当科の特徴

当科の特色を紹介します。面白そうだな、と思ったあなた。ぜひ一度見学に起こし下さい!

一般臨床感染症
臨床微生物学
結核・HIV
南房総特有の感染症
抗菌薬適正使用
OPAT(外来静注抗菌薬治療)
総合内科外来
予防接種外来
渡航外来・輸入感染症
感染対策
教育
学術研究
出会い・つながり

一般臨床感染症

 全ての診療科を対象に、血液培養陽性症例と、感染症に関するコンサルト症例を副科として併診しています。コンサルトは、例えば膀胱炎の抗菌薬選択からICUの重症肺炎患者の抗菌薬選択まで重症度を問わず、梅毒検査陽性患者への対応から術後患者の入院中の発熱の原因検索まで多岐に渡ります。時期にもよりますが60〜90人の患者を2チームで分担しています。併診期間は、少なくとも病状が安定し、抗菌薬投与期間を含む治療方針が決まるまで、です。黄色ブドウ球菌菌血症や慢性骨髄炎など、より重症、より専門性の高い症例では治療が完了するまで併診します。副科・併診と言っても毎日回診して病状の変化に即応し、感染症の問題に関しては主科の心づもり責任を持って診療に当たっています。

 フェローは朝7時に出勤して夜間に変化がないかカルテをチェックします。午前中は既存の患者を回診しながら、検査室からの血培陽性報告や新規コンサルトの連絡を受けて対応します。午後は14時からカンファレンスを毎日行います。最新情報をアテンディング(指導医)や他のフェローと共有して治療方針を決定します。フェローは思う存分に持論を展開し、疑問点がなくなるまで質問し、アテンディングはそれに回答します。複雑な状況や珍しい菌に遭遇して判断に悩むことがあれば、すぐさま『Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases(いわゆるマンデル)』や『Manual of Clinical Microbiology』といった教科書、IDSAガイドラインやUpToDate、iPhoneアプリやGoogleまであらゆる媒体を駆使して最新の情報を検索します。最終的にはアテンディングの責任の下で方針を決定し、その方針は速やかに主科に伝えられ、患者に反映されます。連絡は主に院内PHSで行いますが、複雑な症例や治療方針で意見が分かれる症例では、face-to-faceのコミュニケーションを基本にしています。

 ときにコンサルタントは、自身の専門領域の原理原則を振りかざしたり、主科のニーズを忘れて自らの思いに拘泥するといった、落とし穴に嵌まることがあります。当科ではコミュニケーションを大切にして主科のニーズをつかみ、バランスの取れたコンサルティングができるよう、常に心がけています。一方で不要な抗菌薬投与や不適切な抗菌薬選択がなされた場合には、主科と徹底的に議論して、患者の利益を守ります。

 これらを3年間行ううちに、フェローはあらゆる感染症に大量に曝露して経験を積み、質の高いコミュニケーションスキルを身につけることができます。

臨床微生物学

 当院は国内最高レベルの微生物検査室を有し、日々の診療を通じて良質の臨床微生物研修を行うことができます。

 当院では年間3万本の血液培養が採取され、ほぼ全てが2セット採取です。一方で検査技師による採血など、検査の質を高める先進的な試みによってコンタミネーション率は1-2%と極めて低く保たれています。培養期間も7日間と、一般的な5日間より長いため、Helicobacter cinaediのような培養に時間を要する珍しい菌もよく検出されます。そうして血液培養が陽性になると主治医はもちろん感染症科にも漏れなく連絡が入るため、最も重篤な感染症であるところの菌血症の全症例に感染症科が関わることができる体制となっています。休日は検査室・感染症科いずれも当番がいるので、週7日、年間365日迅速な対応が可能です。

 当院では2015年にMALDI-TOF MS(レーザー脱離イオン化質量分析計)が導入されました。血液培養はもちろん、あらゆる培養検体から得られた細菌をMALDI-TOF MSを用いて同定しています。従来の方法では同定できなかった珍しい菌種も詳細同定できるようになりました。

 培養陰性の場合はユニバーサルプライマーを用いたPCRを行い、得られた増幅産物の16S rRNAの遺伝子解析を行って菌種を同定することもできます。培養が難しい細菌の症例や、抗菌薬投与後の症例でも原因菌を特定して最適の抗菌薬治療を行うことができます。

