The Alfred ECMO Cannulation Course 2018

1.ECMOとは

post26.jpg■ECMOとは
ECMO (extra-corporeal membrane oxygenation)とは人工肺とポンプを用いて心臓や肺の代替を行うものである。カニューラから脱血し、肺の代わりに流入血液の酸素化を行い、心臓の代わりに静脈から動脈へ血液を運び、再びカニューラから送血するのが主な機能だ。広義にはECLS (extra corporeal life suppport )に含まれ、腎不全患者が行う透析や、移植前の心不全患者が用いるVAD (ventricular assist device)のように、体外の機械によって生命を支える機械の一つである。

■ECMOの種類
どの結果から脱血し、どの血管に戻すかによって名前が決まっている。
VV ECMO (IVCやSVCなどの"V"ein脱血してRA付近の"V"einへ送血)
VA ECMO (RA付近の"V"einから脱血してFemoral "A"rteryへ送血)
V-PA ("V"eno-"P"ulmonary "A"rtery ECMO)
hybrid mode (IVCとSVCなどのhybrid "V"einから脱血)

■代表的なECMOの仕組み 1:VV ECMO

  • 脱血:両足の大腿静脈や右内頸静脈のいずれかから
    ・single-stage cannulae: カニューラの先端に穴があるのみ
    ・multi-stage cannulae: カニューラの先端だけでなく側孔もあいているのでより多くの脱血が可能
  • 送血:右房や脱血対側の大腿静脈
    ・基本的にはsingle-stageしかないが、avalon®は一本のカニューラで送血も脱血もできる
  • 簡単な覚え方は"cava to atrium"
  • VA ECMOと違って、自身の心臓で拍出することが必要。だから、最終的な血液の酸素は"脱血されてECMOを経由して右房にきた血液"と"脱血されずに右房にきた血液"の比率で決まる。敗血症などで心臓の拍出量が上がっていると、脱血されずに右房に戻る血液量も多くなり酸素障害が起こりやすくなる。
  • また送血管と脱血管が8-10cm以上離れていないと、体外で酸素化した血液を再度脱血してしまう"Recirculation"が起こる。
  • 主な適応はARDSや肺移植後のグラフト不全や肺移植候補患者の移植までの待機

■代表的なECMOの仕組み 2:VA ECMO

  • Central VA ECMO:右房から脱血して大動脈弓や鎖骨下動脈に送血する
  • Peripheral VA ECMO:
    脱血:大腿静脈
    送血:大腿動脈か鎖骨下動脈
  • 簡単な覚え方は"vein to artery"
  • VV ECMOと違って拍出はポンプが行う。よって、血圧の波形は平坦になる。太い送血カニューレを大腿動脈にいれて、大動脈弓まで逆流させるので、大腿が虚血しやすい:送血管と対側のsuperficial femoral arteryに送血する"backflow cannulae"が必要。

2.ECMOの設定

同じVV-ECMO/VA-ECMOでも送血と脱血の場所によってそれぞれ種類が分けられる。それぞれにメリット・デメリットがある。

■VV ECMOの設定4つ

  • fem-fem
    ・挿入も回路交換もしやすい
    ・recirculation
    ・2-6L/min 程度のflowが限界
    ・早期離床できない
    ・感染リスクが高い可能性あり

  • fem-jug
    ・2-7L/minのflowが期待できる
    ・recirculation
    ・カニューラが2箇所で全く異なる場所にあるので、出血や感染などの見逃しに気をつける必要あり

  • Hi-flow (biventrical drainage from jugular and fem)
    ・4-8L/minのflowが期待できる
    ・酸素化障害を完全にVV ECMOで改善できるので抜管ができる。
    ・回路は複雑になる
    ・recirculation
    ・挿入中に空気塞栓を起こすリスクがある

  • Bi-lumen cannula (avalon®)
    ・1か所のみの穿刺
    ・Recirculationのリスクは少ない
    ・3-5L/minのflowで少ない
    ・26-31 Frと太く、部位の確認に透視や経食道エコーが必要で手技が難しい
    ・部位を毎日同じ位置に固定するのが難しい

■VA ECMOの設定2つ

  • peripheral VA ECMO (fem-fem)
    ・挿入が簡単
    ・centralよりもカニュレーションが容易
    ・心拍出量が特に少ない時は有効にサポートができる
    ・differential hypoxiaが起こる
    ・back-flow cannulaをちゃんと浅大腿動脈に挿入しないとlimb ischemiaが起こる

  • central VA ECMO
    ・開胸していればカニュレーションは容易
    ・8-12L/min のflowを期待できる
    ・differential hypoxiaは起こらない
    ・患者の鎮静が必要
    ・出血や感染のリスクが非常に高い

3.ECMOのトラブルシューティング

■ECMO管理中出血傾向を見た時に考えること

  1. CANNULATION:
    centralである時点で挿入部位の傷が大きく出血しやすい。また経皮的に挿入しても手技が悪いと出血しやすい。
  2. PATIENT ILLNESS:
    敗血症など出血しやすい状況
  3. CIRCUIT DRIVEN FIBRINOLYSIS:
    回路を長期使用していると出血や凝固異常が起こりやすい
  4. PROCEDURE
    胸腔ドレーンの挿入など、手技に伴う出血。
    手術室で行うなどの対応が必要
  5. INAPPROPRIATE ANTICOAGULATION
    APTT 40-70になるようヘパリン持続投与しないと出血/凝固傾向になる。ECMO患者においてはルーチンで即日結果の出るHIT抗体を提出する。HITだった場合は回路を交換する必要はなく、静注のDOACに変更するだけで対応する

