新型コロナウイルス感染症と赤ちゃん(濃厚接触者扱い)の対応について

・新型コロナウイルス第7波が猛威を振るっています
現在の新型コロナウイルス流行第7波の猛威については報道などで皆様ご存じのことと思います。最近では感染経路不明のケースが多く、日常生活のどの場面でウイルスに接するか全く予測ができない状況になっています。新型コロナウイルス蔓延による医療のひっ迫が言われていますが、千葉県、そして当安房地区でも新型コロナウイルス感染患者のみならず、非感染者への日常診療にも支障を来す事態になっております。当院においても医師、看護師他、医療スタッフの感染者や濃厚接触者が多数発生しており、それは周産期センターにおいても同様です。医師、看護師、助産師、事務職員他すべてのスタッフが日常生活においても可能な限りの感染予防に努めております。病院からの指示によりマスクの着用の徹底、会食の禁止を含む行動の制限を遵守しております。また、院内の業務においても感染予防に最大限の努力をいたしております。しかし、どんなに注意をしても新型コロナウイルス感染を完全に防ぐ手立てはありません。

・当院では感染予防策を最大限に行っています、でも赤ちゃんはマスクができません
当院において、分娩を含む入院時にはすべての患者様に新型コロナウイルス抗原検査を行っております。分娩管理中はケアに当たるスタッフの感染予防策も徹底しております。スタッフとお母さんの間では双方がきちんとマスクを着用することで仮にどちらかが感染者であっても他方は濃厚接触者には認定されません。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんはマスクを着用することができません。つまり、生まれた直後から赤ちゃんは常に感染、あるいは濃厚接触のリスクにさらされることになるわけです。
分娩を担当する助産師、産科医師、そして新生児室で赤ちゃんのお世話をする助産師、小児科医師、その他のスタッフは全員日頃より感染予防に努め、日々の健康チェックを行っております。業務にあたるすべてのスタッフはその時点では健康状態に全く問題がない者です。ところが新型コロナウイルスは感染者が発症する2日前から他者への感染が起こりえるとされています。業務にあたるスタッフが無症状であっても既に感染している可能性を完全に除くことはできません。

・赤ちゃんが入院中に新型コロナウイルスに感染する、あるいは濃厚接触者になることがあります
誠に残念なことですが、当院新生児室でスタッフからお預かりしている赤ちゃんへの濃厚接触の事例が発生しました。幸い、赤ちゃんもお母さんも観察期間中に特に問題なく退院いただくことができました。今後もそのようなスタッフから赤ちゃんへの濃厚接触、あるいは感染の事例は発生すると考えられます。今後もスタッフ一同、感染予防には最大限の努力を続けますが赤ちゃんへの濃厚接触、及び感染を完全に防ぐことは不可能であることをご理解ください。万一、赤ちゃんが濃厚接触者になってしまった際にはその事実をお伝えするとともに注意深く観察をさせていただきますが、基本的な入院中の管理は他の赤ちゃんからの隔離以外通常通りに行います。また、赤ちゃんの健康状態に問題なければ入院期間の延長も行いません。

・もし、赤ちゃんが新型コロナウイルスの濃厚接触者になったら
新生児の新型コロナウイルス感染例は比較的少なくまだわかっていないことも多いのですが、これまでに重症化の報告は少ないとされています。お母さんがワクチン接種をしていれば移行抗体により赤ちゃんは感染が起こりにくい可能性がありますが、今回の第7波ではワクチン3回接種後の感染例も多く注意は必要です。成人においては4回目接種が重症化を予防する可能性があり、2ヵ月程度は感染予防効果もあると言われていますので分娩前に可能なら4回目接種を受けてください。
もし赤ちゃんが濃厚接触者となってしまった場合、隔離期間中はお母さん、お父さん以外のご家族との接触はできるだけ避けていただくとともに、ご両親も必ずマスクを着用してください。母乳栄養は通常通り積極的に行うことをお勧めいたします。発熱や活気、母乳の飲みなど注意深い観察をお願いいたします。退院後の赤ちゃんの健康状態については周産期センタースタッフとお電話やインターネットを利用して密に連絡をとり、何か心配なことがあればいつでもご相談いただくことができます。
万一、赤ちゃんがPCR陽性となった場合にはお母さん、接触したご家族が濃厚接触者となり感染のリスクが生じることになります。
なお、入院中の赤ちゃんの医療従事者からの感染リスクを低減する方法として出生後の赤ちゃんのケアをすべてお母さん自身が行い、新生児室には一切入室せず医療スタッフが極力接触しないで退院まで管理する方法もありますが、必要な検査、診察時には接触は避けられず、また何よりも安全管理上お勧めいたしません。

元気な赤ちゃんの誕生、そしてお母さん、ご家族のご健康をスタッフ一同心からお祈りいたします。

2022年 8月16日
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 院長 亀田俊明
新生児科部長 櫻井基一郎
小児科部長  伊東宏明
感染症科部長 細川直登
産婦人科・周産期科部長 古澤嘉明