 しかし重要なのはこれらのインフラや最新技術ではありません。感染症科医と検査技師がコミュニケーションを密にとり、リアルタイムで情報を共有して診療に行かせる雰囲気・協力体制こそが最高の特徴です。重症肺炎患者の痰グラム染色、もちろん自分でもグラム染色を行いますが、専門の検査技師のアドバイスは最適の抗菌薬選択に欠かせません。朝、血液培養1/2セットのみから発育したブドウ球菌が、夕方、わずかに発育したコロニーを用いてコアグラーゼ試験を行うことで、真の菌血症かコンタミネーションかの判断に有力な根拠が加わります。好中球減少患者の血液培養から検出されたブドウ糖非発酵菌、カタラーゼ試験の結果で抗緑膿菌薬のみでよいのか、ST合剤を加えるべきか、抗菌薬選択が大きく変わります。もちろん検査室からの情報がなくても、私たち感染症科医は臨床情報を下に決断を下します。しかし検査室から有用な情報が加わることでより精度の高い判断を下すことができ、それが患者の治療効果を高め、副作用を減らすことにつながっているのを実感しています。

 毎週木曜日にはmicrobiology round(感染症科と微生物検査室の合同カンファレンス)を行っています。臨床的に重要な微生物・珍しい微生物が検出された症例、検査室からの情報で助けられた症例などをフェローが選んでプレゼンします。医師が臨床経過や臨床的な意義を説明すれば、検査技師はグラム染色所見、培地のコロニーの様相、生化学的特徴などを解説します。学んだ内容はプリントにまとめて共有し、今後の診療に生かします。

 フェローは1年目の夏に1週間、3年目に2〜4週間の微生物検査室実習を行うことができ、検査室の業務・手順を知るとともに、多忙な日常で解決できなかった細かな疑問点の答えを見つけることができます。

結核・HIV

 結核やHIV感染症など、専門性の高い感染症は主科として受け持つこともあります。

 当院は厚労省指定の結核モデル病床を有しているため、一般病院では扱わない「塗抹陽性肺結核」の入院症例も経験できます。年間10~20人の結核入院患者を、呼吸器内科や総合内科と協力して診療に当たります。65歳以上が人口の35%(全国平均25%)と高齢化の進んだ地域に立地することもあり、結核を念頭に診療を行う機会がとても多いため、感染管理室と連携して、「疑い」の段階から積極的に空気感染予防策を実施して、感染拡大の予防に努めています。肺外結核も、粟粒結核、結核性リンパ節炎、結核性胸膜炎、結核性腹膜炎、腸結核、結核性髄膜炎、脳結核腫、脊椎カリエス、結核性ブドウ膜炎など幅広く経験します。また妊婦、小児、外国人の結核も受け持ちます。妊婦は産婦人科と連携して無事に出産に至りました。日本語の全く話せない出稼ぎのフィリピン人のケースでは、フィリピン出身の看護師に通訳をお願いし、患者の理解と安心を確保することができました。1年目のフェローは結核診療の基本を学ぶべく、結核予防会結核研究所の医師・臨床コースなどの講習会に参加する機会を与えられます。

 エイズ治療拠点病院として、HIV感染症診療にも積極的に取り組んでいます。現在30人前後をフォローしています。多くはニューモシスチス肺炎などの日和見感染症を契機にHIV陽性が判明した症例で、入院時は主科として受け持ちます。東京や名古屋など大都市の医療機関に比べると量(症例数)は少ないですが、そこは質で挽回しています。フェローは指導医の監督の下、2〜5人程度のHIV患者の外来主治医となりますが、単に抗ウイルス薬を処方してCD4リンパ球数・ウイルス量をフォローするだけでありません。ガイドラインに準拠して結核や性感染症の定期的なスクリーニングや予防接種を行い、「ヘルスメンテナンス」を行って生活習慣病対策を講じ、性的マイノリティ特有の悩み・問題についても配慮した質の高い診療を心がけています。薬剤師、看護師、精神科医・臨床心理士、ソーシャルワーカーと密な連携を図り、2ヶ月に1回の他職種カンファで情報を共有しています。1年目のフェローはHIV診療の基本を学ぶために、国立国際医療研究センターで開かれるエイズ治療・研究開発センター研修などの講習会に参加する機会を与えられます。

