第13回:喫煙とインプラント治療は関係があるのか?

投稿日:

たばこの煙に含まれる成分は何千種類もの化学物質です。有害物質として注目されるのはニコチン、タール、一酸化炭素が多いですが、その他にも多数の毒性を持つ物質や発癌性を持つ物質がわかっています。
喫煙の全身への影響は様々報告されており、がん、血管や心臓の病気、呼吸器の病気、糖尿病などが挙げられます。煙が最初に触れる口の中も粘膜の栄養失調、酸素不足、免疫・防御機能の低下、唾液分泌の低下、口腔内病原菌の増加などの変化が見られます。歯周病、虫歯、口腔癌、口腔顔面奇形(妊婦の喫煙)などは強い因果関係があるとされています。

200801img1.jpg

デンタルインプラントに対しての悪影響も多数報告されています。

2016年まででインプラントと喫煙について言及した1500近い報告の中から厳密な基準で107選択しまとめたところ、喫煙者のインプラント治療が失敗する確率は非喫煙者の2倍以上であった。また、術後に傷が膿んでしまいやすく、インプラントの周りの骨が吸収して無くなりやすいことも報告された。

実は喫煙者と非喫煙者のインプラント治療の成績が変わらなかった、という報告もあります。しかし、責任持って治療にあたる立場としては楽観的に考えづらいことをご理解いただきたいと思います。
当院でインプラント治療を受ける際は患者さんの口と体の健康も考慮し、基本的に禁煙を勧めています。禁煙外来等を利用してやめていただくことがベストと考えておりますが、どうしてもやめられない方には過去の報告を根拠に一時的な禁煙プランも提示しています。

術前4週間、術後8週間の禁煙によって成績を非喫煙者と同等にし、術後の不具合を減らすことができる。〈1997年、2011年の報告〉

200801img2.jpg

加熱式たばこが日本では流行し、通常のたばこより安全な印象をもった患者さんも少なくありません。2019年の報告において加熱式たばこのニコチン量は57%〜83%まで減量されているとされていますが、加熱式たばこから排出されるエアロゾルの中にはアセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどの有害物質が含まれていることも証明されています。新時代の製品でありデンタルインプラントにつながる成績が世に出されるのはまだまだ先になりますが、使用をする人や周囲の人に悪影響があるのは間違い無いようです。歯科医師としてお勧めできないのが現状です。

200801img3.jpg

文責:歯科口腔外科 松田博之
◎インプラント治療をご希望の方は
松田博之医師をご指定ください。

このサイトの監修者

亀田総合病院
歯科口腔外科医長 松田 博之

【専門分野】
口腔外科、インプラント