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JAMA Pediatrics:EEGを用いたセボフルラン投与量の調整により、小児の覚醒時せん妄と覚醒時間が減少 - 単施設RCT

勉強会
2026.09.24 麻酔科抄読会サマリー

論文
Miyasaka KW, Suzuki Y, Brown EN, Nagasaka Y.
EEG-Guided Titration of Sevoflurane and Pediatric Anesthesia Emergence Delirium: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Pediatr. 2025;179(7):704-712.
doi:10.1001/jamapediatrics.2025.0517

目的

小児全身麻酔において、EEG波形を指標として意識消失を維持できる最低限のセボフルラン濃度に調整することで、セボフルラン曝露量とpediatric anesthesia emergence delirium(PAED)を減少させられるかを検証した。

PICO

P:1歳以上6歳未満で、十分な鎮痛を確保できる予定手術を受ける小児177例
I:EEG波形・spectrogramを用いて、意識消失を維持できる最低限のセボフルラン濃度に調整(n=91)
C:通常の1.0 MACセボフルラン麻酔(n=86)
O:主要評価項目:PAED score 10以上となった患者の割合

方法

日本の小児専門病院で実施された単施設、2群並行、優越性RCT。200例を1:1に無作為化し、177例を主要解析に含めた。主要評価項目の評価者は割付を盲検化した。
Control群では5%セボフルランで導入し、導入後は年齢補正した1.0 MAC(約2.5%)で維持した。EEG-guided群では、持続的なalpha波(8-14 Hz)とslow-delta波を意識消失維持の指標として、通常2%から0.1%刻みでセボフルランを減量した。鎮痛は両群ともレミフェンタニル、区域麻酔、フェンタニル、アセトアミノフェンなどを用いた。

結果

PAEDはEEG-guided群21%(19/91)に対しcontrol群35%(30/86)で、絶対差は14%(95% CI 0.92%-27%、P=0.04)であった。
セボフルラン曝露量は0.8 vs 2.1 MAC-hours、維持期の平均セボフルラン濃度は0.9%(約0.36 MAC)vs 2.5%(1.0 MAC)であり、いずれもEEG-guided群で低かった。
EEG-guided群では、セボフルラン中止から抜管までが3.3分短縮(7.6 vs 10.9分)、自発開眼までが21.4分短縮(19.0 vs 40.3分)、PACU滞在が16.5分短縮(17.8 vs 34.3分)した。
術中PSIはEEG-guided群66、control群42であった。通常のprocessed EEG indexではEEG-guided群が浅い麻酔と判断される値であったが、burst suppressionの頻度は22% vs 23%でほぼ同等であった。

著者の考察

1.0 MACは体動を防ぐ濃度であり、意識消失を維持するために必要な濃度とは異なる。十分な鎮痛を別途確保すれば、セボフルラン濃度を約0.36 MACまで低下させても、EEG上のalpha-slow-delta patternを維持できる可能性が示された。
PAED発症例では覚醒直前により幅広いslow-delta activityと、やや強いalpha/beta activityを認めた。PAEDは累積セボフルラン量だけでなく、覚醒に至るEEG trajectoryと関連する可能性がある。

Limitations

・単施設研究であり、小児麻酔に習熟した施設で実施された。
・全症例の麻酔をEEGによる麻酔深度調整に習熟した1人の研究者が担当しており、一般施設での再現性は不明である。
・PAED score 10以上では群間差を認めたが、12以上をcutoffとすると有意差が消失した。中間解析も行われており、主要結果の統計学的有意性は境界的である。
・術中覚醒について、患者への直接的な質問は行われていない。

会場での議論

・0.36 MAC程度のセボフルランで本当に十分安全なのか?
→ 本研究では強力な鎮痛を併用し、EEG上のalpha-slow-delta patternを維持することで意識消失を判断した。ただし、術中覚醒を直接質問して評価していない点には注意が必要である。

・BIS/PSIを使って同じ管理はできないのか?
→ EEG-guided群の平均PSIは66であり、通常の推奨範囲より高かった。最低限の意識消失レベルを評価するには、processed EEG indexよりraw EEG/spectrogramが適している可能性がある。

・PAED低下はセボフルランの総量低下によるものか、それとも覚醒過程の違いによるものか?
→ 明確ではない。PAED例で覚醒直前のEEG patternが異なったことから、累積曝露量だけでなくemergence trajectoryが関与する可能性がある。

・日常臨床を変えるほどの結果か?
→ PAED減少に加え、自発開眼まで約21分、PACU滞在が約17分短縮した点は臨床的に重要である。一方、単施設かつEEGに習熟した麻酔科医による研究であり、一般化には追加検証が必要である。