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PCA(Patient Controlled Analgesia:自己調節鎮痛法)について

2008/09/01

1986年にWHO(世界保健機関)はがん疼痛の薬物療法の5原則を以下のように示し、これが現在でもがん疼痛の薬物治療の標準方式となっています。

  1. 1 .経口投与を基本とすること
  2. 2 .時刻を決めて規則正しく投与すること
  3. 3 .痛みの強さに応じた効力の鎮痛薬を選ぶこと
  4. 4 .患者ごとに適量を求めること
  5. 5 .以上の4原則を守った上で細かい配慮を行うこと

通常は上記の原則に沿って飲み薬で鎮痛を図りますが、通常の方法ではコントロールが難しい痛みではPCAポンプと呼ばれる機械を用いて、モルヒネ系薬剤を投与する方法が便利です。今回はこの鎮痛法についてご紹介します。

PCAとは Patient Controlled Analgesiaの略称で、「自己調節鎮痛法」 の意味です。通常モルヒネ系の注射剤を静脈あるいは皮下からPCAポンプと呼ばれる機械を用いて投与します。PCAポンプの最大の特徴は、PCAポンプに ボタンがあり、痛みがある場合に患者さまが自らボタンを押して痛みのコントロールに参加できる点です。当院では、去年1年間に約80人の緩和ケアチームが 係わった患者さまにPCAを処方しました。

PCAの機械設定には3つのモードがあります。1つ目は持続投与量で、ボタンを押さなくても一定量の薬液が自動的に投与される仕組みです。2つ目 はボタンを押したときにその都度あらかじめ設定された薬液量が投与される仕組みです。3つ目は不応期 (ロックアウト) といい、ボタンを押して薬が投与された後,一定時間が経つまではボタンを何回押しても薬が投与されない、薬の過剰投与を防ぐ安全管理上の仕組みのことで す。この3つのモードを患者さまの痛みのタイプや全身病状により個別に設定します。

PCAの主な利点には他の以下の項目があります。

  1. 1 .痛みに対し即座に鎮痛薬を自ら投与できる (看護師に遠慮せずにすむ)
  2. 2 .静脈・皮下投与によって経口投与よりも迅速な疼痛コントロールが可能である
  3. 3 .頻回の痛みがある場合にその都度きめ細かく痛みの薬を使用できる
  4. 4 .痛みがでる場面をあらかじめ予想できる場合に予防的に薬を投与できる(傷の処置、体の姿勢や特定の動作時、リハビリや検査前の移動時など)
  5. 5 .嘔吐や下痢時に通常の経口薬や座薬が使用できない場合にも使用できる
  6. 6 .薬の必要量の適切な範囲が狭い場合など、経口での投与量の調節が難しい場合に細かい投与量の調節が可能な場合がある
  7. 7 .短期限定で、疼痛薬の必要量を迅速に測定することができる

PCAの主な注意点は以下の項目があります。

  1. 1 .認知機能低下、混乱、あるいは強い不安がある場合、痛み以外の理由でボタンを押すことによる過剰投与のリスクがある
  2. 2 .点滴の管が増えて身動きが取りづらくなる
  3. 3 .退院時にPCAから通常の経口や貼付剤での鎮痛法に変更するが、それが何らかの理由で無理な場合、外来や在宅でPCAを継続できる体制がまだ十分に整っていない (亀田の在宅ではPCAは継続可能)

日本ではPCAは緩和ケアの鎮痛法としてまだ十分普及していません。私が緩和ケアの研修を行った米国では、経口・貼付剤・座薬などで鎮痛が難しい 場合に、PCAが通常の鎮痛法として広く浸透しています。静脈・皮下のPCAでも鎮痛が不良の場合は、モルヒネ系薬剤と局所麻酔剤を同時に硬膜外PCAと して管理することが可能です。

当院の緩和ケアでは、これからも適応がある場合に PCAポンプを積極的に活用し、より満足度の高い痛みのコントロールに努めていきます。

緩和ケア科医師 関根龍一

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