院外心停止患者に対して声門上デバイスと気管挿管のどちらが有用か?The AIRWAYS-2

Effect of a Strategy of a Supraglottic Airway Device vs Tracheal Intubation During Out-of-Hospital Cardiac Arrest on Functional Outcome The AIRWAYS-2 Randomized Clinical Trial
Jonathan R. Benger, MD1; Kim Kirby, MRes1,2
JAMA. 2018;320(8):779-791.doi:10.1001/jama.2018.11597

【背景】
院外心肺停止患者に対する高度気道確保の最適な方法については確立されていない。声門上デバイス(Supraglotic airway device 以下SGA)手技は、気道確保(tracheal intubation 以下TI)よりも簡便で迅速に施行可能であり、習熟に要する訓練も少ない。心肺蘇生においても手技が簡便であるため、心臓マッサージ中断時間の短縮が期待されている。一方、気管挿管においては観察研究レベルではあるが心肺停止患者において予後を悪化させる可能性が示唆されつつある。そこで本研究は初期の高度な気道確保においてSGAがTIよりも心肺停止患者の機能的予後を改善させるという仮説を立て検証した。

【方法】
本研究は英国の4つの大規模な救急医療サービスが参加し行われた多施設共同クラスター無作為化試験である。対象は18歳以上、非外傷性院外心肺停止患者で、2番目までに到着した現場に到着した登録救命士による治療を受けた患者とした。救急隊員が初期蘇生の気道確保においてSGAまたはTIを行う群に1対1に割り付けられた。主要評価項目はmodified RankinScaleで0〜3点を良好なアウトカム、4〜6を不良なアウトカムとした。副次評価項目は換気成功率、胃内容物逆流、誤嚥等とした。サンプルサイズは過去に実証研究で死亡率が9%であり、SGAは2%予後を改善させると仮定、両サイド検定でα0.05,1-β0.8とし9070とした。

【結果】
2015年6月から2017年8月mでの期間に1523人の救急隊員(SGA群:759人、TI群:764人)、9296人の院外心肺停止患者(SGA群:759人、TI群4410人)が登録された。両群間の患者特性に差はみられなかった。SGA群が6.4%(311/4882例)であり、TI群の6.8%(300/4407例)と比較して有意な差は認めなかった(リスク差:−0.6%、95%CI:−1.6〜0.4、p=0.24)。死亡率はそれぞれ92.0%、91.5%だった。副次評価項目も有為差は見られなかった。

【批判的吟味】
本研究で参加した救命士は自発的に参加に名乗り出て、かつ事前の訓練を積んでおり、通常想定される救命士の挿管技術より優れている可能性が高い。その条件のなか声門上デバイスが心肺蘇生の初期高度気道確保において合併症を含め優れているとは言わないまでも同等の結果がしめされた。この事情を日本で考えたとき、すでに声門上デバイスが普及してきている現状において敢えて救命士に気管挿管を実施させる意味は小さいと思われる。

post123.jpg


Tag:

このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科