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肛門疾患の基礎知識

肛門疾患の基礎知識

A.肛門の解剖

肛門は消化管の末端部分で、肛門縁とその内側3-4cmの肛門管を指します。肛門管の歯状線には、くぼみである肛門陰窩があり、肛門腺導管が開口しています。歯状線より下部は痛みに敏感ですが、上部は無痛で主に排便の生理機能に関係しています。歯状線の上方に上直腸静脈叢があり、内痔核の発生部に相当します。歯状線より下方に下直腸静脈叢があり、外痔核の発生部に相当します。肛門の閉鎖に関わる筋肉に内肛門括約筋、外肛門括約筋、肛門挙筋があります。

  • 図1

    図1

B.内痔核

排便時のいきみの繰り返しなどにより、肛門を支える組織の緩みやうっ血をきたし歯状線より上方の上直腸静脈叢がいぼ状に膨らんだものです。「いぼ痔」と呼ばれ、痔核全体の約8割を占めています。

症状

症状には出血、脱出、疼痛があります。出血は排便時に認められる鮮血です。いぼが脱出すると手を用いて肛門内に還納することになります。炎症を伴うと痛みを生じます。血栓を伴って腫脹し元に戻らなくなると激痛になります(嵌頓)。

病状

内痔核の病状は4段階に分かれます。

I度 痔核が肛門内に膨らんでいるだけで、排便時に肛門の外へ出ない状態
II度 痔核が排便時に肛門の外へ出てくるが、排便後は自然に元に戻る状態
III度 排便時に肛門の外へ出た痔核が自然に肛門内に戻らず、指などで押し込む状態
IV度 痔核が常に肛門の外に出たままで、指などで押し込んでも肛門内に戻すことができない状態
  • 図2

    図2

治療

I度 便通の改善、坐剤の使用
II度 坐剤の使用、ALTA(ジオン注)硬化療法、ゴム輪結紮療法
III度 手術、全身状態が不良ではALTA(ジオン注)硬化療法
IV度 手術

C.外痔核

歯状線より下方の肛門上皮部に発生する痔核です。

症状

出血は少ないのですが、血栓性の静脈炎を併発すると激痛を感じるようになります(血栓性静脈炎)。

治療

重症(激痛時) 血栓除去
軽症 坐軟膏と消炎鎮痛剤
無症状 無処置

D.裂肛

太くて固い便のために肛門が切れて起こる痔で、「きれ痔」と呼ばれています。

  • 図3

    図3

症状

症状は排便時の出血と痛みです。裂肛を繰り返すと潰瘍ができて、症状は悪化します。さらに慢性化すると肛門の出口にいぼができ(見張り疣またはskin tag)、肛門が狭くなることがあります。

治療

排便習慣の改善
ニトログリセリン軟膏、カルシウム拮抗剤軟膏
肛門狭窄が著しいときは手術

E.痔瘻

病型として肛門周囲膿瘍と痔瘻がありますが、別々の病気ではなく肛門周囲膿瘍が進行して慢性期になったものが痔瘻です。

肛門周囲膿瘍

肛門陰窩に開口する肛門腺導管を通して肛門腺内に細菌が侵入して炎症が起こったものです。肛門周囲の皮膚が赤く腫れ上がり、激痛が続き38度を越える発熱を伴うことがあります。

  • 図4

    図4

痔瘻

溜まった膿は肛門周囲の皮膚に破れ出ます。そして、肛門陰窩―肛門腺―皮膚までのトンネルが出来上がります。これが痔瘻です。症状は肛門の周囲が膿の混じった浸出液でただれたり、痛んだり、不快感をきたします。

痔瘻の分類

  • 図5

    図5

I 皮下痔瘻と粘膜下痔瘻
粘膜や皮下の浅いところにできる。
IIL 低位筋間痔瘻
歯状線より下方で内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を走行する。
IIH 高位筋間痔瘻
歯状線より上方で内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を走行する。
III 坐骨直腸窩痔瘻
肛門の背側に原発口があり、内肛門括約筋と外肛門括約筋を貫通する深い痔瘻。肛門後方で馬蹄形に拡がることがある。
IV 骨盤直腸窩痔瘻
肛門挙筋の頭側に及ぶ最も深い痔瘻。

治療

痔瘻の治療の原則は手術療法です。

I 瘻管切開開放術
IIL 瘻管切開開放術、括約筋間瘻管結紮術、シートン法
IIH 瘻管切開開放術
III 括約筋間瘻管結紮術、ハンレイ変法、シートン法
IV ハンレイ変法、シートン法

F.その他

直腸脱 直腸の全層が肛門から脱出するものです。早期の治療が必要で、放置すると便失禁をきたします。
直腸瘤 直腸前方に瘤となる直腸の突出をきたしたものです。ここに便がはまり込んで排便が困難になります。女性に多いのが特徴です。
便失禁 分娩時に肛門括約筋が損傷したり、いきみの習慣によって肛門括約筋のしまりが不良になるために発症します。
尖圭コンジローマ ヒトパピローマ・ウイルスの感染が原因で皮膚の角化によって生じる腫瘍です。
肛門の悪性腫瘍 癌、悪性黒色腫、パジェット病などがあります。

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