南房総を堪能する

 房総半島の先端で太平洋に臨む亀田総合病院ですが、海の魚が新鮮で寿司や刺身が美味しいとか、サーフィンのメッカと呼ばれる海岸があるだけでなく、南房総地域特有の感染症を経験することができます。

 南房総はツツガムシ病や日本紅斑熱といったリケッチア症の流行地域です。周囲には農村が広がっており、地域の方々にとって山や草むらに入るのは日常茶飯事です。気づかないうちにダニやツツガムシに刺されて、春〜夏であれば日本紅斑熱、秋〜冬にかけてはツツガムシ病に罹患する方が多く受診します。亀田の卒業生たちが、これまでリケッチア症は存在しないとされていた新しい赴任地でリケッチア症を診断し、疾患分布地図を書き換えるという衝撃的な出来事が続発しています。理想は診たことがない疾患でも診断できることですが、百聞は一見にしかず、亀田でフェローシップを行えばリケッチア症が簡単に診断できるようになります。

 また破傷風の症例も多く経験します。破傷風は初期には脳梗塞や咽頭炎と誤診されることもあり、診断が難しい疾患です。やはり「百聞は一見にしかず」、一度経験すると次から自然に鑑別診断に挙がるようになります。症例が多いのは農村地帯であり、高齢者が多いためです。1968年に破傷風トキソイドが定期接種に組み込まれる以前に生まれた方は、破傷風の予防接種を一切受けていないことがほとんどです。私たちは外来で、農業や園芸といった破傷風のリスクがある方に対して破傷風トキソイド接種を積極的に行っています。

 そしてアニサキスです。魚が美味しいことが徒となり、救急外来には胃アニサキス症の患者が絶えません。比較的珍しい小腸アニサキス症も経験します。同僚にも2度目、3度目という猛者がいます。

 最後にAeromonas hydrohpila感染症。淡水に生息するグラム陰性桿菌ですが、なぜかこの菌による胆管炎・菌血症や、腸炎を多く経験します。何らかの地域特有の事情があるのか、現在調査中です。微生物界を驚かせる大発見があるかも知れません。

抗菌薬適正使用

 抗菌薬の不適切な使用を背景として、世界的に薬剤耐性菌が増加する一方で、新たな抗菌薬の開発は減っており、国際的な問題となっています。2016年に政府が取りまとめた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を受け、当院では2017年に院内感染管理委員会の下部組織としてAST(Antimicrobial Stewardship Team抗菌薬適正使用支援チーム)を発足しました。薬剤師を中心に感染症科医・微生物技師がメンバーとして活動しています。現在は院内の抗菌薬の使用量や耐性率をチェックして、週1回のミーティングで共有しています。将来的には全ての抗MRSA薬の許可制化や、経口セファロスポリンやキノロン・マクロライドの処方の減少を目標としています。

 ただ、このAntimicrobial Stewardship(抗菌薬適正使用支援)というのは、特に新しいことではなく、従来から私たちが行ってきた活動そのものです。感染症であるのか否かを見極め、感染巣・原因微生物を推定・特定し、患者の背景を考慮して適切な抗菌薬は選択し、投与する。経過を追って治療効果を判定し、培養・感受性試験の結果を踏まえてより狭域な抗菌薬に変更する。私たちが以前から心がけてきた正しい感染症診療を行えば、自然と患者の予後は改善し、不適切な抗菌薬使用は減り、耐性菌は減少すると考えています。

OPAT(外来静注抗菌薬治療)

 OPAT(オーパット)はOutpatient Parenteral Antimicrobial Therapyの略で、外来静注抗菌薬治療と訳されます。肺炎や腎盂腎炎の患者にセフトリアキソンを1日1回連日投与して、外来で治療した経験はおありでしょう。これも広義のOPATと言えますが、私たちはもう一歩進んだ取り組みを行っています。

