第10回:デンタルインプラントの不具合とは?

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現在主流となっているデンタルインプラント治療は1960年代から始まりました。現代に至るまでに様々な技術的な進歩やテクノロジーの開発を経て確立された治療方法となり、一般的に広く行われています。その中でどれくらい長持ちするのか、どんなことがリスクになるのか、など様々なことがわかってきています。総じて90%以上のインプラントが10年から15年長持ちする、と報告されており高い生存率の治療と言われています。しかし、裏を返せばかなり少数ではありますが、長い経過の中で残りの数パーセントのインプラントに不具合が起きる可能性がある、ということです。以下にその不具合の例を示します。

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<インプラントの脱落>

比較的術後の早い段階で起こり、骨の中に入れたインプラントが骨とうまくつかなかった状態です。これは全身状態(生活習慣、持っている病気、飲んでいる薬)や手術をする部位の骨の状態(幅や高さ(第8回コラム参照))、インプラントの歯に対する過度な力(食いしばりや歯ぎしり)などが原因と言われていますが、明確な理由はわかっていません。頻度としては1%前後と言われています。
対策として、前述してあるようなリスク要因をしっかりと担当医に提示し、治療の利点と脱落のリスクをしっかりと話し合うこと、が重要です。リスクがあるから必ず骨につかないということではないため、取れてしまった部位に再度インプラントを入れ直すことでも対応ができます。

<インプラント周囲炎>

長期的な問題として起こりうるもので、インプラントの周りの歯肉に歯槽膿漏が起きた状態です。これは、全身状態、口の中全体の歯槽膿漏の程度やブラッシング具合、インプラントが正しい位置に入れてあるか、などが原因と言われています。原因は一つではなく様々なリスクが組み合わさり起きると言われており、専門医の診断を受けないと状態の全貌がわからないことがほとんどです。
歯槽膿漏と同様に軽度の症状から重度の症状まであり治療方法は様々です。重度になると周りの骨が減ってしまって歯茎の腫れや膿が出ることをコントロールできず、ときにインプラントを取り除かないといけないことがあります。近年では正しい診断と適切な手術を受けないとインプラント周囲炎を起こす可能性が高いというデータから、診断の重要性が再認識されています(第7回コラム参照)。

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<被せ物が欠ける、ゆるむ>

インプラントの歯の材質はセラミック、金属、プラスチックなど様々であり、患者さんのかみ合わせや見た目などを考慮しながら選択されます。天然の歯とそれらの人工材料はそれぞれすり減り方や強度が違い、さらに歯の位置や歯茎の厚みなどの口の中の環境は時間と共に変化します。「銀歯が取れた」、「詰め物が欠けた」などのお口のトラブルと同じように、残念ながらインプラントの歯の被せ物も欠けたりゆるんだりすることがあります。
欠けたところを丸めたり、ゆるんだネジを締め直したりすることで簡単に対応できることがほとんどですが、被せ物だけ作り直すこともあります。インプラントの被せ物を入れたらそれで終了という訳にはいかず、治療後の定期的なメンテナンスが重要となります。

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インプラントの不具合は割合的に少なく、その状態は患者さん一人一人様々です。しっかりと診査・診断を行うこと、それに対する治療方針の立案が重要です。過去に当院もしくは他院で行ったデンタルインプラント治療で不具合やトラブルを自覚し、お困りであれば一度相談ください。お力になれることがあるかもしれません。

文責:歯科口腔外科 松田博之
◎インプラント治療をご希望の方は
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このサイトの監修者

亀田総合病院
歯科口腔外科医長 松田 博之

【専門分野】
口腔外科、インプラント