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第5話エコーガイド下手術と再生医療

こんにちは、スポーツ医学科医師の服部惣一(はっとりそういち)です。「足の痛みねんざ外来」を担当しております。前回までのコラムでは「足の痛みねんざ外来」でどのような治療を行っているかを紹介させていただきました。リハビリ治療やサポーターに加えて、この外来の目玉である「エコーガイド下での無痛注射治療」と「エコーを使った低侵襲(手術の傷が小さい)治療」について説明しました。5~10㎜という小さな傷で行うことによって、痛みが減るのはもちろんのこと、創部の感染や神経を損傷してしまうリスクの低下につながります(図)。

第1回のコラムで詳述しましたが、そもそも留学を志したのはエコーを使った世界初の手術を開発するという目的がきっかけでした。その志をもってピッツバーグのDr.Richard Debskiの研究所(OrthopaedicRobotics Laboratory)の門を叩き、研究・開発の許可を得ることができました(写真1・写真2)。私が開発しようとしていたのは、わずか5mmのキズ一つを作って、緩んでしまった靱帯を縫合するという手術でした。従来の手術のキズが7cmでしたので、いかにキズが小さいかが分かると思います(図)。キズが小さいことは、痛みが少ないことや、創部感染や神経損傷のリスクを下げることにつながります。

上の写真はエコーをみながら断裂した靱帯(黄色の矢印)を特殊な針(白の矢頭)で縫合しているところです。下の写真はエコー画像。

エコーをみながら針をコントロールすること(赤矢印)で、皮膚を切開することなく断裂した靱帯を縫うことが可能です。

今回のコラムでは、この低侵襲治療に、再生医療を組み合わせた「未来の治療」について説明します。

なぜ再生医療を追加する必要があるのか?と思われる方がいらっしゃるかもしれません。スポーツをやっている部活動生やプロ選手にとって「手術してスポーツに復帰できるまでの時間」は短ければければ短いほどよいのです。

前回ご紹介したエコーガイド下靱帯修復術がどれだけ低侵襲であっても、手術をした靱帯がしっかり働くまでは2~3カ月を要します。例えば、中学3年生の選手が5月に手術をしたとしますと7月の最後の大会には間に合わないのです。

スポーツに復帰できるまでの期間を1カ月でも1週間でも短縮できないかと考えたときに、浮かび上がってくるのが再生医療です。

スポーツ医学科では、多血小板血漿療法(たけっしょうばんけっしょう 通称PRP)という治療や脂肪幹細胞治療という治療を行ってきました。治りが悪いといわれる軟骨(なんこつ)や腱(けん)、靱帯(じんたい)という組織に対して、それらを再生させる目的で使用しております(ご希望の方は大内主任部長の火曜午前のスポーツ医学科自費外来を受診してください)。エコーを使った手術で靱帯を直した後に、靱帯を再生させる治療を組み合わせることで、靱帯の治癒を加速でき、スポーツへの早期の復帰が可能になるのではないかと推測されます。アメリカでは実際に治癒を加速させるために、関節鏡手術に加えて再生医療を行うことが普及してきております。

日本では、現時点で多血小板血漿療法を含めた再生医療は「自費診療」となっており、「保険診療」であるエコーでの手術治療と組み合わせることはできません。よって、まだ「未来の治療」ということになってしまうのですが、遠くない将来に日本でもこれが可能になって、エコーガイド下手術を受けた方が1~2カ月でスポーツに復帰していく未来があるかもしれません。

次回は最終回となりますので、これまでのおさらいと「未来の新しい治療」をもう一つご紹介したいと思います。興味を持たれた方は、ぜひ火曜日午後の「足の痛みねんざ外来」を受診ください。

文責:亀田総合病院 スポーツ医学科 服部惣一
(2021.5.1作成)

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