第3回 米国の血液・腫瘍内科の研修 その2

看護師には病棟で働く通常の看護師の他に、外来で化学療法を行う化学療法専門看護師や、病棟や外来で医師と共に働くナースプラクティショナーなど様々あります。我々フェローはそれら様々な種類の看護師と過ごす時間も多いです。フェローは患者に生ずる入院や外来での問題に、多忙な指導医の代わりに対応する機会があります。たとえば化学療法施行中の急変や、患者の病状の変化のため追加処方や検査が必要で、医師の判断を要するもの、外来・在宅患者の状態が変化したとき、指導医が出張などで不在の時等です。そこで真面目に勤勉・親切な態度で頑張ると、次第に看護師達の信頼を得ることも出来ます。また外来の受付や医療事務、患者を診察室へ案内しバイタルサインをとるだけのスタッフなど、その他の沢山いるスタッフも医師の人柄をよく見ていますので、頑張り屋で優秀で親切な医師はすぐに仲良くなれます。その後私は徐々にとけ込み、まるで日本で診療しているかのごとく、いやそれ以上に病院での人間関係は良好になったと思います。

私がフェローを行ったシカゴのノースウェスタン大学病院では、土日の週末も平日と同様に、フェローと指導医が交代で入院患者さん全員を、レジデントと共に回診します。終了後に申し送りをして帰宅しますが、その後は血液・腫瘍内科の外来患者全員と病院からのファーストコールを受ける電話当番をします(アメリカでは一度患者として受診すると患者には医師へ24時間直接電話が可能なホットラインの番号をもらいます。それにて質問や具合が悪くなった場合の対応が可能になります)。全ての指導医とフェローの患者さんが、具合が悪くなったり、何らかの問題が生じて医師に連絡しなければならないときの最初のコール(電話連絡)を週末当番のフェローが受けます。内容は様々ですが、例は下記です。

  1. 患者さんやご家族から
    • 化学療法中に発熱した
    • 疼痛や嘔気など具合が悪くなった
    • うっかりして経口薬が切れた
  2. 病院の他科の指導医、フェローや研修医からのコンサルテーション
  3. 他院の救急の医師から、当科の患者さんが受診したが、今後どのように対応すべきか?
  4. 在宅医療を訪問中の看護師から患者の状態に関する報告

上記を24時間体制で受けます。時々深夜に他の科から重症患者の血小板数減少などで呼ばれる時があります。その場合、TTP(血栓性血小板減少症)などを緊急に鑑別する必要があり、深夜に病院へ出向いて患者を診察し、血液スメアを観察してコンサルトに答えます。最終判断をするときに、自分のバックアップについてくれている血液・腫瘍内科の当番指導医に電話して相談します。私の一言で患者の治療方針が変わるため、とても緊張しますし、同時にやり甲斐も感じました。また、夜中に要請に応じて出勤し、好意的に適切に対応すると、その科の医師からとても感謝されました。

このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践