運動誘発性喘息EIA:exercise-induced asthma

【はじめに】

気管支喘息は気道に炎症を繰り返すことで気道過敏性が増し、気道が狭くなることで喘鳴(ぜんめい)を伴う息苦しさや咳を発作的に繰り返す疾患です。日本では小児の6.4%、成人の3.0~6.2%に見られる一般的な疾患で、このうち運動に伴って運動後に気道狭窄を引き起こす運動誘発性気道攣縮(Exercise induced bronchoconstriction:EIB)が小児喘息のほとんどに、また成人の喘息でも半数以上に認められ、これを運動誘発性喘息(Exercise induced asthma:EIA)といいます。

【運動誘発性喘息が起こるメカニズム】

運動により呼吸の回数が増えると、より多くの冷たく乾燥した空気が気道を冷やし気道の粘膜を障害する。その結果、気道が浮腫み気道が狭くなります。よって冬期のスポーツに多くみられます。

【運動誘発性喘息の診断】

運動する度に繰り返す息切れや咳、胸苦しさがあれば運動誘発性喘息を疑い、肺機能検査を行います。肺機能低下が吸入薬により改善したり、肺機能が正常でも気道を刺激するテストを行い、気道の過敏性が増していれば診断確定となります。

【運動誘発性喘息の予防】

運動誘発性喘息は予防が重要です。元々、気管支喘息を指摘されていれば吸入ステロイドなどで普段から発作を予防しておくことが大切です。また運動前に薬を吸入や内服したり、ウォーミングアップで軽い発作を起こすことで予防が可能なこともあります。

気道に冷たく乾燥した空気が流入することで発作が起きやすくなりますので、気温や湿度が極端に低いところでのトレーニングを避ける、マスクをすることも予防に有用です。

運動誘発性喘息で使う薬の中にはドーピング検査に抵触するものもありますのでアスリートの方で喘息の治療を行っている方は医師にご相談ください。

【さいごに】

運動誘発性喘息は適切な指導と予防で運動することが可能なことが多いです。ご家族、学校の先生、クラスメートにもこの病気を理解して頂きむやみな運動制限は避けるようにお願い致します。

【出典】

1) National Asthma Education and Prevention Program. Expert Panel Report 3 (EPR-3): Guidelines for the Diagnosis and Management of Asthma-Summary Report 2007. J Allergy Clin Immunol. 2007 Nov;120(5 Suppl):S94-138. or at National Heart, Lung and Blood Institute (NHLBI) PDF, correction can be found in J Allergy Clin Immunol 2008 Jun;121(6):1330

2) Weiler JM, Bonini S, Coifman R, et al. American Academy of Allergy, Asthma & Immunology work group report on exercise-induced asthma J Allergy Clin Immunol. 2007 Jun;119(6):1349-58., commentary can be found in J Allergy Clin Immunol 2008 Jan;121(1):269

3) Weiler JM, Anderson SD, Randolph C, et al. American Academy of Allergy, Asthma and Immunology, American College of Allergy, Asthma and Immunology, Joint Council of Allergy, Asthma and Immunology. Pathogenesis, prevalence, diagnosis, and management of exercise-induced bronchoconstriction: a practice parameter. Ann Allergy Asthma Immunol. 2010 Dec;105(6 Suppl):S1-47.

4) Randolph C. Exercise-induced bronchospasm in children. Clin Rev Allergy Immunol. 2008 Apr;34(2):205-16.

5) Krafczyk MA, Asplund CA. Exercise-induced bronchoconstriction: diagnosis and management. Am Fam Physician. 2011 Aug 15;84(4):427-34.

6) 藤本繁夫, 桂良寛, 上田真也ら. 運動誘発性喘息とその対策-特にアスリート喘息を中心に- 第21回 日本臨床スポーツ医学会 学術集会2011年

7) 医師のためのTUE申請ガイドブック2014 日本アンチ・ドーピング機構

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法