慢性肺アスペルギルス症の診断においては、アスペルギルス抗原よりも、アスペルギルス抗体の方が、感度が高い。

慢性肺アスペルギルス症(CPA)は、肺の器質的病変(空洞や気管支拡張)にアスペルギルスが腐生することによって生じます。

そして、単純性肺アスペルギローマ(SPA:単一の空洞に真菌球を認めるもの)と慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:空洞が複数存在、または経過が早く進行性に肺が破壊されるもの)に大別されます。
(深在性真菌症のガイドライン作成委員会 編
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014 協和企画 2014年 東京)


(CPPAの胸部CT所見:複数の空洞、1つの空洞の内部には菌球、また他の空洞では壁の肥厚と周囲にconsolidationを認める。)

150901img1.png

慢性肺アスペルギルス症の診断においては、全身状態が不良で気管支鏡が困難な患者も存在し、血清診断が併用されます。

アスペルギルスの血清診断においては、β-D-glucan、ガラクトマンナン抗原、アスペルギルス沈降抗体の3つの検査が存在しますが、この中で、慢性肺アスペルギルス症においては、アスペルギルス沈降抗体が最も感度が高いとされています。
(日本化学療法学会雑誌 2014;62:657-662)


本邦の検討では、慢性肺アスペルギルス症に対するアスペルギルス沈降抗体の感度は78.9%、特異度は95.6%と報告されています。
(日本呼吸器学会誌 2012:1:p3-8)

特に、単純性肺アスペルギローマなどで、組織侵襲が少ない場合は、血中のβ-D-glucanやガラクトマンナン抗原は上昇しにくいと考えられます。


よって、慢性肺アスペルギルス症を疑った場合は、β-D-glucanやガラクトマンナン抗原だけでなく、アスペルギルス沈降抗体も測定することが推奨されます。

ただし、アスペルギルス沈降抗体は、いまだに本邦で保険適応が得られておらず、測定する際に、患者さんの自費になることに注意する必要があり、患者さんに十分説明することが求められます。

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患