the Generation 5 Cardiac Troponin T Assayによる心筋梗塞の早期除外診断は有効か?

Nowak, Richard M et al. "Ultrarapid Rule-out for Acute Myocardial Infarction Using the Generation 5 Cardiac Troponin T Assay: Results From the REACTION-US Study" Annals of Emergency Medicine, 2018-12-01, 72 (6) : 654-664. DOI:10.1016/j.annemergmed.2018.06.021. Reviewer Yoritaka.

今回は総合内科より賴高先生がローテーションに来てくれました。賴高先生からは「救命救急科の雰囲気がよく、とても楽しく学びになった」と感想をくれました。持ち前の明るさとガッツでこちらも1ヶ月楽しく過ごすことが出来ました。
以下reviewです。

アメリカでは、ERを受診する患者の5%がAMIを疑わせる症状を訴える。この数字は胸痛を訴える患者のみであるが、非典型的な症状を含めると更に高い数字となるかもしれない(AMIと診断された8%が胸痛を訴えていない)。これらの患者の90%がAMIと診断されていないにも関わらず、さらなる検査のために入院し、年間70億$がこれらの検査に費やされている。REACTION-US Studyは、2017年にFDAによって認可されたこれまでより高感度のcardiac troponin T Generation 5 (5th cTnT) を使用することにより、FDAが推奨した来院時のbaseline値 6 ng/L未満のcutoff値が心筋梗塞除外に有用かどうかの外部検証および、当研究独自のプロトコールである来院時baseline値 8 ng/L未満かつ30分後の上昇が3 ng/L未満のcutoff値がより効率よく心筋梗塞を除外できるかを調べた米国3次救命センター単施設前向き研究である。対象はERを受診した患者のうち、胸痛に限らず心筋梗塞を疑う症状を呈したもので、組み入れ基準は21歳以上で心電図を取り終え、すべてのProtocol (来院時および30分後の5th cTnTの測定) を完遂できる者とし、除外基準としては来院24時間以内に救命のためにcardioversion や defibrillation、thrombolytic therapy が施行された患者、またはST上昇があり直ちに PCI/CAG が施行されたもの、あるいは外傷、他院への転送、そして妊婦や授乳婦とした。指標検査はRoche社の5th cTnTで受診60分以内のbaselineとその30分後に採取された。参照検査に対応するものとしては心筋梗塞の第3ユニバーサル定義、従来のcardiac troponin I (cTnI) を用いて循環器科専門医、救急科専門医によって最終的に心筋梗塞を診断した。指標検査の結果に関しては治療者、検査者および患者に対しては盲検化された(採血後1時間以内に-80℃で検体は保存され、study完了後、中立機関であるMaryland大学にConcealされて送られ5th cTnTが測定された)。結果、スクリーニングされた患者数は1699人で、実際に組み入れられた患者数は569人であった。このうち、baseline 6 ng/L未満でruled outされて患者は164人でAMI患者は0人(NPV:100%、Sn:100%)、ruled outされなかった患者は405人でAMI患者は44人(PPV:10.9%、Sp:31.2%)、baseline 8 ng/L未満かつ30分後の上昇が3 ng/L未満でruled outされて患者は221人でAMI患者は0人(NPV:100%、Sn:100%)、ruled outされなかった患者は318人でAMI患者は44人(PPV:13.8%、Sp:44.6%)であった。当研究者らは超高感度ウルトラトロポニン(5th cTnT)でcutoff値が下がることで早期に心筋梗塞を除外することが出来ると報告し、来院時と30分後のトロポニンの値で安全に心筋梗塞を除外できる可能性が高く、さらなる外部検証が期待されると結論づけている。単施設であるが、指標検査が確実に盲検化されよくデザインされた研究ということが出来る。しかしconvinient sampleである点、1699人がscreeningされたが、組み入れたれたのは575人で、組み入れられなかった1124人についてのデータが示されておらず、組み入れbiasが懸念され、米国の単施設での研究で、人種、populationに偏りがありgenerabilityが低い。結論として、筆者らはbaseline 6 ng/L未満および baseline 8 ng/L未満かつ30分後の上昇が3 ng/L未満のcut off値でAMIを除外できるとしている。一方で、感度を十分あげた代償に特異度は非常に低いものとなった。診断のためのProtocolではなく、あくまで早期除外のためのProtocolである点は注意が必要である。本研究は、AMIの早期除外診断の検査として期待できるが、日常のpracticeに取り入れるのは時期尚早である。また、陽性適中率が低すぎることも問題である。

Journal Club by 総合内科ローテーター


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科