) Filardo G et al, Use of platelet-rich plasma for the treatment of refractory jumper's knee, International Orthopaedics (SICOT), 2010;34:909-915

6) Vetrano M et al, Platelet-Rich Plasma Versus Focused Shock Waves in the Treatment of Jumper's Knee in Athletes, Am J Sports Med, 2013;Vol41, No4:795-803

7) Cerza F etal, Comparison Between Hyaluronic Acid and Platelet-Rich Plasma, Intra-articular infiltration in the Treatment of Gonathrosis, Am J Sports Med, 2012;Vol40, No12: 2822-2827