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JAMA Neurology:急性虚血性脳卒中の血管内治療では鎮静より全身麻酔の方が機能予後が良い可能性 ― SEGA RCT

勉強会
2026.03.17 麻酔科抄読会サマリー

Chen PR, et al.
Sedation vs General Anesthesia for Endovascular Therapy in Acute Ischemic Stroke: The SEGA Randomized Clinical Trial.
JAMA Neurology. 2025.

目的

急性虚血性脳卒中(AIS)に対する血管内治療(EVT)において、全身麻酔(GA)と中等度鎮静(sedation)のどちらが機能予後を改善するかは明らかではない。本研究は、EVT施行時の麻酔方法が90日後の神経学的転帰に与える影響を評価した。

PICO

P:LVOによる急性虚血性脳卒中患者(n=260)
I:全身麻酔
C:中等度鎮静(RASS −1〜−3)
O:
主要評価項目:90日後 modified Rankin Scale (mRS)
副次評価項目:
・mRS 0–2
・再灌流成功 (TICI ≥2b)
・頭蓋内出血 (ICH)
・ICU滞在
・死亡

結果

Primary outcome:mRS shift analysis
OR 1.22(95% CrI 0.79–1.87)
GA優越のposterior probability:81%

Functional independence(mRS 0–2)
GA 48% vs Sedation 39%
RR 1.20
posterior probability:89%

Reperfusion(TICI ≥2b)
GA 97% vs Sedation 95%
RR 1.01

Symptomatic ICH
GA 0.8% vs Sedation 2.4%

考察

EVT中の全身麻酔は患者体動を抑制し、術者の操作性を高め再灌流手技が安定した可能性が考えられた。また、気道管理や換気の安定化、麻酔薬による脳の酸素需要量低下によるミスマッチの解消が術後の神経学的予後を改善する可能性が考えられた。

会場での議論

・今回の統計解析で用いられたベイズ統計(事前知識をデータに基づいて更新し、確率的な結論を導く手法)は従来の方法(データのみを用いて、帰無仮説の棄却やp値で判断する)と比べて、確率を表す方法である。例えるなら天気予報のように、「全身麻酔のほうが鎮静に比べて〇〇%優れている可能性がある。」という結論を得る。今回、オッズ比率の95%信頼区間(事後分布)が1をまたいでいることから、はっきりと全身麻酔のほうが優れているとは言い切れていない。このような統計を敢えて用いたのは、あまり差がでない可能性を考えたのではないか。

・今回は鎮静も全身麻酔もどちらも麻酔科医が担当している。全身麻酔のプロトコルは麻酔科医の判断に委ねられているので、挿管や薬剤の指定などはないが、全身管理を行う人と、手技を行う人が異なるのは大きなポイントと考えられた。

・アメリカで実際にこのトライアルが開始されて、管理を行っていたころは、途中で鎮静から全身麻酔に切り替えることはなかなか困難であり、全身麻酔の方が麻酔科医にとっては管理しやすかった。

・アメリカでは鎮静でも麻酔科医が行うが、日本では自科麻酔で行われることのほうが多く、例えば当院の心房細動に対するアブレーションでもはじめは自科で鎮静、その後自科で全身麻酔を行い、現在のような麻酔科のNORAに移行した。どちらも麻酔科医が全身管理を行う今回の論文で、全身麻酔の有効性の傾向が示されていることは、自家麻酔による鎮静と麻酔科医による全身麻酔では、さらに大きな差がでる可能性が高いのではないか。