ワルファリン内服中またはDOAC内服中の致死的な出血への対応

American Society of Hematologyから新しいガイドラインなどの刊行物が出始めています。
下記のサイトをご覧ください。オンラインで閲覧できるものもあります。

http://www.hematology.org/VTE/


今回teaching slide setsのうちのanticoagulation therapyをみてください。いろいろとまとめられていすが、ワルファリン内服中またはDOAC内服中の致死的な出血への対応を学びます。下記がまとめです。今回はワルファリンだけにします。

DVT/PEの既往に対して予防的にワルファリン内服中の50歳代女性が転倒して頭部打撲し急性くも膜下出血になりました。INRは2.4で治療域です。
適切は治療を下記から選択せよ。

  1. ビタミンK単独投与
  2. プロトロンビン複合体製剤投与(PCC)
  3. 新鮮凍結血漿投与(FFP)
  4. ビタミンKとPCC
  5. ビタミンKとFFP

正しい選択肢は『4』です。解説は下記の通りです。

  • ワルファリン治療域で治療中の頭蓋内出血という、そのまま悪化すると致死的な出血であること。
  • プロトロンビン複合体製剤(PCC)は、新鮮凍結血漿(FFP)よりも迅速に投与可能で効果も早く出る、ボリュームが少量、輸血よりも感染リスクなどが少ないなどの理由で推奨とされています。日本でも欧米のガイドラインで推奨されているPCCであるケイセントラ2017年に発売になり、一般的に使用可能になりました。
  • ケイセントラが発売されるまでは日本での答えは『5』が正解でした。しかし、ケイセントラが採用されていない施設では今でも『5』が治療となります。

私からのもう一言。

  • プロトロンビン複合体製剤(PCC)は、ビタミンk依存性因子である、II,VII,IX,Xを含む血液製剤です。元来第IX因子の補充に使用されていた製剤で、血友病Aで、第VIII因子に対するインヒビターを作ってしまった患者さんに対して、出血時のバイパス製剤として開発されたものです。これを使用すると多量の第IX因子の働きで凝固カスケードが進み、第VIII因子が無くても血が固まるという仕組みです。
  • 海外から輸入された製剤です。上記凝固因子の濃縮性剤で、様々なウイルス不活化などが施され安全とされています。
  • PCCにはケイセントラの他、FEIBAとPPSB-HT静注用「ニチヤク」の二つがあります。皆さんが使用方法を熟知する必要があるのではケイセントラだけです。
  • ケイセントラの添付文章に加え、日本脳卒中学会ガイドライン2017追補、製薬企業による血友病の情報サイトのインヒビターに関するサイトもご覧ください(下記)。

大山優

参考

http://www.jsts.gr.jp/img/guideline2015_tuiho2017.pdf

https://www.hemophilia-st.jp/about/inhibitor/

https://www.kcentra.jp/profile/mechanism/

このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践