 よい適応となるのは、長期間の抗菌薬の静注治療が必要だけれども、病状は安定しており、点滴のためだけに入院を継続しているような症例です。例えば、緑色連鎖球菌による感染性心内膜炎で、病状が安定して、手術も要さないようなケースです。PICC(末梢留置型中心静脈カテーテル)を留置して、ペニシリンGを満たしたインフュージョンポンプ(術後の持続硬膜外麻酔を行う風船入りのあれです)を接続し、24時間かけて薬液を注入します。1日1回、決まった時間に通院してボトル交換さえすれば、自宅での生活が可能になります。中にはポンプをぶら下げたまま出勤される方もみえます。入院期間の短縮により医療費の削減・病床の効率的な運用が図れますし、外来でペニシリンGが利用可能となるため、抗菌薬適正使用の観点からも有用です。将来的には保険収載も視野に入れて、実績を積み上げていきたいと考えています。(参考文献:馳 亮太. 感染症学雑誌. 2014;88(3):269-74.)

総合内科外来

 外来では感染性のない結核や安定したHIV感染症だけでなく、非結核性抗酸菌症・慢性骨髄炎・人工関節感染など、長期間治療を要する感染症症例のフォローを行っています。

 それに加えて総合内科外来にも携わっています。上気道炎や胃腸炎のような感染症だけでなく、頭痛、腹痛、手のしびれ、足のむくみ、あるいは健診異常といった一般的な内科初診外来を担当します。また高血圧・高脂血症・糖尿病から心房細動やバセドウ病やといった、内科医であれば誰でも押さえておきたい慢性疾患もフォローします。毎年院内で総合内科が開催する外来診療セミナーに参加すれば、内科全般の幅広い知識をアップデートでき、ヘルスメンテナンスも含めて最新のEBMに基づいた外来診療を実践することができます。月1回、研修医の総合内科外来を指導する機会もありますが、ここでも外来診療セミナーの知識が生きてきます。

 フェローは当初「感染症のトレーニングを受けに来たのに...」と面食らいますが、やがて私たちは感染症の専門家である以前に内科医であることを思い出します。全身を診て、幅広い鑑別診断を想起できることは、感染症の専門家としても必須のスキルです。

 また当科は部長を筆頭に、歴史的にも漢方薬に詳しいフェローが多く在籍していたため、漢方薬の処方が好まれています。実際に外来では、器質的疾患は除外されたものの症状が続いて困っている患者も多く、漢方薬に助けられることがしばしばです。グラム染色の陽性/陰性×球菌/桿菌と漢方の陰/陽×虚/実の2×2表はどこか似ていると思いませんか?

予防接種外来

 感染症が起こってから対応するのは当然ですが、感染症を未然に防ぐことができれば、これ以上のことはありません。そこで小児から免疫不全者、不妊治療中の方、そして旅行者を対象とした予防接種外来を開設し、輸入ワクチンを含む多くのワクチンを取りそろえています。(当科で接種可能なワクチンについて)

 小児の予防接種では、同時接種を基本としてスケジュールを立てるところから行っています。病気その他の理由で接種が遅れている子のキャッチアップも行います。入学・留学時の抗体検査・ワクチン接種や証明書作成も可能です。いかに小さい子たちを泣かせずにスムーズに接種できるか、技術や話術を磨いています。

 免疫不全者の予防接種では、外科と連携した脾摘後予防接種(肺炎球菌・インフルエンザ桿菌・髄膜炎菌)や、血液腫瘍内科と連携した造血幹細胞移植後予防接種を行っています。特に造血幹細胞移植後予防接種は、まだ国内では普及していない比較的新しい試みですが、2013年に米国感染症学会から出されたガイドラインなどを参考にして、積極的に取り組んでいます。

 他にも不妊治療科と連携した麻疹・風疹・水痘・ムンプスのワクチン接種、外傷後やリスクが高い方の破傷風トキソイド接種、高齢者の肺炎球菌ワクチン接種、帯状疱疹予防目的の水痘ワクチン接種なども行っています。(旅行者を対象とした予防接種については次項で述べます。)

渡航外来・輸入感染症

 渡航外来では、渡航前の健康診断・抗体検査から予防接種、マラリア予防薬・高山病予防薬の処方まで幅広く行っています。渡航先・期間、活動内容はもちろん、クライアントの過去の予防接種歴や既往歴まで吟味して、最適な予防策を提案しています。専門家としては、ワクチンで予防できる病気(Vaccine Preventable Disease; VPD)は全て予防したいと思っていますから、全ての予防接種を打って頂きたいのですが、残念ながら予防接種は保険適用外となっているため、時に10万円以上必要となることもあり、特に若い学生さんなどでは予算をオーバーしてしまうこともあります。しかし逆にそういうときこそ専門家の腕の見せ所と思っています。改めてリスクを再評価してワクチンに優先度をつけたり、予防策を講じずに症状が出た場合の対応について話し合ったり、海外旅行保険の利用を提案するなど、クライアントが予算内で最大限に健康問題を回避できるようにお手伝いしています。

