Prevotella buccae

今回も細菌のお話です。本日は、コロニーのその輝きから、コアなファンも非常に多い、Prevotella buccaeについて、語っていきたいと思います。

Prevotella buccaeにそんなに興味がない方は、まず、写真をご覧ください。
3つの培地には、左から P. buccae(色素なし)、P. denticola(茶色)、P. intermedia(黒色)のコロニーができています。

post218_1.jpg
それに紫外線を当てた時、光り輝いているコロニー、それが Prevotella buccaeなんです!!!
「まるでプラネタリウムを見ているみたいだね」などと、細菌検査室で語り合うロマンチスト、それが感染症科医です。

Prevotella buccae

1.概要
Bacteroidetes門 Bacteroidetes網 Bacteroidales目 Prevotellaceae科 Prevotella

Prevotella属は偏性嫌気性のグラム陰性短桿菌で口腔、消化管、女性泌尿生殖器の常在細菌叢を構成する。
1982年に、歯周ポケットや歯面から分離された新種 = Bacteroides buccaeとして発表された。
Bacteroides属に分類されていたが、生化学性状の違いから、1990年に新属 = Prevotella属に再分類された。

<名前の由来>
Prevotella:フランスの微生物学者A.R. Prévot(嫌気性微生物学の先駆者)にちなんで命名された。
buccae : bucca(頬) of the mouth。口の中にいる Bacteroides として報告された。

2.形態と染色性
偏性嫌気性グラム陰性小桿菌。時に球桿菌として視察される。無芽胞、非運動性。

3.培養条件、主な特徴
嫌気性菌の中でも、酸素暴露に対して特に弱く、通常の空気中では約10〜30分で死滅する。
嫌気性用血液寒天培地で3〜7日以上培養すると、直径0.5〜2mmの正円形、凸レンズ状のコロニーを形成する。表面は平滑で光沢があり、プロトポルフィリンを産生し茶〜黒に着色するグループと着色しないグループに分かれる。(P. buccaeは後者) 

コロニーが茶に着色:P. melaninogenica, P. denticola, P. loescheii 
コロニーが黒に着色:P. intermedia, P.corporis
着色しないもの:P. buccae, P. oralis, P. oris, P. bivia, P. disiensなど

紫外線照射によりピンク色〜橙あるいは赤色の蛍光を発する。着色の程度が進むと蛍光は弱まる。(写真参照)

post218_2.jpg紫外線で蛍光を発する P. buccae

post218_3.jpg紫外線でやや蛍光を発する P. denticola

post218_4.jpg紫外線で蛍光を発しない P. intermedia

Prevotella属は好気性菌との混合感染の場合が多く、α連鎖球菌により発育阻害される菌種が存在する。そのため、カナマイシンまたはパロモマイシンとバンコマイシンの適量を加えた選択培地を用いると、各種臨床材料から高頻度に分離できる。

【臨床像】
Prevotellaは口腔、消化管、女性泌尿生殖器に常在→頭頸部・口腔内の感染症が多いが、中枢神経、下気道、食道、女性生殖器、皮膚軟部組織 (特に咬傷後)の感染症の報告がある。
P. buccae, P. oralisは、横隔膜より上部から比較的よく分離される。また、P. bivia, P. disiensは婦人科領域で重要性の高い菌種で、細菌性腟症患者の腟分泌物からの分離率が高い。

【治療】
抗菌薬の感受性は菌群によって異なるが、βラクタマーゼ阻害剤配合βラクタム系抗菌薬、セフメタゾール、メトロニダゾールが有効。アンピシリンの感受性は低く19-44%、クリンダマイシンへの感受性は60-90%。メトロニダゾール耐性の報告もある。
色素非産生群ではβラクタマーゼ産生率が高く、ペニシリン系・第三世代セフェムを含む多くのβラクタム系に耐性を示すことが多い。

post218_5.jpgグラム染色 P. buccae

Prevotella buccaeのコロニーに紫外線を照射し、蛍光を発している姿を見て喜ぶ人たちの様子が観察できます。
https://www.facebook.com/kameda.InfectDis/videos/1370207799836060/


Tag:

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育