胸水中のADA高値が結核性胸膜炎を示唆するのは、胸水細胞がリンパ球優位の時である。

胸水中のADA(adenosine deaminase)値測定は、結核性胸膜炎の診断に有用な検査です。


一般的に、胸水細胞が好中球優位の時は細菌感染が疑われ、リンパ球優位のときは結核性胸膜炎や悪性胸水が鑑別の上位に挙がります。

(結核性胸膜炎患者の胸部X線写真)
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よって、胸水細胞がリンパ球優位のときは、悪性胸水の可能性を調べるために細胞診や胸水セルブロックを評価するとともに、結核性胸膜炎の評価をするためにADA値の確認が必要です。


胸水中のADAが、40-50UI/L以上の時、結核性胸膜炎の可能性が高いと考えられます。
(青島正大 編. 亀田流 驚くほどよくわかる 呼吸器診療マニュアル.羊土社 2014年 東京)
(リチャードWライト 著 胸膜疾患のすべて 改訂第3版 診断と治療社 2015年 東京)

ただし、ピットフォールとして、胸水細胞が好中球優位でADAが上昇しているときは、膿胸あるいは細菌性胸膜炎に随伴した胸膜炎を考えることに注意しましょう。
(青島正大 編. 亀田流 驚くほどよくわかる 呼吸器診療マニュアル.羊土社 2014年 東京)

つまり胸水のADA値を見るまえに、必ず胸水細胞分画を評価しておくことが大切です。


ちなみに、胸水のADAは結核性胸膜炎の除外としても用いることができ、リンパ球優位の胸水でADAが40IU/L未満であれば、結核性胸膜炎は否定的と考えられています。
(Ocana I et al. Adenosine deaminase in pleural fluids. Chest 1983:84:51-53)
(リチャードWライト 著 胸膜疾患のすべて 改訂第3版 診断と治療社 2015年 東京)

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患