怪我後の早期管理について 〜RICEからPOLICEへ〜

【はじめに】

スポーツの現場で怪我をしたとき、損傷部位のダメージを最小限にとどめるために行う方法を「応急処置」と言います。この応急処置は早期スポーツ復帰に欠かせないものです。応急処置をしなかったり、不適切な処置、管理を行うと復帰までに時間がかかります。

【RICEからPRICE、そしてPOLICEへ】

応急処置の手当の基本はRICE処置と言われてきました。
Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)、これらの頭文字をとったものであり、スポーツを始め外傷の緊急処置の基本と言われています。
しかし、安静だけでは、損傷した組織を保護できないことから、RICEにProtection(保護)を加えたPRICEと呼ばれる処置に変遷してきました。
さらに近年において、急性損傷の早期管理として必要以上の固定、安静は悪影響を及ぼすことが分かってきており、安静(Rest)を、Optimal Loading(最適な負荷)に置き換えたPOLICEという概念が広まりつつあります。

【POLICE】

Protection(保護):装具やシーネなどで損傷組織を保護し、再受傷、悪化を防ぐことが目的。
Optimal Loading(最適な負荷):早期に最適な負荷をかけることで最適な組織修復を促すことが目的。各組織、部位に対する適切な負荷は専門家の意見を聞いてから行うことを推奨します。
Ice(冷却)疼痛の緩和、異常な筋収縮パターンを改善することが目的。
Compression(圧迫)患部の内出血や腫脹を防ぐことが目的。
Elevation(挙上):浮腫の軽減を図ることが目的。

【Optimal Loading:(最適な負荷)とは】

生理学的適応を最大化する構造にかかる負荷であり、早期の最適な負荷は治癒に関連する重要なタンパク質の生成を促進し、修復の質を改善することで細胞応答を促進すると考えられています。適切な負荷を適切な組織に機能的範囲内で行うことで、最適な組織修復が期待されます。

【おわりに】

早期に最適な回復を目指すアスリートにはPOLICEは有効な手段です。
しかし、意識消失、ショック、頭・頸・背部の外傷や大量出血、脱臼・骨折が疑われる著明な変形など、重症な傷害の場合はすぐに病院にかかり、むやみに動かさないようにしましょう。そして、医師の指示に従うようにしましょう。

【出典】

1) Bleakley CM, Glasgow P, MacAuley DC ,PRICE needs updating, should we call the POLICE?,Br J Sports Med 2012;46:220-221
2) Glasgow P, Phillips N, Bleakley C,Optimal loading: key variables and mechanisms ,Br J Sports Med 2015;49:278-279.
3) Chris M Bleakley, Philip D Glasgow, Nicola Phillips,et al,Management of acute soft tissue injury using Protection Rest Ice Compression and Elevation: Recommendations from the Association of Chartered Physiotherapists in Sports and Exercise Medicine (ACPSM)

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法