 渡航前の準備だけでなく、渡航後の症状に対する対応も行っています。発熱、皮疹、下痢、、、様々な症状はもちろん、渡航期間や渡航先での流行状況まで踏まえて、マラリア、デング熱、ジカ熱、腸チフス、旅行者下痢症、レプトスピラ症、リケッチア症、、、様々な可能性を考慮して診療を行います。

 ただし、これら熱帯医学的な知識・診断技術は、国内で通常の診療を行っているだけではなかなか身につけるのは困難です。そこで私たちは、大阪大学微生物病研究所主催のタイ・ミャンマー国境における現地で学ぶ熱帯感染症医師研修や国立国際医療研究センター病院国際感染症センター主催の輸入感染症セミナーやベトナム熱帯感染症研修、アラバマ大学のThe Gorgas Courses in Clinical Tropical Medicineといった機会を生かして積極的に経験を積んでいます。またISTM(国際渡航学会)のCTH(Certificate in Travel Health)の取得に挑戦し、最新知識のアップデートを図っています。これまでのところ、合格率100%という快挙を続けています。

 2015年からは特定感染症医療機関である成田赤十字病院の感染症科のマネジメントも行っています。フェローは約半年ずつ交代で出向し、感染症診療や感染管理の業務に従事します。成田空港に近いため、外国人も含めてマラリアやデング熱の症例を多く経験することができ、さらにエボラ出血熱やMERS(中東呼吸器症候群)など感染症法で定められた特別な感染症が疑われる患者さんの診療も担います。

感染対策

 当院では感染管理看護師(ICN)が中心となって感染管理に取り組んでいますが、感染症科はICNと連携して様々な感染対策に貢献しています。

 感染症科のメンバーは全員が院内感染対策委員を拝命しています。院長や看護部長とともに月1回の委員会に出席して、自ら最新の耐性菌情報を報告するとともに、院内で今起こっている問題をリアルタイムで共有し、積極的な議論を行っています。

 職員の抗体検査や予防接種(B型肝炎、麻疹、風疹、水痘、ムンプス、3種混合、インフルエンザ)、針刺し事故対応も感染症科が行っています。

 日常診療においても、感染症科が受けたコンサルトに「感染管理に関する問題」が内包されていることがあります。その際はICNに報告・相談して病院としての感染管理方針に一致した対応を取っています。逆にICNが取り組む問題において、医学的な情報が不足して判断に悩むような場合には、感染症科に相談してもらって医学的なアドバイスを提供するという、win-winの関係を築いています。

 特に3年目のフェローは週1回の感染対策チーム(ICT)活動や、希望に応じて2〜4週間程度の感染管理室実習を通して、感染管理の考え方をさらに深めることができます。ICTには医師・看護師だけでなく、放射線技師や歯科衛生士、清掃担当者まで様々な職種が参加しており、勉強会や病棟ラウンドを通して、それぞれの視点からの問題提起や活発な議論を行うとともに、親睦を深めて連携を図っています。

 3年間のフェローシップを終える頃には、感染管理の考え方の基本が身につき、感染予防意識が自然と高まることになります。日々の病棟回診の際に手指衛生やガウンテクニックが不十分な職員を見かけると、フィードバックせずにはいられない程です。なおこれらの活動を通してICDの資格要件を満たすことが可能です。

教育

 感染症科では自分たちが感染症診療を実践するだけでなく、研修医教育や他科の先生方への情報提供にも力を入れています。

 初期研修医や他科の後期研修医の1〜3ヶ月のローテーションを受け入れています。on the jobトレーニングを通して、感染症診療の考え方を身につけてもらいます。他院の医師や学生も1日から3ヶ月まで、ご希望に合わせて見学・研修を受け入れています。

