アファチニブ(第二世代EGFR-TKI)の使用におけるポイントは?

肺癌領域は次々と新しい薬が開発されています。

EGFR-TKIも次々と新しい薬剤の開発が進んでおり、第2世代EGFR-TKIではアファチニブが承認されており、現在第3世代のEGFR-TKIが開発中です。

今回は、第2世代EGFR-TKIであるアファチニブの最新知見についてまとめました。

概念

アファチニブは、ヒト上皮成長因子受容体(human epidermal growth factor receptor: HER)ファミリーであるEGFR/HER1/erbB1およびHER2/erbB2、HER4/erbB4に対して、ATPの結合を競合阻害することで抗腫瘍効果を発揮する第2世代の経口EGFR-TKIである。

当初は野生型EGFRや獲得耐性の原因であるT790M変異を有する肺癌細胞株で増殖抑制効果が示されていた。
(Cancer Res. 2010 Feb 1;70(3):868-74.)


しかし、獲得耐性症例を対象とした臨床試験では主要評価項目を達成できたものはなく、EGFR-TKI耐性例におけるアファチニブの効果は限定的であると考えられている。

臨床試験

アファチニブの臨床試験は、LUX-Lung試験と称される。 LUX-lung1から8まで存在するが、LUX7を除く7つの試験で既に結果が報告された。 以下、代表的な臨床試験について述べる。
  1. LUX-Lung1試験
  2. 1〜2レジメンの化学療法歴があり、第1世代EGFR-TKIを12週以上投与されてPDとなった患者を対象として、アファチニブとプラセボを比較した第IIb/III相試験。

    アファチニブ50mg/日を投与する群(アファチニブ群:390人)とプラセボを投与する群(プラセボ群:195人)に無作為に割り付けられ、全生存期間(OS)を主要評価項目にアファチニブの有効性が検討された。PFSはアファチニブ群で3.3ヶ月、プラセボ群で1.1ヶ月と有意に延長した。しかし、MSTはアファチニブ群で10.8ヶ月、プラセボ群で12.0ヶ月(ハザート比(HR)1.08、95%信頼区間(CI):0.86〜1.35、p=0.74)とアファチニブの有効性を示すことはできなかった。
    (Lancet Oncol. 2012 May;13(5):528-38.)

  3. LUX-lung3試験
  4. EGFR遺伝子変異を有する進行肺腺癌に対して、標準治療であるペメトレキセド+シスプラチン併用療法とアファチニブを比較した国際共同第III相試験。

    遺伝子変異スクリーニングを受けた1269人の患者のうち345人が、初回治療としてアファチニブ40mg/日を投与する群(アファチニブ群:230人)と、メペトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2を3週毎に投与する群(PC群:115人)に無作為に2:1の比で割り付けられた。

    主要評価項目であるPFS中央値は、アファチニブ群で11.1ヶ月、PC群で6.9ヶ月と有意にアファチニブ群で延長を認めた(HR 0.58. 95%CI;0.42-0.78, p<0.001)。

    有害事象は、アファチニブ群で下痢95%、皮疹89%、口腔粘膜炎72%、爪囲炎57%を認めた。

  5. LUX-Lung6試験
  6. アジア人(中国、韓国、タイ)を対象とし、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法とアファチニブを比較した第III相試験である。遺伝子変異スクリーニングを受けた910人のうち363人が、初回治療としてアファチニブ40mg/日を投与する群(アファチニブ群:242人)とシスプラチン75mg/m2+ゲムシタビン1000mg/m2を3週ごとに投与する群(GC群:122人)に無作為に2:1の比で割り付けられた。

    PFSを主要評価項目とし、対照のGC群5.6ヶ月に対して、アファチニブ群では11.0ヶ月と有意な延長を認めた(HR 0.28,95%CI:0.2-0.39,p<0.0001)。

  7. LUX-LUNG3試験とLUX-Lung6試験のOSの統合解析
  8. LUX-Lung3試験のOS中央値はアファチニブ群28.2ヶ月、化学療法群28.2ヶ月であり、LUX-lung6試験では、アファチニブ群23.1ヶ月、化学療法群23.5ヶ月であった。ただし、事前に計画された遺伝子変異タイプ別の解析では、Del19の患者においてはアファチニブ群で有意な延長が認められた。LUX-lung3試験でOSはアファチニブ群33.3ヶ月、化学療法群21.1ヶ月(p=0.0015)であった。LUX-LUNF6試験ではアファチニブ群31.4ヶ月、化学療法群18.4ヶ月であった(p=0.023)。

    両試験とも治療群間でバランスがとれていたが、試験時に2次治療以降の治療としてアファチニブは臨床的に使用できなかったため、化学療法群の後治療としてのEGFR-TKIはほとんどエルロチニブあるいはゲフィチニブが用いられていた。
    (Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):141-51.)

注意すべき毒性

なおアファチニブに関連したGrade3/4の主要な有害事象としては、Lux-lung3、Lux-lung6の各アファチニブ投与群のうち、発疹・ざ瘡が16%と15%、下痢が14%と5%に認められたほか、爪周囲炎がLUX-Lung3でのみ11%、口内炎・粘膜炎がLUX-Lung6でのみ5%に認められた。
(Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):141-51.)

アファチニブの位置づけ

EGFR遺伝子変異のうちDel19を有する患者においては、標準化学療法と比べて、アファチニブがOSを延長することが示されており、今後Del19を有する患者ではアファチニブが選択される場面が増えるかもしれない。

しかし、現時点では3剤のEGFR-TKIを直接比較したデータは現時点では存在しない。ゲフィチニブとアファチニブを直接比較したLUX-LUNG7試験の結果が待たれるところである。薬剤の毒性プロファイルを正しく理解して使用すべきである。

参考文献

大盛翔太ら アファチニブ 呼吸 2015:34:65-71
Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):141-51

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患