スポーツ医学とは8- アスリートに対する最先端の"股関節鏡"手術

アスリートの復帰を早める手術として、我々が「関節鏡手術」を専門に行っていることはこれまでにもお話をしてまいりました。今回はその中でも世界的に最先端の関節鏡技術である股関節鏡についてお話しいたします。

スポーツにおいて股関節は他の関節に比較すると傷害される頻度が少ないとされています。確かに膝や肩、足首などと比較すると少ないのですが、それでも診断をきちんと行うと一定の頻度で発生する傷害です。ここ10年の間に股関節スポーツ障害の診断方法に関しては随分と研究が進みました。

その股関節ですが、怪我をする方法としていくつかのパターンがあります。アメリカンフットボールなどのcollisionsports(衝撃のあるスポーツ)で股関節に対して直接外側から強い外力が加わる場合、アイスホッケーやゴルフのように強いねじれが加わる場合などです。

こういった外力により股関節の関節軟骨(ボールと受皿の表面を覆う軟骨)や股関節唇(受皿の周囲を取り囲む縁の軟骨)、さらには大腿骨頭靱帯(関節の中でボールと受皿をつなぐスジ)が損傷します。そしてこういった関節内の傷害が起きてしまうとなかなか運動療法のみでは症状の改善がはかれないのです。
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では、これらに対してどのような手術を施行するかというと、股関節の前面と側面に約1cmの皮膚切開が4つほど加わり、そこから関節鏡を関節の中に挿入します。そして画面に映し出される映像をみながら手術操作を行います。

他の関節と比較し、股関節は関節内の形が複雑で、また深い部位にある関節なので関節鏡の操作がしにくいと思われていますが、経験のある術者ならば先端の曲がる機器を工夫して使用することで関節内をくまなく見ることができ安全に手術操作できます。

近年では損傷軟骨が再度再生するように関節軟骨面にわざと小さな傷をくわえて出血させるマイクロフラクチャーという手術を行ったり、断裂してしまった股関節唇を縫合したり、さらには変形した股関節の骨を削り再度正常に近い形態に戻す手術なども行われるようになってきました。

当院ではスポーツ医学科の大内、後藤医師が海外にて常に最先端の手術手技の研修をしていますので、こういった股関節鏡手術を行っています。現在までにもトッププロの選手に対して股関節鏡手術を施行して良好な成績をおさめてまいりました。

スポーツにともなった股関節傷害をかかえている方で症状を関節鏡で改善したい、というご希望の方は是非当院スポーツ医学科の外来受診をお勧めいたします。

スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法