卒業生便り(vol.2 三河 先生)

山梨県立中央病院 総合診療科・感染症科で活躍されている三河貴裕先生よりお便りをいただきました。

三河先生は腫瘍内科後期研修医→総合診療科→感染症科、その後主治医権のある医師として働き、腫瘍内科のその後の発展の基礎を築きました。また三河先生は将来マルチタレントをもつハイレベル総合内科医・感染症科医・地域医療医を目指して研鑽に励みました。腫瘍内科にいた頃から地域医療に携わり、初代地域連携室長に抜擢され、その部門の組織の発展に貢献しました。またACLSのインストラクターなどいろいろと役職もこなし、亀田総合病院に多大に貢献した一人です。


みなさま、三河貴裕と申します。亀田総合病院腫瘍内科後期研修医の一期生です。私は現在、山梨県立中央病院 総合診療科・感染症科医として働いております。

正直に申しますと当初私は、感染症専門研修を受けるための「内科的基礎体力作り」のために総合診療科の後期研修医になりたかったのですが、応募者が多く入れませんでした。そのとき、たまたま大山先生が亀田で腫瘍内科後期研修を開始したときで、後期研修医を募集していました。「興味のない分野だからこそ、声をかけていただけたのはチャンスだ」と思い、はじめることにしました。また腫瘍内科での後期研修修了後も、亀田に残り、もともとの目標であった感染症科フェローも修了しました。色々と幅広く学んだ私ですが、結果的に大山先生から多くのことを教わり、現在の仕事が出来ていると実感しています。

私の現在の病院での役割は、主に一般内科、診断困難事例のコンサルト、感染症診療、特殊感染症診療です。ザッと下記の様な症例です。

普通の高血圧患者さん、うつ病、高校生の起立性調節障害、急性上気道炎、肺炎、検診異常、体重減少などcommonな病態の診断、治療から、特殊なものでは結核、HIV、デング熱、マラリアといった特殊感染症の診療、TAFRO症候群(キャッスルマン病の亜型とされている)の診断と治療、後天性血友病の診断、DVT/PEの治療など幅広く見させていただいております。悪性腫瘍に関連するところでは、後腹膜平滑筋リンパ腫患者さんの治療、adenoidcystic carcinoma多発転移症例の緩和と在宅への移行、比較的珍しい血管内リンパ腫(1年で4例)の診断、悪性腫瘍による脊髄圧迫事例の対応、化学療法後の発熱、ポート感染症など、悪性腫瘍の自然経過を体得したものでないと困難なものもあります。

これから一般内科診療を行う医師は、死因の第1位ががんであるという実情を考えると、がんという疾患の経過、性質、がん患者が抱える身体的心理的社会的問題、化学療法や分子標的薬、放射線療法を熟知しているとなお一層患者さんの役に立てることが多いと思います。腫瘍内科で研修を行ったからこそ「見えること:現在の病態把握や今後の推移」も大変多いのです。 腫瘍の診療は各臓器専門家が担うことが多いのが現状です。しかし亀田総合病院の腫瘍内科では、頭からつま先まで、ありとあらゆる腫瘍を扱います。同時に凝固異常といったbenign hematologyも学ぶことができます。また当然ですが、悪性腫瘍を持つ患者さんの感染症、電解質異常、病的骨折、神経圧迫、疼痛といった体の問題、告知、家族関係、在宅医療、バッドニュースの扱い方、残された家族のことを考えた看取り、地域連携など社会的対応も学べます。腫瘍内科は、「がんを持つ患者さんの総合内科医」なのです。

 
亀田の腫瘍内科で学んだ私の現在の診療範囲は、専門である感染症のみならず、がんの予防、早期発見、診断、がんの内科的治療選択、onocologic emergency、がん疼痛管理、血栓症や凝固異常、血液腫瘍の診断と初期対応、地域連携、社会的問題への対処も含めた極めて幅の広いものとなりました。これからも大山先生のもとで学んだことを忘れず、研鑽に励んでいこうと思います。

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山梨県立中央病院 総合診療科・感染症科
三河 貴裕

このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践