 総合内科、救命救急科、腫瘍内科など、他科のカンファレンスにも積極的に参加し、感染症に関するアドバイスやミニレクチャーを積極的に行っています。

 レクチャーも頻繁に行い、幅広い属性の多くの参加者に好評を博しています。院内で月2回開催する「亀田感染症レクチャー」は主に研修医向けで、細川部長の名物講義『感染症診療の原則』から始まり、主要な抗菌薬の基本、肺炎・尿路感染症・蜂窩織炎といった市中感染症の基礎を学びます。レクチャーの様子は提携している成田赤十字病院や安房地域医療センターにも生中継されます。「KAMETENセミナー」は2016年から始まった感染症各論講義で、年1〜2回、院内で土曜の午後に開催しています。2017年からは東京で「KINDセミナー」を開催しますので、どうぞご期待下さい。細川部長が世話人を務める「IDATENセミナー」にも毎年講師として参加しています。これらのレクチャーを通じて、参加者の皆さんに最新のエビデンスやエキスパートの臨床プラクティスを知って頂くのはもちろん、"教えることは学ぶこと"、フェロー自身も知識の定着やプレゼンテーションスキルの向上という点で、勉強させてもらっています。

 また系列の亀田医療大学の非常勤講師として、看護学生向けの講義も担当しています。おまけとしてパソコンやアプリをアカデミック価格で購入することができます。

学術研究

 週1回のジャーナルクラブでは、フェローが交代で最新の論文や往年の重要な論文を取り上げます。英語でプレゼンを行い、病院専属の米国人指導医の指導を受け、全員でクリティカル・レビューを行います。データを浚って有意差を出せばよいわけでないことを知り、クリニカルクエスチョンは何か、研究デザインは妥当か、自分たちの診療に生かすことができるか、客観的に吟味するスキルを磨きます。

 ジャーナルクラブで学んだことは自分たちの研究にも生かされます。当科では年間1,200症例以上を担当しており、中には大変珍しい疾患や微生物の症例も含まれています。私たちはこれらの経験を社会に還元して医学の発展に貢献するべく、症例報告やケースシリーズにまとめ、学会発表や論文の執筆を行っています。日本感染症学会、日本化学療法学会、日本臨床微生物学会、日本環境感染学会、IDWeek(米国感染症関連4学会合同国際会議)、ECCMID(欧州会陰相微生物感染症科医)などに毎年演題を出しています。さらにそれを和文・英文の論文にまとめて投稿しています。書籍や雑誌の執筆に携わる機会も多いです。

 また全国の感染症専門家との間のネットワークを生かして、国立国際医療研究センター、国立感染症研究所、東北大学、長崎大学熱帯医学研究所などと共同で多施設研究にも取り組んでいます。

出会い・つながり

 私たちの感染症科では、現在5〜11年目、平均7年目の医師がフェローシップを行っています。5年目からになっているのは、内科医としての基本を身に付けている必要があるからです。不明熱を診断するためには、病歴聴取と身体診察、そこから診断を導き出す臨床推論のスキルが不可欠です。血液悪性腫瘍患者の好中球減少性発熱に対処するには、化学療法の概観を理解している必要があります。終末期患者の適切な治療を提案するには、大方針への理解や配慮が欠かせませんが、そこでは主治医として終末期患者を看取った経験が役に立ちます。感染症トリビアを知っているだけでは役に立つ感染症科医とは言えないのです。

 フェローそれぞれの経歴は様々です。総合内科で研修を修めた医師が最多ですが、小児科、呼吸器内科、消化器内科、救急科、臨床検査といった様々な分野の専門医が集まっています。カンファレンスでもそれぞれの経験に基づく幅広い意見が飛び交い、議論が深まります。

 卒業生は東北から九州まで全国各地の市中病院・大学病院で、新たに感染症科を立ち上げるなどして、感染症診療の中心的役割を担っています。さらなるステップアップを図るべく、米国でID fellowshipを行っている卒業生もいます。全国の広がる亀田感染症ネットワークを生かした勉強会や共同研究にも取り組んでいます。

 これをお読みになった皆さんが亀田感染症科に興味を持ってくれることをうれしく思います。フェローシップの応募や見学・研修の相談、その他ご意見・ご質問はkouki-kenshu@kameda.jpまでお願いします。

文責:鈴木大介