■ECMO管理中凝固傾向を見た時に考えること

  1. OXYGENATOR内の凝固:
    oxygenator前後の圧が>10mmHg以上違っていたら、oxygenator内の凝固を考える
  2. 心室内の凝固:
    また、VA ECMOの患者は心臓が動いていないので血栓ができやすい。血栓が心臓の壁にまとわりついている様子はTEE/TTEだとtamponadeと間違いやすいので注意。心臓のpreloadを増やしてこれ以上血栓ができないようにするため、VA ECMOのflowを4L以下に下げることもしばしばある。
  3. ポンプの凝固:
    回路が流れなくなったら、pump head thrombosisを特に考える
  4. ヘパリンへの耐性:
    ヘパリンに耐性ができてきてきかなくことはある。出血傾向の患者ではheparinなしでECMOの回路を回すこともある。低分子ヘパリンは半減期が長いのでECMOで使うことはほとんどなく、NOACも同様の理由で使いにくいが、Lepirudinなどの静注Direct Thrombin Inhibitorsは使いやすい

■その他のトラブルシューティング例
肺炎ARDS患者のVVECMO中の酸素化障害
CO 10L/minと心拍出量が高すぎる
ECMO 5L/min sat 75%+native 5L/min = 87% sat

VAECMO7日目に心拡大傾向
VAECMOの流量が少なくて十分に左室の負荷をとりきれていない。MRやARやAPOなどの器質的心疾患を悪化させる、PEEPをかけたり強心剤を使って左心負荷をとらないと永遠にECMOから離脱できなくなってしまう

肺炎+心不全でVA-ECMOの患者が全身状態はよくなっているのに酸素化障害
differential hypoxiaを疑う
自己心拍が再開してきたが肺の酸素化が改善されておらず酸素に乏しい血液が流れている。強心剤の量を下げるか、ECMOのflowを上げる

脱血カニューラがゆれており、酸素化障害:
ACCESS INSUFFICIENCY。患者が不安定だったり、血管内ボリュームが足りていなかったり、脱血の勢いが強すぎると脱血管に十分に血液が入らずに十分に還流が保てない。鎮静したり、volume増やしたり、回転数を減らしたり、脱血管の位置をX線で確認したりする

送血カニューラがゆれているが酸素化障害はない:
送血なのでACCESS INSUFFICIENCYは起こりようがない

ECMOを自動送血から手動ポンプに変更したのに、まだうまく送血ができていないアラームが鳴る
手動ポンプへの接合部がしっかり装着されているか確認する。装着時のツメの部分が失敗しやすい (Maquet)

Hbが1日で急激に下がり溶血を疑う:
フィルターを確認、酸素化フィルター前後の圧較差が50以下もしくは10*回転数以下かを確認、d-dimerやfibrinogenを確認、もし溶血が起きていたら、どこかで血栓があるのでheparinを増や

VV ECMO中の酸素化障害:
酸素ポンプから管がちゃんと伸びているか確認、ACCESS INSUFFICIENCYがないか確認、もし精査中に崩れたらCPR開始、ECMO回路前後の酸素濃度を測定、エコーでボリュームと気胸/tamponadeの有無を確認

VA ECMO中の酸素化障害:
酸素ポンプから管がちゃんと伸びているか確認、右手にsaturationがついているか確認、ACCESS INSUFFICIENCYがないか確認、もし精査中に崩れたらCPR開始、ECMO回路前後の酸素濃度を測定、エコーでボリュームと気胸/tamponadeの有無を確認

フィルターに空気が入っている:
即座にクランプ、人工呼吸器のセッティングを上げる、崩れたらCPR開始、空気をフィルターについている活栓から抜く、挿入されたカニューレの特に延長チューブとの接合部に傷がついてairが入ることが多い、内頸静脈の挿入部もairが入りやすい

回転数が多すぎて血圧がどんどん上がってゆくが回転数を下げられない:
脱血管についているバックフローモニターが逆向きについていないか確認、S-Sボタンを押してglobal overide modeにすればrevを下げることができる。下げつつ、バックフローモニターの向きを正常に戻す

ECMO患者の腹部が膨満してきてHbが下がってきた:
超音波で腹腔内出血を確認、輸血オーダー、無気肺を防ぐためにPEEP上昇、崩れたらCPR、輸液や酸素や昇圧剤を持って画像検査など

カニュレーション中にキンクがいつまでも治らない:
キンクするのはほぼ間違いなく皮膚-血管の間であるので、最初のガイドワイヤーの走行を理解しておくことが大事
特に、穿刺部位と鼠径靭帯が近い場合血管に到達する前に鼠径靭帯を貫いてキンクすることがある: 十分に鼠径靭帯から距離をとってカニュレーションする

VA-ECMO 動脈ガスを採血する度に酸素の値が変わってしまう
differential hypoxiaを考える。ECMOの回転数を上げたり、昇圧剤を下げる。

VV/VA-ECMOのポンプは正しく接続されているのにbeepがなり続けている
ポンプに血栓がついている可能性がある。またplasma free Hbが上昇していることも目安になる。

VA-ECMOで患者の心臓が動いていないときに起こりやすい副作用
心室内の血栓形成、TTEでルーチンで確認する必要あり

VV-ECMOで自発呼吸が強すぎてlung restを見込めず、しかも酸素化障害も起こっている
DEX、quetiapine、筋弛緩などで対応する必要あり

VV-ECMOの患者にCVを留置しないといけないとき
CVPを陽圧に保ち、VV-ECMOの回転数を下げることで操作中に空気が混入するのを防ぐ

フィルター前の圧もフィルター後の圧もどちらも高い
フィルター後の圧のみであればフィルターの凝固を考えるが、どちらも高いと回路全体のどこかでkinkしている可能性が高い。特に多いのはカニューレが皮下でkinkしていないかの確認


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